だい28わ
「マスター……」
ジュエリーヌはケビンの腕の中で、泣き濡れた声を漏らす。
「マスター、ジュエリーヌ、ホントはとっても怖かったんです……」
「ジュエリーヌ……」
悲愁な思いを胸に秘め、ケビンはジュエリーヌを抱きしめていた。
”もう勘弁してくれ……”
「もしも、マスターが引き止めてくれなかったら、って、」
「ああ――」
恰もこちらの考えを読んでいたようなジュエリーヌの一言が、ケビンの胸に突き刺さる。
「いっつも、いっつも、我が儘ばっかり言ってマスターのことを困らせてる悪い子のジュエリーヌを、マスターが見捨てちゃったりしたらどうしようかって」
「バカだな」
ケビンは優しく囁いた。しかし、その言葉は、ジュエリーヌに向けられたものではなかった。
「そんな事、あるわけ無いじゃないか」
「ああ、マスター――」
”バカだな……どうしてもジュエリーヌを引き止めてしまう俺って……”
「ゴメンなさいで御座いましたりいたします、、マスター」
ジュエリーヌは更に情を誘うような声で言った。
「マスターを疑ったりしたジュエリーヌを、マスターは許して下さいましたりしちゃいますか?」
「ジュエリーヌ」
ケビンは優しく言い聞かせるように言った。
「君はちっとも悪くないんだ」
”そうさ”
ジュエリーヌを抱きしめたまま、ケビンは無言でつぶやいた。
”悪いのは君じゃない、ジュエリーヌ”
ケビンはもう状況に抗うだけの気力すら無くしていた。
”毎度毎度、判っていながら同じ事を繰り返す俺が悪いんだよ……”




