決して溶けないパウダースノウ
.タイトル
『決して溶けないパウダースノウ』
明波 愛歌
.登場人物
「登場人物」
・坂本知香
・新城依利撫
.シナリオ
§1 駅のホーム
サラリーマンが新聞を読んでいる。
新聞にスーパーイン。
新聞には『2月24日 山奥の廃倉庫付近に行方不明となっていた女子高生2名の死体』
§2 学校の下駄箱(夜)
ケータイ画面に『依利撫へ しばらく学校来てないけど大丈夫? メール待ってるね』
『送信完了』
『2月17日 18時47分』
坂本知香(17)、ケータイを閉じて心配そうな顔をする。
§3 人影のない小道(夜)
街灯もあまりなくて暗い不気味な小道を一人歩く知香、ミラーで後ろに黒いコートでフードを被りマスクとサングラスをしている不審な人物に気付く。
チラチラ後ろを見ながら歩く。
小走りで後ろを警戒しながら曲がり角をまわるとその人物に薬品のついた布を押しつけられながら羽交い締めにされる。
知香、抵抗しようとするが意識が徐々に目が据わっていき……。
§4 倉庫の外景(夜)
山奥の小さなボロ倉庫が吹雪の中建っている。
§5 倉庫の中(夜)
知香、目を覚ますと新城依利撫(17)に包まれていて飛び起きる。
知香、依利撫と向き合いながら、
知香「(混乱した様子で)えっ、依利撫!? どうして……ていうかここどこ!?」
依利撫「(体育座りで悲しそうに)分かんない。でも、私たち……拉致されたみたい」
知香、依利撫の服が乱れている事に気がつく。
知香「ちょっと!! 依利撫っ、大丈夫なの!? ひどい……」
依利撫「(無理したように笑いながら)私は平気だよ。それより、知香ちゃんも……」
知香、自分も服が乱れていることに気がついてハッとし、ネックレスを確認して一安心する。
依利撫「どうしたの?」
知香「いや、あたしは何ともないって。依利撫は痛いところとかない!? 怪我は!?」
依利撫「ううん……それより、寒いかな」
知香、依利撫に寄り添う。
知香「これですこしはしのげるでしょ。それより、ここなに? 倉庫みたいだけど」
知香、あたりを見渡す。
倉庫の中はよく分からない埃だらけの機械、床には部品やらが転がっている。
知香「依利撫、ちょっと待っててね」
知香、立ち上がって扉に向かい、さび付いた鉄の扉の取っ手を掴んで力一杯動かそうとするがびくともしない。
知香「ダメだっ」
依利撫「わたしも出られそうなところ探したけどダメだった……。水道も止められてるみたいだし、食べ物もガムしかないよ」
知香「(ポケットの中に手を入れて)ケータイがない。そういえば、バッグも」
依利撫「たぶん捨てられたんだと思う」
知香「……」
× × ×
床に置かれたガムの包み紙。
体温を分け合うようにくっつきながら座る知香と依利撫。
依利撫「味なくなっちゃったね……」
知香「うん、もういいや」
依利撫、包み紙を取って知香の口にそっとあてる。
依利撫「はい」
知香「(ガムを預けて)ありがと」
依利撫も別の包みにガムを出してポケットにしまう。
依利撫「寒いよね……、トイレどうしよっか」
知香「確かに。漫画とか映画だと気にしない感じだけど実際問題は別だよね。うーん、あれでいいんじゃない? 冬で臭いも気にならないと思いし」
鉄くず入れを指さす知香。
依利撫「そうだね。ちょうどふたつあるから、知香ちゃんとわたしで分けられるし」
知香「別に一緒でもよくない?」
依利撫「恥ずかしいから……」
知香「あっ、そうだよね」
気まずそうにする知香。
依利撫「(しばらくの沈黙の後にぼそりと)カレー」
