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花火

作者: 歌川 くじら

季節外れですみません。

また、このサイトでは需要が無いかもしれませんが、三月が近づきパソコンの片隅から引っ張りだして投稿してしまいました。

※作者の話しではありません。

関わりのある方をモデルにしていますが…

誰が言い出したのか、花火をすることになった。ちょうどお盆の最中で、夏の暑い盛りだった。私がまだ幼い頃は、お盆の頃には暑さの盛りは過ぎて残暑の季節だったように思う。たかだか十数年で、随分と沢山の事が変わったように感じる。私はポケットに入っているオイルライターを取り出して片手で弄びながら歩き始めた。

従兄弟や幼馴染を含めて、五人で近所の広場にいった。田舎のことなので、そういった場所には事欠かない。手持ちの花火が緑や赤い火花を、咲かせては消えていく。ワイワイ、と賑やかに昔の思い出や四方山話しに花を咲かせて、童心に帰って楽しむ。毎年、恒例の光景だった。ただ、今年は少しだけ違った。

打ち上げ花火を挙げ始めると、遠巻きに花火を見る人達がちらほらと見え出した。

その数は1人、また1人と増えていく。老若男女、様々な人影が少し遠巻きに輪になるようにして、打ち上げ花火を和やかに見ている。

小さな子供連れの若い夫婦や、老夫婦、兄妹らしい幼い子供たち。

花火が打ち上がり、辺りを照らすたび、私達は言葉少なになっていった。私はそっと、子供連れの若い夫婦らしい人影を見つめていた。

そんな私の袖を、従兄弟が引いた。従兄弟の差し出した線香花火を受け取ると、私は黙って火を付ける。小さな炎がパチパチと音をたてて、やがてぽとりと落ちて消えた。私はなんとも言えない、遣る瀬無い気持ちに襲われた。他の皆も黙って線香花火が終わるのを見ていた。

最後の線香花火が燃え尽きる頃には広場には、私達しかいなくなった。

私はポケットからライターを取り出して、友人から煙草を受け取ると火を付けてひと息だけ吸った。

あの日から、一年、吸っていなかった。広場の端にある石に腰をおろす。ビールや花束、スナック菓子などが供えてある。私はその脇に吸いかけの煙草を添える。兄の好きな銘柄だ。よく2人でここに座り、静かに煙草をふかした。近寄ってくる姪っ子に注意しながら…

いつか忘れるのかもしれないけれど、来年もこの場所で花火を打ち上げよう。帰ってくる人々を迎え送る火になることを祈って。

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