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桜小路茶話  作者: 望月 明依子
第三章 「風」
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第十話 「裁判傍聴」


今年の補習も、去年と変わらず朝から夕方まで行われている。

三年次の補習は二年次より前期、後期補習とも一週間長い。

そして補習後、桜小路先生の部屋で遅くまで打ち合わせを行い、帰ったら課題をこなす。

目の回るような日々だったが、仕方が無い。

しかし、取るべき休みはしっかり取った。定期通院日には放課後の打ち合わせを欠席し、きちんと病院へ行って医師に状態を診てもらった。

そのようなことを怠ると、いざ本番で不調に陥った時に困ると思ったからだ。もちろん、桜小路先生や匠には前もってその旨を伝えておいた。


ある日の放課後、部室にて。

「ふぅ、疲れた」

「毎日こういう生活だもんな、バテないわけないよ」

「匠、課題進んでる?」

「毎日眠い目こすりながらやってるぜ。これも内部進学の要件だしな」

「そうだよね、頑張らないとね」

「みんな、頑張ってるんだよな」

「そりゃそうだよ。みんな頑張ってるさ」

「森田さん、すごいよな」

「補習欠席して、イギリスだっけ? 海外に短期留学かぁ」

「まあ、海外の大学狙いだったら補習より実力だもんな」

「悠里、すごいなあ」

「水野くん、中村さん、打ち合わせしようか」桜小路先生が部室に声を掛ける。

「はい」


「机上で模擬裁判の計画を練るのもいいが、実際に裁判員裁判の傍聴に行かないか?」

桜小路先生が提案した。

「実際にこの指導案で今授業をできるのは、私しかいない。仕方が無い、教員免許の問題だからな。ただ、特に水野くん、あなたは教育学部志望ならば、実際に授業をできる可能性がある。中村さんももし教員免許を取得しようと思うならば中村さんにもだ。

でも、実際に裁判員裁判の模擬裁判の授業をする人間が本当の裁判員裁判を知らないようでは話にならない。どうだ、前期補習が終わった頃、裁判員裁判の傍聴に行かないか?」

私は裁判員制度の対象でない裁判の傍聴には行ったことがあるが、実際の裁判員裁判の傍聴経験はない。しかし、この街にある裁判所で対象の裁判があるだろうか?

「隣の街まで出よう。ここよりも大きな地方裁判所があるから、きっと裁判員対象の裁判も多く行われているに違いない。行ってその日に決めるというわけにはいかないから、インターネットで調べておこう。できれば、保護責任者遺棄関係の裁判があるといいんだがな……」

