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だい27わ
「お世話になりましたでございます、マスター」
今にもこの場から立ち去らんとするジュエリーヌを、ケビンは物凄い衝動に耐えながら見守っている。
「ジュエリーヌ――」
ケビンも、全身を震わせながら耐えていた。
”ここで引き止めたりしたら、俺の負けだ。彼女自身のためにも、ここは心を鬼にして堪えるんだ!”
「さよならでございましたりいたします」
「ジュエリーヌ」
ケビンはジュエリーヌの手を採った。
”ああ――”
震える手でジュエリーヌの手を掴んだケビンは、声にならない心の叫びを虚空に放っていた。
”俺はなんて意思の弱い男なんだ――!”
ジュエリーヌは振り向いた。
まっすぐな瞳に切ないまでの思いを宿し、ケビンを見詰めている。
ケビンは、真剣な眼差しをジュエリーヌに捧げていた。
「マスター――」
「ジュエリーヌ――」
ジュエリーヌはケビンの胸に飛び込んだ。
抱き合いながら確かな絆を感じあう二人。
「マスター」
ジュエリーヌの目に、涙が滲んでいた。
「ジュエリーヌ」
ケビンの目にも、やはり涙が浮かんでいる。
”やっぱりこうなるのか……”