だい29わ
”ジュエリーヌ――”
これまでの甘美な連敗の日々思い出すと、ケビンはつくづく自分が嫌になってくる。
”……ジュエリーヌ、あれだけ思わせぶりな態度を取っといて、どれだけ本気なんだろう”
こんな事もあった。
「マスター――」
ケビンの傍らを歩きながら、ジュエリーヌは言った。
”来たな――”
ケビンは内心身構えた。
”どうも、ジュエリーヌは俺のことを絶対にみだらなことを考えたりしない堅物だと思って安心してるんじゃないか?”
ケビンは考える。
”いくら挑発しても、安全だと思ってからかってるんじゃなかろうか?”
充分考えられることではある。
”もし俺が、いつもと違う態度を取ったら、ジュエリーヌどう思うだろうか?”
「マ、マスター……」
「フフフフフ--」
「あ、あの、マスター、……」
「いい子だ、なに、怖がることはないよ。とっても気持ち良いことをしてあげるだけだからね」
”もしいつもみたいに迫ってきたジュエリーヌに、こんな風にやったらどうだろう?”
「マスター、いつもと違うで御座いましたり致しますです」
「そうさ、いつもと違うんだよ、ジュエリーヌ」
「マスター」
「君が望んでいることを叶えてあげるよ、ジュエリーヌ。なに、ちっとも怖くないからね」
「いや――マスター!」
「ここまで来て、カマトトぶるなよ、お嬢ちゃん!」
「あ~れ~――!」
ケビンの妄想はどこか古臭いが。