そうして、また一つ、夏の予定が増えた。


これまたある日の補習後。珍しく桜小路会メンバーが部室にいる。みんなぐったりしている。

「これがあと一週間かよ……」

「俺、夏の友プラス島井大の過去問だぜ。マジ、やってらんねー」

「まあまあ、みんな辛いんだし、ここで愚痴っても辛いだけだよ。はい、冷蔵庫で冷やしといたチョコケーキ」

「百花姉様! 天使!」

祐樹が潤んだ目で百花を見上げる。

「わあ、冷たい! ありがとう、百花姉様。わざわざ買ってきてくれたの?」

「うちの残り物。たまには息抜きしないと、煮詰まっちゃうよ。こんなに暑いのに」

「百花姉様ありがとう! 大好き!」

「じゃあ、ちょっと濃いめにお茶いれて、氷で薄める?」

「アイスティーの入れ方があるんだけどね、時間がかかる。それでいいと思うよ」

そこで久しぶりの桜小路会を開催した。と言っても、私と匠は桜小路先生が呼びに来るまでのことだったが。

「麻衣子、優、最近どう?」

「……」

「うまくやってるよ」

「優もなんか言ってやれよ、麻衣子だけだとかわいそうだろ」

「……いい感じだ」

「それならいいんだけど。美咲、彼氏さん忙しくなったんじゃない?」

「朝から夜までずっと補習と夏期講習だって。ただ、去年みたいな相手がいないから勉強に支障はないけど、暑いし、泳ぎたいってよく言ってるな」

「総体で引退?」

「うん、引退。去年は補欠で全国行ったけど、今年は誰も全国行けなかったみたいだし、本人も総体限りで引退するつもりでいたみたいだったから」

「潔い引退だね」

「次の目標があるからね」

「何?」

「うちのお姉ちゃんと、同じ大学の医学部狙ってるみたい」

「そういえば、彼氏さんの家って病院だっけ?」

「じゃあ、狙うのもわかるなあ、うん」

「百花姉様は? 彼氏さん、夏休みで遊びたいんじゃないの?」

「試験中なんだって。試験とバイト、なんだかんだで遊ぶ暇ないよ。今の私にはちょうどいいけど」

「で、早希嬢、最近どう?」

「もう、完全に恋愛は放棄。大学生になるまでもう彼氏はいいかな、って思ってる。あたしそんなに器用じゃないし、今は勉強するので精一杯」

「みんな、いっぱいいっぱいだね……」

「中村さん、水野くん、打ち合わせ」桜小路先生が声を掛ける。タイミングを見て声をかけた感じがした。

「はい」


模擬裁判の詳細は、実際に裁判員裁判を傍聴してから詰めることにした。資料もその裁判を桜小路先生の名義で閲覧させてもらう方が充実したものになりそうだ。それまでは、模擬裁判以前の知識や興味・関心を引き出すための授業内容を詰めることに集中した。

「ニュース等で、すでに裁判員制度にマイナスイメージを持っている生徒もいると思います。それをプラスにするとは言わなくても、ゼロにする考え方が必要ですよね……」

「例えば、どんな考えだい?」

「通常、法曹関係者や事件関係者以外には閉ざされた法廷という空間に、一市民である私たちが参加できるという仕組みは画期的だと考えたのを覚えています。興味を覚えたのです」

