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だい5わ
その夜は、焚き火を炊いて野宿した二人。
「落ち着きましたか?」
ケビンは彼女に優しく声を掛けた。
「はい」
女は幸せそうに微笑んで見せた。
「あの、それで……」
ケビンは何から話そうか迷っている。
「とりあえず、君の名前は--」
女は、きょとんとしたような面持ちでケビンを見つめた。それだけで、ケビンの鼓動が速くなった様な気がした。
「あ、いや、その、別に無理して言わなくても……」
あわてて意味の無いことを口走るケビンに対して、女は幸せそうにクスッ、と噴出した。
それだけで、ケビンは無条件に嬉しくなる。
「ジュエリーヌ--」
「え?」
「ジュエリーヌ、と申しますです」
女--ジュエリーヌが、笑顔で自らの名前を名乗った。
「ジュエリーヌ……」
ケビンがかみ締めるようにその名を口にした。
益々深間にはまりつつあるこの事態に、彼は未だ危機感を抱いていない。