第14話 EP03-02 二人は似てる?
自分が読みたい物語を、趣味で書いてます。
オリジナル小説のみです。
オレの名は『新実 健二』。内地では、中学校に通う中学二年生の、ごく普通の男子だ。
今日は平日で中学校の教室にいるから、中学校の制服、半袖のワイシャツに黒のスラックスに黒のスニーカーである。
美月が、オレの通う中学校に転入してきた。人付き合いの苦手なオレでも気軽に話せる美少女が、クラスメートになったわけだ。素晴らしい学生生活が約束されたと言っても、過言ではあるまい。
「問題は、美月の方か……」
オレは、自席に足を組んで座って、片手で顎を擦って、思案顔で呟いた。
……キマった! また、隠れファンが増えてしまうな?
美月は、ゲシュペンストの関係者と警戒され、クラスメートに遠巻きにされている。初手がコレでは、せっかくの普通の学校が、孤独で寂しい場所になってしまいかねない。
やはり、ここは、このオレが何とかしてやるしかないか!
◇
要するに、美月が怖くないと示せばいい。隣の席のオレが、美月を笑顔にすればいい。
とっても簡単だ。
「美月。教科書まだだろ? オレの見るだろ?」
オレは、机を動かそうと、席から腰を浮かす。
美月が、無表情に掌を突き出し、オレを制止する。
「大丈夫よ。騎士団で調達してもらったから」
「あ、あぁ。そ、それならいいか」
オレは、落胆を顔に出さないように笑って、席に座った。
◇
「次の授業は理科室だぜ。案内するぜ。一緒に行こうぜ」
「マップは記憶してきたわ。そんなに気遣いしなくても、なるべく面倒かけないようにはするから」
「あ、じゃ、じゃぁ、トイレ行くだろ? オレも行きたい」
「……!?」
美月が引き気味に、蔑むような目でオレを見た。
◇
……解せぬ。困った。世の中、上手くいかないものだ。
昼休みになった。昼食に誘うくらいは許されるだろうか。何故だか目を合わせてくれないんだけど。
給食制度はないので、お弁当か学食になる。今日は、母さんが作って、身悶えするほど可愛くて可愛くて仕方ない妹もお手伝いしてくれた、女神!、圧倒的感謝の愛妹弁当を持参してる。
「美月 ゲシュペンストさん。ワタクシのお昼に、付き合っていただけますかしら?」
ゲシュペンストの名に怖じることなく、美月の席の前にレサリアが立った。断ることは許さない、みたいな真顔だ。
何故かオレが、戦々恐々として、レサリアを見た。これが、生意気な転入生を呼び出す、ってイベントか!
美月が心配だけど、でもむしろ、恐れて近づかないよりは可能性がある気がする。本気の殴り合いから生まれる友情があってもいい、と思う。不安が半分、期待が半分、思考の真ん中で鬩ぎ合う。
「ついでに、新実君も、御一緒にお願いいたしますね」
オレにも飛び火してきた。
◇
騎士道クラブの部室に入る。
学校の敷地の隅に、部室棟と呼ばれる建物がある。本校舎とかと同じ鉄筋コンクリートの五階建てで、中は教室の半分くらいの広さの部屋が並ぶ。その一室である。
ここはクラブ活動が無法地帯、もとい、自由な校風で、サッカークラブや園芸クラブといった普通のものから、ツイスタークラブやサメ映画研究会といったトンチキなものまで、様々なクラブがある。騎士道クラブは、騎士っぽいことを探求する、トンチキ寄りのクラブである。
「食事を楽しみながらで、よろしくてよ。お話がありますわ」
レサリアが、猫脚の白いイスに座って、猫脚の白い丸テーブルに、木の皮を編んだバスケットを置いた。
オレも美月も、壁際の鋼の全身金板鎧の置物を気にしながら、勧められるままに白いイスに座る。騎士物語や武道書のギチギチに納まる本棚も気になる。
全部、レサリアの私物なんだろうな、と思った。
ファンシーなピンク色の弁当箱を開きながら、美月が口を開く。
「どうして、ワタシに構うの? 朝がアレだったのに」
おいおい。朝は、あんな反応をしてしまったのに、一緒の昼食に誘ってくれて、ありがとう。って、ことだな?