「ふむ、興味を抱かせるか。水野くん、興味を抱かせる方法で何か思いつくかね?」

「実際に何かやらせて、面白いと感じさせる……もう、それは模擬裁判ですね」

「模擬裁判に至るまでに必要な知識を最小限にして、メインを模擬裁判にする……と言ったところか」

桜小路先生は、後半に持ってきていた模擬裁判をメインに据えるような指導案に書き換える方針に変えたようだ。

「三年一組でこの授業をやるかもしれないが、いいよな?」

「はい」

「いつですか?」

「九月か十月ごろか。とりあえず、指導案が固まったら実践してみたい」

「わかりました」

入試には直結しないし、これが本当に有効かも分からない。しかし、自分たちが考えた授業が実際に行われると思うとワクワクした。

「評価方法も検討しないとな」

「先生、それはまた後日にしませんか。もう七時ですよ」

「ああ、もうそんな時間か。じゃあ、続きはまた明日だ。気をつけて帰るようにな」

「はい」


「実際に授業するんだな、俺らのクラスで」

「なんか楽しみ」

「俺、ちょっと不安」

「何で?」

「自分たちが作った授業が、ものすごく不評だったら嫌だろ? それが気になってな」

「うーん、それもあるけど、自分の考えた授業が実現するワクワクの方が上回るな」

「みさみさ、本当に先生に向いてるかもしれないな。もしかしたら、俺以上に」


外に出ると、ちょうど桜小路先生も自転車で帰宅しようとしているところだった。

「おお、ちょうど帰りか」

「はい」

「どっち方向に帰るんだ?」

「駅方向へ」

「水野くんもか」

「ええ」

「いや、いつも一緒に帰っているようだったから、偶然なのか、それとも送っていっているのかと思っていた」

「途中で分かれてますよ、分かれ道で」

「いやあ、しかしつい何ヶ月前まで大怪我して入院していたと思えないよ、中村さん」

「ありがとうございます」

「野暮なことかもしれないが、中村さんと水野くんは付き合っている、ということはないのかい?」

「ありません」

二人の声が共鳴した。

「はは、それは申し訳ない。中村さんが御勢の附属高に転入してきた時から水野くんとは仲が良かったし、気が合うみたいだから。余計な勘繰りをして悪かった」

「もしかしたら、それを理由に共同研究者に……」

「それは断じて違う。本当に、私の共同研究者として二人が相応しいと思ったからだ。それだけは、誤解しないで欲しい」

「分かりました」

「私はここで。ご苦労さま、また明日」

「お疲れさまでした」

「お疲れさまです」


桜小路先生が行ってしまった後、匠がぽつりと言った。

「やっぱり、外見的には付き合ってるように見えるのかな、俺達」

「そう見えるのかねえ?」

「難しいもんだな、男女の友情って」

「バランスひとつで、崩れちゃうからね」

麻衣子と優のことを思い出す。あの二人は、友情というより、片思いの成就か。

「みさみさ、こんな事言うと悪いとは思う。先に詫びておくな。みさみさは、俺の恋愛対象じゃない。どちらかというと、百花姉様の方が恋愛対象かもしれない。智也を差し置いてこういう事言うのもなんだけど」

「ううん、ある意味、助かるよ。私、ずっとそばに渉がいたから、渉以外の人のことを考えたこともなかった。だから、渉以外、誰も、恋愛対象として見たことなかった。もちろん匠もそうだし、この前の斉藤くんもそう。優も、祐樹も。みんな、身近な人たちをくっつけたがるのかな?」

「それを楽しみにして生きてる奴もいるしな。そういう奴は、放っておけばいい」

「そうだね。何もかも、身近だけで片付いたりするわけじゃないしね」

「まあ、俺みたいな嗜好の奴もいるわけだしな。みさみさ以外には知られたくないけど」

一通り立ち話をした後、私たちはいつもの道を通り、帰宅した。


「お帰り、美咲。最近遅いわね」

「学会発表の打ち合わせ。ギリギリまで先生がやるもんだからさ」

「課題もあるんでしょ?」

「そうなんだよね。提出物も成績だから、手抜けないし」

「ちゃんと寝るまで見てあげてはいるけど、あまり遅くまで根詰めすぎないようにするのよ。分からない事があったら、私でも分かる事があるかもしれないし、お父さんもいろいろ知ってるかもだし、私たちも使ってくれていいのよ」

お母さんはお父さんと同じ大学の出身だ。お父さんとは学年こそ違うが、当時にしては珍しく大学院へ進学したそうだ。しかも、学部を変えて。

お父さんとは大学院の時に、同じゼミで知り合ったらしい。

「やりたい事があるなら、精一杯やりなさい」それがお母さんの口癖だ。自分がそうしたからなのか、それともさらに先の博士課程への進学を希望していた夢が叶わなかったからだろうか。

「うん、無理しないようにするよ」

そして今夜も、夏の友と向き合うのだった。


夏の暑さと過酷なスケジュールの前期補習がようやく終了した。

夏の友は、ようやくなんとか半分ほど進んだくらいだ。

渉とは電話でちょこちょこと話してはいたが、まとめて三日ぐらい休みができたからといって久しぶりにうちに遊びにやって来た。

「美咲、夏休みすごい忙しいんだろ?」

「うん、学会発表の打ち合わせもあるし、仕方ないね」

「そういえば、この前電話で話してた斉藤って奴、何かしでかしてないか?」

「今のところは何も。後輩たちにも注意するようには伝えてるけど、今のところ何か言われたとかはないみたい」

「ならいいんだが……」

「渉も忙しいでしょ?」

「まあな」

「学校と塾の往復?」

「ああ。でも、最近、部内の世代交代が済んだ。次の部長は金山って奴だ。俺は、結局、肩書きだけの副部長だったな」

「もともとそういう予定だったんでしょ? 正式な副部長でなくて、遊撃的な副部長だって」

「あの事件のせいで、俺、副部長辞めようと思った。部にまで迷惑かけたくなかったし。でも、北野が、『別に辞める必要はねえよ。それよりも、早くケガ治して泳ぎに来い』って言ってくれたから、俺、最後まで副部長でいられた。北野には感謝してる」

