だい41わ
「……ジュエリーヌ……」
限界を遥かに越えた、人間離れした異常な形相でケビンは声を搾り出した。
「言ってくれないと、君のお願いもわからないじゃないか……」
「だあってえ……」
いじらしい乙女心に苛まれる様に、ジュエリーヌは口ごもった。
「……」
いじましい助平心に苛まれる様に、ケビンは口ごもった。
「……だってえ、マスター……」
ジュエリーヌは恥らいながら言葉を切った。
「だあってえ、ジュエリーヌ、とおっても恥かしかったりするんでございましたりするんですう~」
「--あっはっはっはっは……」
全身を硬直させながら、ケビンは棒読み状態の笑い声を搾り出す。
「ジュエリーヌ、恥かしい事なんて何も無いんだよ」
底響き、それも地下の洞窟から届いてくるように空疎で遠い音感の声音でケビンは言った。
「……でえもお……」
「あっあっあっあっあ--」
ケビンの精神は、現在大変危険な状態にある。
「言ってごらん、ジュエリーヌ、何も恥かしがる事はないんだよ」
勇ましき若者から、優しいおじちゃんにモードチェンジしたケビンは、怪しい声音と共にいかがわしい台詞を吐いた。
「……でもお……」
未だ踏ん切りの付かないジュエリーヌは、切ない声色で口ごもった。
「--ジュエリーヌ」
”おじちゃんはね、おじちゃんはね……”
ケビンの胸中に流れる台詞は、男ならば誰もが我が身につまされる悲しい言葉であった。