だい18わ
「え、あの……」
ジュエリーヌの問いかけに、ケビンは及び腰で言葉を濁す。
「マスター……」
ジュエリーヌが、わざとらしく困ったような表情でこちらを見つめてくると、それだけで血圧が一気に上昇するようなケビンであった。
「もしかして、ジュエリーヌはマスターの事を困らせてしまったり致しましたりするんでしょうか?」
「え――」
「申し訳ございませんでございましてです」
既に安心しきったような余裕に満ちた素振りで男心を惑わすような表情を見せたジュエリーヌは、確信犯的な口調でケビンに言った。
「マスターは御優しい御方でございましたりするわけですから、ジュエリーヌを気遣って今のようなお言葉を口に為されただけなんでございますもの」
「いや、ち……違う!」
だが、ジュエリーヌは恨めしげに、疑わしいような眼差しでケビンを見つめた。
「本当だ、信じてくれ、ジュエリーヌ!」
「ホントでございましたりするんでございますか、マスター?」
「本当だ!今の言葉は俺の本心だ。君に対する気持ちは本気なんだ!」
なんでここまで言わねばならんのか、ケビンはもう完全にジュエリーヌの掌中に踊らされているも同然であった。
「マスター……」
ジュエリーヌは俯きながら、秘密を打ちあけるような声音でささやいた。
「もう、後戻りはできませんでございましたりするのです、マスター」
顔を上げると真っ直ぐにジュエリーヌはケビンを見た。;
「今のお言葉、もう取り消したりさせないでございます、マスター」
ケビンは息を呑むような表情でジュエリーヌの強い意志をこめた瞳を見つめた。いや、目を反らす事などできないくらい、強烈に惹き込まれたのであった。
「今のお言葉のせいで、ジュエリーヌはマスターに全てを奪われてしまったのでございます」
「――!」