「北野くん、部への影響もあるだろうに、渉のことも考えてくれたんだね」

「そうだな。俺のことも、部のことも考えて判断を下した、いい奴だ。あいつは、今、体育祭の応援団長になって、毎日深夜まで練習に余念がない」

「渉は?」

「俺は、背景のボードを描く担当になった。時間の拘束もそこまでないし、俺、絵描くの嫌いじゃないからな」

「そっか、渉、絵上手いもんね。もってこいじゃん」

「美咲たちはまた合宿があるのか?」

「うん、でもその前に裁判を傍聴しに行くことになってる」

「へえ、裁判って誰でも聞きにいけるものなのか?」

「そうだよ。基本的にはね。もちろん、傍聴券が必要なものとか、公開されない裁判とかもあるけどね」

「そういうの、どうやったら分かるんだ?」

「近くの裁判所に行った時は、その日の裁判のスケジュールが一覧表で出てた。だから、聞きたい裁判の時間に法廷に行って傍聴席に座ってるだけ」

「へえ、手続きとかいらないんだな」

「そうだよ、よく誤解されてるけど」

「でも、近くの裁判所じゃ、あまり裁判ってないんじゃないか?」

「隣街まで出るって。顧問兼担任と、共同研究者の子と一緒に行く事になってるから」

「忙しいな。美咲、体調には気をつけろよ。夜更かしもほどほどにしろよ」

「渉も、風邪とかひかないようにね」

「じゃあ、今日はこの位にしとくか。美咲も、まだやる事があるんだろ?」

「うん、課題が」

「俺も、課題がまだ残ってるんだよな。頑張らないと」

「渉もあまり無理しちゃダメだよ」

「ああ、分かってる。俺の体は俺にしかコントロールできないしな」

「じゃあ、お疲れさま。おやすみなさい」

「ああ、おやすみ」



そして、桜小路先生が指定した日。この日に隣の街にある地方裁判所で保護責任者遺棄致死の裁判員裁判が開かれるようだ。

私たちは駅で待ち合わせをし、隣の街にある地方裁判所へ向かう事にした。

私が眠い目をこすりながら駅へ着いた時には、すでに桜小路先生と匠は駅に着いていた。

「さ、行こうか」

「はい」

隣街行きの電車に乗り込み、今日はどのような事件なのかをタブレットを持ち歩く桜小路先生から貸してもらい、見せてもらった。便利なサイトだ。全国どの裁判所でどんな裁判員裁判が開かれるかまとめられている。詳細を公開していないところもあるが、件名を載せてくれている裁判所もある。

それを手がかりに今日は隣街の裁判員裁判の傍聴へ行くのだ。目的の裁判員裁判は午前十一時開廷となっていた。裁判員裁判は連続開廷が原則だが、合宿までのこちらの都合もあるし、評議は非公開だ。それを考えて、二日目あたりを選んだらしい。

電車を降りると、強い日差しが私たちを照りつける。

「山本地裁なら、駅から少し歩くな」

私は持って来ておいた帽子をかぶって、山本地方裁判所までの道を歩き出した。


裁判所は少しは冷房が効いていた。目的の法廷へ向かう。

桜小路先生が連絡を入れていたためか、職員の方が裁判員裁判の資料をくれる。

いざ法廷へ入ると、裁判員が揃っている法廷に圧倒された。これまでは多くても裁判官三人に検察官、弁護人という法廷を見ていたが、それに裁判員六人が加わっている。人の多さにまず圧倒される。

圧倒されている暇はない。裁判の進め方をメモして、実際の模擬裁判へ活かせるようにしなければ。

私たちはノートを取り出し、必死でメモを取ったが、検察官の提出する証拠の内容全てをメモすることはできなかった。

「私が今回の傍聴に関しては検察庁へ申し込んでいる。証拠の内容は公開出来る分はOKを頂いているから、そこでメモさせてもらいなさい。今は、流れや雰囲気、全体的なものを感じて授業に活かせるようにしなさい」

