だい40わ
「ダあメえ~ええええ」
水の中で身をよじっているのだろうか、ジャポジャポと断続的に水音が起こる。
「ダメダメダメダメ、ダあーメええええ--」
その、生々しい響きを耳にするたびに、ケビンは更に忍耐を強いられるのである。
男にとっては地獄であった。
「今じゃないと、今じゃないとダメなのでしたりするのですう~う~」
「……おお……」
既にケビンは地面にはいずりながら指で草を掘り返すまでに掻き毟っていた。
「……判りました……」
頬のこけた土気色の顔で、ケビンは声を絞り出した。
「……言ってくれるかな、ジュエリーヌ……」
「……あのお……」
ジュエリーヌはそのまま口ごもっている。その間も、ケビンの責め苦は続いている。
「……あのお……」
言うに言われぬ恥じらいに乙女心もいじらしく、ジュエリーヌは言い出せずに居た。
「……」
ケビンはのたうつように耐えていた。
「……あのお、マスター……」
「……はい……」
「……あ……あ、の……」
ジュエリーヌが焦らす様に口ごもる間、ケビンの苦悩はずっと持続している。
「……あの、で、御座いましたりするのです、マスター……」
背もたれに寄りかかっていた木の幹に頭をぶつけながら、ケビンは辛抱強くジュエリーヌの言葉に耳を傾けていた。
「イヤー--!」
素裸のジュエリーヌは、水しぶきを派手に上げつつ顔を覆って身をよじっていた。
「言えないで御座いましたりするのですう」