同じ穴ってことですね④
「複数の女性と結婚……ありえない! そんなもの咎落ちと何ら変わらない!」
「い、いや、さすがに一緒にされるのは」
「黙れ性犯罪者!」
「ひぃ!」
おっそろしい!
怒号だけで心臓を爆発されそうな勢いがあって、しゅんと萎縮しまう。
「ジーナ、これは命令よ。今すぐこの男と離婚しなさい」
「――!」
「重婚を望むような男と結婚など、女として、騎士として恥よ。そっこく別れて目を覚ましなさい」
「姉上……」
アイギスがジーナに詰め寄っている。
離婚とか非常に困るんだが?
この世界で離婚すると、十年は再婚できないんだろ?
それって俺は死ぬってことだからな!
ここは俺からびしっというべきか?
「うっ……」
と思ったけど、今口出ししたら斬り殺されそうな気配を感じた。
これは蛇に睨まれたカエルの気分か。
俺の未来は、ジーナに託された。
信じているぞ……。
「――できません」
「なんだと?」
「離婚する気はありません。たとえ姉上のお言葉であっても」
「――!」
よし、いいぞジーナ。
俺は心の中でエールを送る。
「私はタクロウのことを愛しています。この気持ちに嘘はありませんし、タクロウの運命も知った上で、結婚する道を選びました。この選択に後悔はありません」
「……本気で言っているのね?」
「はい。本気です。ですから私は、本日限りで騎士団を辞めます」
「え?」
思わず声が出てしまった。
ジーナは騎士団を辞めるつもりでいたらしい。
そんな話、俺たちには一度もしてくれなかったのに。
アイギスと一緒に驚く俺たちに、ジーナは申し訳なさそうに言う。
「すまない。ずっと考えていたんだが、踏ん切りがつかなかった。でも今決めた! 私はこの先もタクロウたちと一緒にいたい。そのための決断だ」
「ジーナ……」
「恥知らずね。騎士でありながら、市民ではなく惚気を選ぶつもり?」
アイギスから厳しい言葉が飛び出す。
寿退社を選ぶということは、騎士の立場を捨てるということ。
今まで積み上げてきたものを、彼女は捨てる気でいた。
それは簡単な決断じゃない。
騎士団から逃げたことを、同僚からも非難されるかもしれない。
ジーナはそれをわかった上で……。
「騎士団に所属しなくとも、市民を守ることはできます。私の意志は何ら変わりません。それに、タクロウたちと一緒なら、どんな困難も乗り越えられる。私はそう信じています」
ジーナは自分の胸に手を当てながら、俺たちに向かって優しく微笑む。
それは信頼の証。
まっすぐな意思を感じ取った俺たちは、頷いて肯定する。
「そこまでする価値があるというの? 気の迷いではなく?」
「はい」
「……」
アイギスが俺に視線を向ける。
相変わらず鋭い視線で睨まれ背筋が凍るが、どこか試すような意志を感じ取った。
彼女はすぐにジーナに視線を戻す。
「意志は固いようね。でも忘れているんじゃないかしら? 騎士団に一度入れば、自分の意志では脱退は許されないわ」
「え、そうなの?」
「ああ。それが騎士団のルールなんだ。辞める場合、上司の許可が必要になる」
「上司って」
この場合は間違いなく、アイギスだろう。
無理じゃないか?
これだけ否定的なのに、許可が下りるのだろうか。
「姉上、許可を頂けませんか? 私は、私なりの立場で騎士を目指します。姉上の教えを無駄にするつもりはありません!」
「男にほだされた時点で幻滅しているのよ。私は」
「っ……」
「もういいわ。その程度の覚悟しかない人間は騎士団にいらない。抜けたいなら許可をあげる」
意外とあっさり許可はもらえた。
しかし捨てられたような言い方に、ジーナは俯いてしまう。
俺も少し苛立った。
覚悟なら十分にあるだろう。
ジーナは決して、逃げているわけじゃない。
今までだって、優秀な姉と比べられながら、腐らず研鑽を積み上げてきたんだ。
それを一番近くで見ていたのは、彼女なんじゃないのか?
「何か言いたそうな顔ね」
「……どうして、そこまで男を嫌うんですか?」
「タクロウ」
「言ったでしょう? 男なんてケダモノしかいないの。あなたがその象徴よ」
「くっ……」
正直言い返せる立場じゃない。
だが、断じて咎落ちと一緒ではないとアピールしたい!
「俺は同意なく、女性を襲ったりはしません」
「そうです姉上! 初めても私から求め、タクロウが受け入れてくれたのです」
「ちょっ!」
「――! そう、もう手を出したのね」
ジーナが余計なことを言ったせいで、俺へのヘイトが溜まった。
アイギスは俺を睨みつける。
「気が変わったわ。今のままじゃ許可は出せない」
「あ、姉上?」
「最後に騎士として任務を受けてもらうわ。許可を出すかは、それが終わってからにしましょう」
「に、任務の内容は?」
ごくりと俺とジーナは息を飲む。
アイギスはテーブルの上から一枚の資料を手に取り、ジーナに渡した。
「難しいものじゃないわ。やってほしいのは捜索よ」
「これは……」
「本人と交流もあったし、あなたに適任でしょう。大隊長アイギスとして命令するわ! 一週間以内に、失踪した名誉騎士ラランを連れ戻しなさい!」
「名誉騎士ララン?」
誰だろう。
しかも名誉騎士って、普通の騎士じゃないのか?
失踪とか聞こえたんだが……。
「捜査には何を使っても構わないわ。期日までにここへ連れて戻りなさい。いいわね?」
「わかりました。タクロウ、カナタ、サラス、協力してくれないか?」
「当たり前だろ!」
「協力しますよ! 私の命もかかっていますからね!」
「一緒に頑張ろう、ジーナ」
「……ああ、ありがとう」
ジーナは嬉しそうに涙ぐむ。
その様子を、アイギスは意味深な表情で見つめている。
「もう行きなさい。私も忙しいのよ」
「はい。時間を取らせてしまい申し訳ありません。行こう、みんな」
「ああ、あ……」
そうだ。
一応初対面だし、ジーナのお姉さんだし。
興味本位だが、見ておいて損はないよな?
帰り際、チラッと加護を発動した俺は、アイギスの弱点を見つけた。
煌々と、ある場所が光っていた。
部屋から出て、ばたんと扉が閉まる。
「ジーナ」
「なんだ? タクロウ?」
「……姉妹だな」
「え? 何がだ?」
弱点……一緒じゃんか。
やっぱり気の強い騎士はあそこが弱いんだな!
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