桜小路先生に言われ、私は全体の流れを掴んだり、法廷の構成をメモする程度にとどめておいた。

今日は証拠の採用、検察官や弁護人、裁判員の証人への質問で閉廷した。基本的に被告人は容疑を認めているようで、穏やかに進行していった。

明日被告人質問と評議が行われ、翌々日に判決が下されるそうだ。

判決の結果を知りたかったが、もう合宿まで時間がない。中途半端な気もしなくもないが、判決は桜小路先生が聞きに行くのだそうだ。判決そのものが重要じゃない、その過程が重要なんだからな、と桜小路先生は言った。でも、一応どのような結果になるかは聞きに行くのだそうだ。

昼食を桜小路先生にご馳走になった後、午後は検察庁で事前に申し込んでいた午前中の事件についての証拠の閲覧とメモに勤しんだ。検察官は裁判所に比べるとトゲトゲしいイメージを抱かざるを得なかったが、桜小路先生の事前の申込みがずいぶん功を奏したようで、きっと高校生二人だけよりも穏やかに事を進めることができた。


全てを終わらせたのはもう夕方だった。

「今日はご苦労さまだったな。晩御飯はどうする?」

「俺は、家に何も言ってないので、一応帰宅します」

「私も、帰宅します」

「そうか。じゃあ、帰るか」

ここに来たのと同じ電車に乗り、私たちの住む街へ戻り、そこで解散となった。

「ああ、疲れた」

やはり、法廷傍聴だけでなく、検察庁での大量のメモが堪えたようだ。疲れ切ってしまった。

私は帰宅してすぐ、「もう寝る……」とだけ言い、寝室へと向かった。翌日のことは何も考えられなかった。


携帯には、匠から、「明日、桜小路が九時に部室集合だって」というメールが入っていたが、私がそれに気がついたのはもう日付が変わる頃であった。

「おっと、危ない危ない……」

「了解、今日はお疲れさま」とだけ返信して、いつもの薬を飲んで再び眠りについた。食欲ももうなかった。


翌朝。

「おはよう、美咲。何か食べられそう?」

さすがに何も食べずに寝たため、少しはお腹も減っている。

「そうめん……」

「うーん、朝からそうめんは冷たいわね。にゅうめんでいい?」

「うん、それでいい」

私の前に温かいにゅうめんが運ばれて来た。口にすると、元気が戻ってくるのが分かる。

「美味しい!」

「顔色もずいぶん良くなったわね。休みなさい、っていいたいところだけど、今日も打ち合わせでしょ?」

「うん」

「遅くならないようにね。今日は送って行くわ」

「お願いします」

今日はお母さんに送ってもらい、部室へと向かったのだった。


「おはよう、匠」

「みさみさ、すげー疲れた顔してんな。大丈夫か?」

「うん、なんとか」

「今日は早めに切り上げるように桜小路に言おう。ちょっとは休まないと、合宿まで持たないぞ」

匠は桜小路先生のところへ行き、話をつけに行った。

「みさみさ、明日は休みだ。今日も早めに切り上げるそうだ」

「ありがとう、匠」

「今日は無理するなよ。なんなら、俺らだけで打ち合わせしてもいいんだぞ?」

「大丈夫」

そういう話をしているうちに、桜小路先生も現れ、昨日のまとめを行った。

「昨日の証拠のメモは、模擬裁判で使用する際の資料だな」

「たくさんあります」

「合宿のレポートは、模擬裁判で行こう。私は明日判決を聞きにいくし、あなたたちは休養日だ。合宿まであと一週間ちょっと。三人で一つのレポートでいい。ただ、資料がある以上、内容もきちんとしておかないとな」

昨日の裁判員裁判をうまく思い出して、授業の形にする……。なかなか骨が折れそうだ。

「分かりました。残りの期間、模擬裁判に力を注ぎます。中村さんも、僕も、疲れています。合宿までは、それに専念させてください」

「分かっている。課題が多いのも分かっている。合宿が終わったら、後期補習まで、打ち合わせは夏休みだ。その間に、なんとか課題にも手をつけられないかね」

「分かりました」

これで、課題は合宿後にまとめて、合宿まではレポートに専念という形をとることができるようになった。


そして、去年とはまた違った気持ちでの、二度目の社会部の合宿を迎えることとなった。


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