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第二十一話 新たなる身体

 レスティナ視点




「…ん…」


 目が覚めて最初に見えたのは明るく照らされた天井だった。やけにはっきり見えると思いながら体を起こすと今まではなかった場所に感覚を感じたどうやら私には尻尾があるらしい。


「起きた?」


 その声の方に目を向けると、椅子に座っているシエルがこちらを見ていた。どうやら私が目覚めるのを待っていたようだ。


「ああ、私はもう新しい体になったのか?」


「うん、今のレスティナは人間ではなくオートマタだよ」


「オートマタ?」


「そうだね…ゴーレムってわかる?」


「わかるぞ、遺跡とかにいるやつだろう?」


「出来る限りそれを人間に近づけたようなのがオートマタだ」


「つまり…私はもう人間ではないのか?」


「そうだよ、試しに息を止めてみたらいい」


 そう言われて私は息を止めた。普段であれば一分もすれば苦しくなるのに一向に苦しくならず、何なら呼吸の必要性も感じないぐらいだ。


「本当に人間では無いのだな…」


「鏡台がそこにあるから見てきたら?」


 そう言われたので鏡で自分を見てみる。顔や肌はこれと言って変わりないように見えるが、目に見える特徴として、耳の上の側頭部から竜に生えているような大きくて後ろ向きの角が生えているほか、腰の辺りからあまり大きくはないものの竜のような尻尾が生えていた。


 力を入れてみると、どうやら尻尾は動かせるようだ。


 それから背中の方をチェックする。よく見ると見慣れない突起のようなものが背中に見えた。


「これは何だ?」


 背中に力を入れても何も起こらなかったので、シエルの所に戻り、聞いてみる。


「シエル?」


「どうしたのレスティナ?」


「この背中にある突起のようなのってなんだ?」


「ああ、それは翼よ。魔力を込めれば翼ができるから」


 そう言われたので魔力を込めると蝙蝠のような翼が四枚出てきた。魔力を込めた後は力を入れれば普通に動かせるようだ。


「それ、空も飛べるから後で練習するといいよ」


「飛べるのか!それはすごい」


 空を飛ぶ人間というのは話には聞いていたが、実際に空が飛べる人間なんて私は見たことなかったので試してみたくなった。暇があるときに練習してみよう。


「そろそろその体について説明したいんだけど大丈夫?」


 飛べるということに浮かれていたが、シエルに声をかけられて我に返った。


「すまない。少々翼に興奮してしまってな」


「じゃあその体の特徴についてなんだけど…」


 シエルに説明されたのはこの体の特性。私が感じた通りこの体は人間ではないので呼吸は勿論、食事や睡眠も不要らしい。また、元になったゴーレムの特性が受け継がれているため、私は魔法が使えなくなる代わりに魔法が効かなくなるらしい。これは純粋に嬉しい。私には魔法の才能がなく生活魔法を使うので精一杯だったからだ。


「外で体を慣らして来たら?」


 シエルが説明を終えると私にそう言った。


 確かにそうだ。今の体での感覚を掴んでおかないと剣が鈍るどころではすまない。


「分かった、そうさせてもらうよ」


「だったらこの剣を使って」


 シエルが見るからに業物と思われる大型の剣を私に差し出しながら言った。


「こんな物を…ありがたい、のだが大きすぎないか?」


 確かに良い剣ではあるがいささか大きく感じた。私が普段使っていたのは普通のロングソードなのでこの剣は使いこなせない可能性がある。


「大丈夫だと思うよ?試しに持ってみて」


 シエルがそう言うので持ってみた。そのあまりの軽さに


「軽っ」


 と声をあげてしまった。


「でしょ?それ、レスティナが使っていたロングソードの3倍ぐらい重い剣だよ」


「そんなにか!?」


「それだけレスティナのパワーが上がっているってこと。それなら使いこなせそうでしょ?」


「ああ!それで…この剣の名前はなんだ?」


「無いよ。しいて言うならディヴァインゴーレムの剣ってだけ」


「じゃあ私が決めても?」


「いいよ」


 私に新しい体を作ってくれ、こんな名剣をくれた上に名前まで付けていいなんてシエルには感謝してもしきれない。


 剣の名前はどうしようか。そう思った私はふと、まだ私が子供だった頃。近所の友達と棒を振り回していた時のことを思い出していた。


 そう言えばあの棒には名前を付けていたっけ…確か名前は


「ディーヴァ、だったか」


 あの棒はいつの間にかなくなってしまい、ほどなくして私は近所の子とは遊ぶ機会がなくなっていったがその記憶はずっと私に残っている。


「決めた。この剣の名はディーヴァだ。」


 剣の名前も決めた私は意気揚々とアジトを出て、体を慣らしに行った。


 外に出る際にリビングやバーを通ったのだが、既にヴィアンは夕食の準備をしていたしマルヴィアはメモを片手にバーのお酒と睨めっこしていた。


 私も怠けてはいられないようだ。


 アジトから少し離れた場所で一通り型稽古をする。思った通り、振りの速度が物凄く早くなっているほか、角や尻尾で体のバランス感覚が狂ってしまったり、体術やスキルにも影響が出ていた。


「どうやら飛ぶ練習は後回しだな…」


 そう言ってため息をついたのち、レイチェルが呼びに来るまで私は訓練に勤しんでいた。




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