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エピローグ 会計士の矜持
三ヶ月後。 ニブス建設は上場廃止となり、民事再生法の適用を申請した。帝都監査法人は解散命令を受け、業界から消滅した。 しかし、神谷と青山は、新しい場所で再出発していた。
都内の小さなオフィス。 『神谷会計事務所』の看板が掛かっている。 神谷は、新しいクライアントの帳簿をチェックしていた。 青山は、事務員としてテキパキと電話応対をしている。
「先生、中小企業の監査って、地味ですね」
青山がお茶を出しながら笑った。
「ああ。だが、ここには嘘がない。汗をかいて稼いだ、正直な数字だ」
神谷は窓の外を見た。 初夏の空は、どこまでも青く澄み渡っている。
「鬼島さん、見ててくれましたか」
心の中で師に語りかける。 数字は嘘をつかない。 そして、正しく使えば、数字は人を守る盾にもなる。 神谷は電卓を叩き始めた。その音は、かつてないほど軽やかだった。
(完)
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件等とは一切関係ありません。




