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【第一章完結】抜きゲーみたいな世界に転生した童貞〔オレ〕は嫁を100人作ると決心した! ※決心しただけなので出来るとは言っていない。でも出来なきゃ死ぬらしい……  作者: 日之影ソラ
第二章 出会いと妄想の新生活

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結婚、三人目④

「選択は正しい。だが、この鎧は魔法にも強い。レベル差がなければ、今ので破壊されていただろうが、自身の弱さを呪うといい」

「……くそ……これで……終わりだな」

「――!」

  

 狙いは最初から、魔法ではなかった。

 気づいた時には手遅れ。

 黒い鎧の背中側、心臓付近に小さなナイフが突きささる。

 刺したのはもちろん……。 


「ここ、弱点なの?」

「お前……なぜそれを――!」


 黒い騎士と視線が合う。

 俺が見つけた弱点は光魔法のことじゃない。

 そんもの、今の俺のレベルじゃ見えない。

 光っていたのは奴の背中側、ごく小さな光だった。

 核心はなかった。

 でも、あの焦り方は間違いなく……。


「今だ! アイギス!」

「ふっ、生意気だけどよくやったわ!」


 アイギスのランスが、黒い騎士の頭部に直撃する。

 弾かれることなく、黒き鎧は砕けた。

 

 予想通りだ。

 弱点をつくと一時的に効果が停止する。

 その手の仕組みは、ゲームでもよくある設定なんだよ。

 無敵に思える効果には必ず弱点がある。

 そうじゃなきゃ、わざわざ攻撃を剣で受けたりしないよな?

 黒い騎士は左眼を手で抑える。

 赤い血がぽたぽたと流れ落ちていた。


「咄嗟に首を回して致命傷を避けたか。だが、鎧さえなければ――!」


 その瞬間、全員が戦慄する。


「よくもやってくれたな。お前たち」


 抑え込まれていた殺意が向けられる。

 俺たちは死を覚悟した。

 逃げ場のない場所で、猛獣に食われる直前のように……。


「――!」


 だが、その殺意ごと、黒い影が奴を覆う。

 どこからか、声が聞こえた。


 ――ここまでよ。


「……時間切れか」

「今のは……」


 女性の声だ。

 黒い騎士は突然現れた影に飲み込まれていく。


「ヒビヤタクロウ」

「――!」

「また会おう」


 黒い騎士は名指しで俺にそう言い残し、影に消えて行った。

 静寂の中、ラランが呟く。

 

「助かった……のか?」

「わからない」


 ただ、胸騒ぎは治まらなかった。


  ◇◇◇


 後日談。

 あの後、遅れて騎士団の本隊が到着し、残っていた咎落ちたちはまとめて拘束された。

 アダムストのアジトだった場所は壊滅。

 死者は出ず、誰も咎落ちすることはなかった。

 俺たちも、ラランの救出というメインクエストはクリアしている。

 結果だけ見れば、俺たちの大勝利だ。


「……腑に落ちん」


 俺は納得していなかった。

 騎士団が管理する医務室のベッドで横になりながら、悶々と考える。

 

 俺たちはまったく歯が立たなかった。

 唯一見つけた突破口も、蓋を開けば手を抜かれていただけ。

 あの男が本気になれば、俺たち全員を殺せただろう。

 遊んでいたのか。

 何らかの縛りでもあるのか。

 理由はわからないが、手加減されて運よく生き残っただけだ。

 

 俺の目標、百人との結婚を達成するためには、普通の方法じゃ無理だ。

 何らかの功績を残し、周囲から認められてモテモテになるくらいじゃないと達成できない。

 アダムストを壊滅させるくらいできたらとか考えていたけど……。


「甘かったな」


 今のままじゃ何もできない。

 下手をすれば、カナタたちを危険に晒すだけだ。


「もっと強くならないとな」


 俺一人でも戦えるくらい。

 カナタやジーナを守れるように。


 トントントン――


「はい」

「タクロウ、私だ」

「ララン?」


 カナタかジーナかと思ったから少し驚いた。

 二人も俺と同じように、別室だが騎士団の医務室にいる。


「入っていいか?」

「どうぞ」

「お、お邪魔します」


 肌着姿のラランが現れた。

 もじもじしながら、俺の下にやってくる。


「どうしたんだ? 裸じゃないなんて」

「な! 私を何だと思ってるんだ!」

「いや、また誘惑にきたのかと」

「お前……人が心配してやってるのに」

「俺は見てのとおり平気だ。ちょっと魔力を使い過ぎただけで身体は無事だし、みんなに比べたら無傷みたいなもんだ」


 不幸中の幸いか、誰一人重症には至らなかった。

 黒い騎士の戯れかもしれないけど、全員が無事で心からホッとしている。


「ラランもよかった。無事でいてくれて」

「……おかげさまでな。ニーアから聞いたよ。タクロウが、助けに行こうって言ってくれたんだって?」

「みんなも同じ気持ちだったよ。俺だけじゃない」

「みたいだな。でも、ありがとう……」

「ララン?」


 ラランの手が震えていた。


「ご、ごめん、今になって怖くなって……もしあの時、助けてもらえなかったら私……」

「ララン……」

「怖かった。怖かったよ」

「もう大丈夫」


 俺はラランの手を引き、抱き寄せる。

 怖がる子供をあやすように。

 優しく抱きしめる。


「あんなのもう嫌だ。こりごりだ」

「わかってる」


 今ならわかる。

 彼女はカナタより、ジーナよりも心が脆い。

 そして幼いんだ。

 抱きしめて小さな身体を感じるほどに、彼女を守りたいと思うようになる。

 この愛おしさ、尊さは、今までにない感覚だ。


「俺は……ラランを守れるようになるよ」

「タクロウ?」

「強くなる。だから……一緒にいよう? 目の届くところにいてほしい。今度は攫われる前に守ってみせるよ」

「――本当か? 一緒にいてくれるのか?」

「ああ、約束する」

「嘘じゃないよな? 言質とったぞ? 嘘だったら許さないからな!」

「嘘じゃない。俺も……気持ちは同じだ」


 俺の胸の中で涙を流すラランを、強く抱きしめる。

 もはやこれ以上の言葉はいらない。

 ただ一言、誓いを立てればいい。


「ララン、俺と結婚してくれないか?」

「――馬鹿だな。最初からそのつもりだって、言ってるだろ?」


 互いの思いを伝え合う。

 応えるように、女神の指輪は舞い降りる。


 好きになりたい。

 好きになってほしい。

 そういう愛の始まり方もあるのだと、俺たちは知った。


 こうして俺は、三人目のお嫁さんをもらった。


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