知香「(吹き出しながら)ちょっとっ!!」
笑い合う知香と依利撫。
知香「こんないい方あれだけど、依利撫が一緒にいてくれて嬉しいよ。一人だったら、完全におかしくなってた」
依利撫「わたしも。知香ちゃんが一緒で安心してる」
知香「うん」
依利撫「ねぇ、知香ちゃん」
知香「どした?」
依利撫「寒いね……」
知香「……うん」
手を握り合い、密着する知香と依利撫。
× × ×
懸命に出口や役立つモノを探す知香と依利撫。
× × ×
少し疲れた笑顔で密着しながら寝る二人。
お互い体育座りで顔を下にしながら無言で寄り添う知香と依利撫。
§5 倉庫の外景(朝)
吹雪がやんで、雪が高く積もっていて、優しい太陽の光がきらきらと反射している。
§6 倉庫の中(朝)
高い天井にちょこっと付けられた小さな窓から白い光が差し込む。
光は衰弱しきっていて、くっつき合いながら壁にもたれている知香と依利撫を照らす。
うつろな目をした知香と依利撫。
重い鉄の扉がかすかに開かれる。
救助隊員「大丈夫ですか!?」
救助隊員、扉を必死に開けていく。
知香「(微笑をうかべて)た、助かった……」
依利撫「(ひどく驚き青ざめながら)どうやって……」
知香、ネックレスを出して、
知香「ネックレス、これGPSチップが入ってたんだ」
依利撫、知香のしているネックレスを引ったくる。
依利撫「ふざけないで!!」
依利撫、知香を鬼の形相で睨む。
依利撫「どうしてそんなもの持ってるの!!」
知香、穏やかな優しい表情をしている。
救助隊員が心配しながら、扉を開けて駆け寄ってきて二人に毛布を掛ける。
依利撫、毛布を投げ捨てる。
依利撫「来ないで!!」
汚物入れに近づく救助隊員に向かって、
依利撫「それに近寄らないで!! 知香ちゃんのものは全てわたしのものなの!! 知香ちゃんはわたしのものなの。だから今すぐ出てってよ!! ここから出て行って!! わたしと知香ちゃんは死ぬまで一緒なの!! だから、わたしと知香ちゃんはここで死ぬの!!」
依利撫、不気味な笑みを浮かべて知香を見る。
依利撫「どう? 怖い? これがわたしの本性だよ。でも、全然間違ってないよね? だって好きな人とずっと一緒にいたいって気持ちは普通でしょ? 神様がいけないんだよ。わたしと知香ちゃんを女の子同士にした神様がいけないんだ。だって、叶うわけ無いから、だからわたしは――」
知香、そっと依利撫にキスをする。
知香「あたしね、前から依利撫のこと好きだったんだよ」
依利撫「えっ……」
知香「だから願ってた。あたしにはちゃんと気持ちを言ってくれるって」
依利撫「……」
知香「どうせかなわないなんて思わないで。過去と今は別物なんだから」
依利撫「……」
知香「……」
依利撫「……知香ちゃん、好き」
知香「うん、あたしも。」
依利撫「ねぇ、わたしのこと、嫌いにならない? 待っててくれる? ずっと、ずっと一緒にいてくれる? あと、それから」
知香「……」
抱きしめ合う知香と依利撫。
依利撫、瞳からツーと涙がこぼれる。
依利撫「隊員さん、外にある桜の木の下を掘り返してください」
知香、依利撫の頭を優しくなでる。
知香「安心して、待ってるからさ」
鉄の扉から雪解け水がわずかに流れている。(F.O.)
(了)
10分程度の短編ドラマを想定してかきました。
長さ的な問題があり、あえて詳しく心情や行動理由を書き込んでいないので読みづらかったかもしれません。
ヤンデレが書きたかっただけですが、テーマはと言われたら『先入観の愚かさ』とかです。
短編は苦手なので上手くなるように頑張ります。