結婚、三人目③
だが、現実は残酷だ。
圧倒的な力の前には、なすすべもない。
「一分か。もったほうだろう」
「くっ……」
全員がボロボロになり、地面に横たわる。
辛うじて意識はあるが、誰一人として立ち上がることができない。
剣も、盾も、暗記も、魔法も通じない。
これが絶望なのか。
俺の異世界生活はここで終わりなのか?
「まだ……だ……」
諦めてたまるか。
始まったばかりだろう?
俺の人生はここからがスタートなんだよ!
「威勢だけでは世界は変わらない。力なくして、生き残ることもできない。お前たちに最初から、未来などない」
「――それはどうかな?」
「――!」
声が響く。
直後、壁がぶち破られ、俺たちの前に一人の騎士が立つ。
俺よりも先に、彼女が反応した。
「――姉上?」
「よく耐えたわね。褒めてあげてもいいわ」
「大隊長アイギス? なぜここに……」
同じ疑問を俺たちも感じた。
可能性があるとすれば、彼女の指示で行動していたニーアか。
「遅い、アイギス」
「これでも急いできたのよ。間に合ったのだから文句を言わないで」
「ニーアが呼んでくれたのか?」
「そう。ここに来る前に」
「なるほど。援軍を呼んでいたのか」
鎧に身を纏い、ランスと盾を構えたアイギスが黒い騎士を睨む。
「貴様……アダムストの幹部ね?」
「いかにも。そちらは名だたる大隊長の一人、アイギスだな」
「私を知っているのね」
「当然だろう。排除すべき対象だ」
「ふっ、面白い。やってみなさい」
なんという殺気だ。
この二人だけ、明らかにレベルが違う。
アイギスが近くで倒れてる俺を睨み、吐き捨てるように言う。
「下がりなさい。死にたくないのならね」
「わ、わかりました」
希望が見えた途端、俺の身体は動くようになった。
全身痛いしボロボロだけど、まだ動ける。
邪魔にならないよう距離を取る。
その直後、アイギスはランスで突撃した。
黒い騎士は剣で受ける。
「ほう、私の突進を受け止めたわね」
「予想よりは軽い」
「ふふっ、ここからよ!」
「――!」
ジーナから聞いたアイギスの加護、『猛進』
その効果は、止まらず走り続けることで突進力が上昇する。
アイギスは受け止められてからも進み続け、さらに突進力を高めて黒い騎士を押し出す。
止まれば硬くなる妹と、止まらず進むと威力が上がる姉。
正反対のようで似ている姉妹だな。
でもこれで――
「アイギスがいれば勝てるぞ!」
「……まだわからない」
ニーアがぼそりと呟く。
彼女の視線の先には、突進力を上げてもなお踏みとどまる黒い騎士がいる。
「中々重い。だが、この程度か?」
「くっ、なめるな!」
アイギスは剣を弾き、がら空きになった胴体に突きを入れる。
が、その突きすら鎧に弾かれてしまう。
「――! 何だと?」
「残念だが、この鎧はあらゆる物理攻撃を無効化する。お前に勝ち目はない」
「くっ……」
「姉上!」
二人の戦いは明らかにアイギスが劣勢だった。
レベル差もあるが、装備している鎧の性能が凶悪すぎる。
物理無効ってなんだよ。
何か弱点はないか?
このままじゃじり貧でアイギスも負ける。
「降伏するなら受け入れよう。ただしその場合、咎落ちのおもちゃになってもらうが」
「ふざけるな! 辱めを受けるくらいなら死んでやる!」
「潔し。だが、哀れだ」
俺は加護を発動する。
無敵に等しい黒い鎧の弱点が、一か所だけ小さく光っていた。
小さい。
あれを狙ってどうにかなるのか?
わからない……でも……。
「ララン! 協力してほしいことがある!」
「私の魔法だろ? けど無理だ。レベル差がありすぎて普通の魔法は通じない」
「何かないか? 一発限りとかでいいから高威力の魔法とか!」
「あるけど私の魔力じゃ足りないんだよ。加護で他人の魔力と共有できるから、魔力が多い奴がいれば……」
「だったら俺の魔力を使ってくれ! 多いらしいから!」
俺はわかるように冒険者カードをみせた。
レベルも王都を目指す途中であがって、今は25になっている。
「多いって……そのレベルで……! 私の倍以上あるじゃないか!」
「これならいけるか?」
「いける! でも、撃てても一発だ」
「十分! それからニーアだっけ! 君のも協力してほしいことがあるんだ!」
「――? 何?」
「私は逃げていいですよね? いいですよね?」
「いいわけないだろ!」
俺は作戦を彼女たちに伝える。
一世一代の賭けだ。
成功するかどうか以前に、勝てるかも怪しい。
それでもやるしかない。
「後ろが騒がしいな」
「っ……何をしている貴様ら! 早くこの場から離脱しなさい!」
「それはできない!」
「なんだと? 何を言って――」
「戦ってる女の子を置いて逃げるなんて、男としてできないってことだ!」
俺はマジックボウを連射する。
もちろん効果はない。
一応魔法系の攻撃だが、威力が低すぎる。
「何真似だ? 悪あがきか?」
「その通りだよ馬鹿やろう! どうせ逃げられないならとことん暴れてやる!」
「馬鹿者! 自暴自棄になっている場合じゃないわ!」
「姉上! 私たちも戦います!」
「ジーナまで……」
ジーナが俺の前で盾を構える。
狙いは俺ではなく、ラランを隠すことだ。
俺たちの役目は魔法発動まで、奴の意識を逸らすこと。
カナタが素早さを駆使して背後に回り込み、鎧の関節部分を狙って攻撃する。
サラスは全体の支援を担当中だ。
「くっそ硬いな!」
「無駄なことだ。ただの鎧ではないと言っただろう?」
「諦めるもんか! タクロウが諦めないうちは、あたしら全員やる気だよ!」
カナタも、ジーナも、俺の言葉を信じてくれた。
応えなければ男じゃない。
俺の魔力の大半は、ラランの加護で譲渡された。
膨大な魔力の揺らぎを、黒い騎士は察知する。
「――この気配は」
「準備できたぞ! 離れろみんな!」
「アイギス!」
俺の叫び声に反応して、アイギスも後退する。
ラランが両手を前に突き出し放つのは、最大火力の破壊。
「くらえ! ライツバースト!」
高圧縮した光のエネルギーが黒い鎧と衝突する。
光魔法は全属性の中で、魔法に対してのもっとも威力を発揮する特性を持つ。
あの鎧が魔導具なら、光魔法は弱点になる。
「ど、どうだ……!」
「――悪くない威力だ」
「マジかよ……」
黒い騎士は平然と立っていた。
ラランの最大火力を受けて尚、鎧は傷一つ付いていない。
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