完全に、人付き合いの苦手な人の言葉の選択である。オレも苦手だから、急速に親近感が湧く。
レサリアが、神妙な顔で答える。
「ワタクシと美月さんは、境遇が似ていますの」
「全然似てないぜ?」
オレは思わず、即座にツッコミを入れた。
外野は黙ってろ!、みたいな迫力で、レサリアにクワッ!と睨まれた。
だって、だって、外地の農村で育って魔物に襲われて騎士の養子になった美月と、産まれたときから名門騎士の家系のレサリアじゃぁ、境遇が違いすぎるだろ?
◇
「八年前、苛烈な戦い方で知られる、二つの騎士団がありましたわ」
レサリアが、神妙な顔のまま、語り始めた。
「一つは、最も危険な配置に望んで配備される『赤薔薇騎士団』。一つは、任務遂行のためなら退路すら放棄する『ゲシュペンスト騎士団』」
赤薔薇騎士団はレサリアの伯母が騎士団長を務める。ゲシュペンスト騎士団は美月の養父が騎士団長を務める。
「数多の功績をあげましたけれど、毎回の被害が大きく、臆病者どもからの妬みや恨みも多かったと聞きましてよ」
分かる。ゲシュペンスト騎士団長は、見た目からして、そんな感じがある。でも、『八年前にあった』とは、『今は違う』という意味でもある。
「その二つの騎士団に、転機が訪れましたの。すでにお察しのことでしょうけれど、『赤薔薇騎士団』にワタクシが、『ゲシュペンスト騎士団』に美月さんが、入団しましたわ」
「ワタシは、その頃はまだ入団してないわよ?」
美月が勇敢にも、訂正を挿んだ。
美月も、レサリアにクワッ!と睨まれた。
「似たようなものですわ。団内に新しい超新星が現れましたことで、二つの騎士団ともに、被害を抑える堅実な戦い方へと、変化していきましたの」
なるほど。それも分かる。
美月を取り巻くゲシュペンスト騎士団が、とても優しい印象を受けた。赤薔薇騎士団も同様なのだろう。そこを、境遇が似ていると、レサリアは感じたのだろう。
「この『鉄壁のレサリア』の入団で、苛烈な戦い方をせずとも、功績を得るに不自由はない、と確信なさったのでしょうね」
レサリアが、誇らしげに踏ん反り返った。踏ん反り返っても、平らな胸は清々しいほどに平らだ。
「カワイイ姪っ子が団に入って、無茶をできなくなったんだな」
オレは納得顔で頷いた。
「……?!」
「……?!」
しまった。発言のタイミングが被ってしまった。しかも、お互いに思ってたことが違って、オレもレサリアもショックを受けた。
「かっ、かっ、可愛いですって?! ワっ、ワタクシはっ、立派な騎士にっ」
レサリアが、赤面して動揺した。
「可愛いに反応するんだ……?」
美月が困惑顔で呟いた。
◇
レサリアが、まだ赤面したまま、一つ咳払いをする。
「こほん。お話といいますのは」
レサリアのバスケットの中身は、サンドイッチとサラダだ。オシャレで華やかな見た目だ。
「ワタクシ、『鉄壁のレサリア』が、ついに! ……いけませんわ、少し興奮してしまいました。ついに、正式な騎士となりますための試験を受けることになりましたの」
「おおっ! ついに、ぜっ……、『鉄壁のレサリア』の騎士デビューか!」
オレも少し興奮した。
レサリアが誇らしげに続ける。
「確約されましたも同然ですわね。つきましては、ワタクシは防御型ですので、試験への一名の協力を許可されていますの。それを、美月さんにお願いできませんかしら、と」
言葉の最後は、ちょっと照れた感じだった。
初日から確変が来た! 本気の殴り合いこそ無さそうだけど。孤独から脱却するのに、友情が芽生えるのに、十分なイベントだ!
美月が、困り顔をする。
何を困る!?
迷うように、目を逸らす。迷うように、控えめに口を開く。
何を迷う!?
「……ワタシ、戦闘系じゃないから。ごめんなさい」
「……っ!?」
予想外の返答に、レサリアがショックを顔に出した。
「……そうだったっ!」
オレは頭を抱えてテーブルに突っ伏した。
「……それは、仕方ありませんわね。ワタクシの方こそ、浅慮な頼みごとをしてしまいまして、ごめんなさいませ。でしたら、新実君にお願いいたしますわ」
「それが、いいと思うわ」
またオレに飛び火してきた。
心剣士
第14話 EP03-02 似てないと思う/END
読んでいただき、ありがとうございます。
楽しんでくれる人がいると、書く励みになります。




