だい16わ
「ジュエリーヌは、ジュエリーヌは--」
肩を震わせながらジュエリーヌは搾り出すように言った。
「ジュエリーヌは、マスターには似つかわしくない、みだらな女なのでございましたりするのでしょうか?」
「そ、そんな」
誰もそんな事は言っていないが。
「マスター……」
ジュエリーヌはクルリと向こうを向いた。
「お世話になりましたでございましたり致します、マスター」
「ジュエリーヌ」
「ジュエリーヌは、決してマスターのことを忘れませんございましたりします」
「ちょ、ちょっと、ジュエリーヌ」
「さよなら、マスター」
「ま……」
ケビンは必死で声を絞り出した。
「待ってくれ、ジュエリーヌ!」
「マスター……」
ジュエリーヌは振り向いた。
「お願いだ、行かないでくれ!」
言葉の無いままに、ジュエリーヌは底に立ち尽くしていた。
「ジュエリーヌ、俺と一緒に居てくれ」
ジュエリーヌは答えない。無言のまま、頤を引いて見上げるような眼差しをケビンに送っていた。
「……マスター……」
両手を胸の前で合わせて、ジュエリーヌは身悶えするように、モジモジとしなやかな体を動かした。
「御免、ジュエリーヌ」
ケビンは愚直なくらい全うに頭を下げた。
「……俺、君の気持ちを……無視するような事……」
何を言っていいのかわからず、とにもかくにもジュエリーヌを引きとめようとケビンはあれやこれやとばかりに言葉を重ねた。
「女の子が、どのくらいの決心であんな言葉を口にしたのか……それをはぐらかすような事……君の思いを踏みにじるような……」
「マスター……」