だい1わ
別に成人指定ではないですが……書いててばかばかしくなってきました。
麗らかな日差しに包まれた森には、心地よい風が吹き抜け、木々や下草が穏やかなざわめきを奏でている。
若者が一人、立ち木の寝方に腰を下ろしていた。
傍らには、装飾は質素だが中々の業物と思しき剣を携え、軽装のアーマーをまとった、涼やかな風貌の若者だった。
各地を回って腕を磨く、若き流浪の剣士といった風情である。
静かに瞼を閉じ、柔らかな木漏れ日を肌に感じ、豊かな自然のおおらかな歌声に耳を傾けているかのような趣だった。
のどかな風景だった。
静寂。
沈黙ではない。
風の息遣い、木の葉のざわめき、小鳥の歌声、そういった様々な音が織り成す、生命に満ち溢れた瑞々しい静寂。草いきれ、土のにおい、風の肌触り、かすかな湿り気を常に絶やさない大気。大自然に抱かれた、懐の深い静寂が森一杯に満ちていた。
そんな平和な情景に溶け込むように、そよ風のささやきの合間から無邪気な水音が届いてくる。小川のせせらぎではない。もっと途切れ途切れの、不規則な水音である。
心なしか、若者がその水音に特別な注意を払っているようだった。
その時である。
「マぁスタああああ--」
出し抜けに、水音とともに、鼻に掛かったように甘ったるい、幾分舌っ足らずな女の声が届いてきた。
若者が、なにやら苦渋に満ちた表情で顔をしかめた。
「ねぇえ~ん、マスタ~」
マスターとは、若者のことらしい。