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【第一章完結】抜きゲーみたいな世界に転生した童貞〔オレ〕は嫁を100人作ると決心した! ※決心しただけなので出来るとは言っていない。でも出来なきゃ死ぬらしい……  作者: 日之影ソラ
第二章 出会いと妄想の新生活

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寿退社を目指して④

 唐突に聞き覚えの無い女性の声が響く。

 聞こえてくるのは結界の中で、俺はまだ中に入っていないから見えていない。

 確かめるために結界を潜ると、そこにはこじんまりした家があった。

 イメージ的には山の中の別荘だろうか。

 木造建築の一軒家で、玄関までは階段を上る。

 その玄関の前で、クリーム色のポニーテールが特徴的な女性が立っていた。


「ララン、私だ」

「――ん? なんだジーナか。騎士団の追手かと思った」

「その通りだが?」

「……」

「ララン?」


 沈黙を挟み、ラランは扉を閉めた。


「帰れ! 私はもう働かないんだ!」

「ちょっ、ララン! 開けるんだ!」

「絶対に嫌だ! あんな場所に戻るもんか! 私は自由に生きるんだ!」

「落ち着いて話を聞いてくれ! すぐに連れ戻したりはしない!」

「嘘だ! そう言って私を騙そうとしてるんだろ! その手には乗らないからな!」


 ラランは扉に鍵をかけて立てこもってしまったようだ。

 ジーナが力いっぱい引いても扉は開かない。

 彼女は困り果てていた。


「どうすれば……」

「ちょっと失礼」

「タクロウ? 何をする気だ」


 俺は手元をカチャカチャ言わせる。

 一秒後、かチャッと音がした。


「よし開いたぞ」

「なっ!」


 開いた扉の先で余裕を見せていたラランが大口を開けて驚く。

 レンジャーのスキルの一つに、鍵開けというものがあってだな?

 何となく役立ちそうだから取得して置いて正解だった。


「今だジーナ! とりあえず捕まえろ!」

「わ、わかった!」

「ちょっ、くそっ!」

「諦めろララン。レベルは私のほうが下だが、腕力は圧倒的に私が上だ」


 暴れるラランをジーナが取り押さえた。

 彼女のステータスは体力と筋力に特化している。

 男も顔負けのパワーである。


「よしよし、上手くいったな」

「タクロウ……それを悪いことに使っていませんよね?」

「失礼な。俺が女性の寝室に忍び込むような変態だと思うか?」

「思います」

「即答すんじゃねーよ」


 本当にやましいことには使っていない。

 鍵開けスキルも、ダンジョンに潜った際に宝箱を開けられるように取得しただけだ。

 ちょっとエッチなことを考えはしたけど、実行に移してはいない。

 偉いぞ俺!

 理性がちゃんと働いている証拠だ!


「そもそも忍び込まずとも、カナタたちは快く俺を迎えてくれるからな! な?」

「ん? よくわかんないけど、そうだな!」


 キョトンとしながらも彼女は肯定してくれた。

 やっぱり嫁は最高だぜ。


「あーもう、離せよ! つかそこの奴らは誰なんだよ!」

「私の夫と妻だ」

「あとペットもいるぞ」

「誰がペットですか! 私はタクロウのサポート役! つまりは相棒ですよ!」


 こんな相棒はお呼びじゃない。

 いつも通りのやり取りを繰り広げていると、ラランはぽかーんとした顔で困惑していた。


「夫と妻? は?」


 まぁそういう反応になるよな普通。

 俺はやれやれと首を振り、ラランを見下ろしながら提案する。


「説明するから逃げないでくれよ。俺たちの未来もかかってるんだからな」

「わ、わかった……どうせ逃げれないしな」

「ふぅ、ようやくか」


 観念したらしく、ジーナも抑えていたラランの手を放す。

 二人はゆっくりと立ち上がり、改めてラランに自己紹介をする。


「俺はヒビヤタクロウ。ジーナと、こっちにいるカナタの夫で、冒険者だ」

「あーえ? 二人?」

「あたしはカナタ! タクロウの嫁第一号!」

「そして私が嫁第二号というわけだ」

「いやいや、意味わかんないから。なんで二人が同時に結婚できてるわけ? 普通ありえないでしょ? というかジーナ結婚したの?」


 次々にあふれ出てくる疑問に、一つずつ応えていく。

 話が長くなったので、ソファーが用意された部屋に移動し、座りながら話を続けた。

 一応応接室はあるらしい。

 人見知りが過ぎて森の奥に逃げ込んだくせに、ちゃっかり人が来ることを想定しているところが、ボッチ上級者って気がする。

 俺も必要ないのに客用のコップとか用意してたな……懐かしいぜ。


「要するにこいつは転生者で、女神から授かった第二加護の力で複数の女と結婚できると」

「そうだぞ!」

「で、二人はなんやかんやあってこいつに惚れて、晴れて結婚したと」

「ああ、そういうことだ」

「……」


 ラランと視線が合う。


「お前……変態なんじゃないのか?」

「失礼な! 純愛だぞ」

「そうだ。タクロウは変態などではない」

「タクロウのこと悪く言うなよな!」

「あ、いや、別に悪く言うつもりはないんだけどさ。世間一般的に、複数の女と結婚したいとか本気で思う奴て、大抵頭おかしいから」

「俺も先に説明を受けていたら考えなかったよ」


 この世界のルールを考えると、これが普通の反応と考え方なのだろう。

 悪いのは肝心な説明を忘れていたポンコツ天使だ。


「私はタクロウと一緒にいるために騎士団を辞める。そのための最後の任務で、ラランを姉上の下に送り届けなければならないんだ」

「げっ、やっぱあの人の差し金か」

「お願いだララン、私たちと一緒に王都へ戻ってくれ」

「嫌だって言ってるだろ? 戻ったらどうせ、またやりたくもない研究と仕事で生き埋めんされるんだ。私はもう働きたくないんだよ。もっと楽して生きたいんだ」


 わかる。

 すごくわかるぞその気持ち!

 俺も昔は同じことを考えていたよ。


「なんかタクロウが頷いてるんだけど?」

「似た者同士だからですよ」


「ていうかジーナは騎士団辞めるのか。いーなー私も一緒に辞めさせてもらえないかな?」

「それは無理だろう。私とラランじゃ立場が違う」

「立場なんて関係……あ、そうだ! いいこと思いついたぞ!」

「いいこと?」


 何かひらめいたラランは瞳を輝かせ、そのキラキラした視線を俺に向けた。

 なぜだろう?

 とても嫌な予感がするのだが……。


「タクロウとか言ったよな? 複数の女と結婚できるって、まだ枠は空いてるのか?」

「え? まぁ全然ガラガラだけど」

「よっし! じゃあ私とも結婚してくれ!」

「――は?」


 突然のプロポーズに、俺たちは固まった。

 困惑する俺たちに向けて、ラランは声を弾ませて言う。


「そうすれば私も、ジーナと一緒に騎士団辞める理由ができるだろ? 寿退社ってやつだ!」


 この時俺は思った。


 寿退社って言葉、こっちの世界にもあるんだな。

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