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だい36わ
「マスター…」
心配そうに声をかけるジュエリーヌに、ケビンはやつれた笑顔で答えて見せた。
「…マスター…」
歩み寄るジュエリーヌに、ケビンは一層やせ我慢を振り絞る。
身を寄せてきたジュエリーヌを、ケビンは軽く抱きとめた。
「……マスター、苦しいで御座いましたりいたしますか……?」
「--少し、ね」
その言葉が、真実を相当薄めて搾り出した、ケビンの優しい嘘である事をジュエリーヌも痛いほどに感じていた。
「……ご辛抱なさらなくても……」
「ジュエリーヌ……」
ケビンは力無く呟いた。
「辛抱しなきゃ、駄目なんだろ?」
「……」
そのまま、静かに時が流れた。
「マスター……」
ジュエリーヌは、囁くように言った。
「ジュエリーヌ、マスターが望まれる事でございましたりするんでしたら……」