それから
長ったらしい説明はカット、結論から言うね。
アウロラの計画は、全て泡と消えた。僕の証拠も役に立ったけど…何より。
獣人を敵に回したくない王国が、癌であるアウロラと王子を斬り捨てたんだ。これはこっちの陛下が圧を掛けた結果かな。
「こちらには多くの物的証拠があり、そちらは小娘その他のデタラメな証言のみ。これでもまだ、我が娘イグリットに罪があると申すか?
ならば我々は王国へと宣戦布告しよう。貴様ら王族は不要だ、悉く首を刎ねる」
と。女王陛下は玉座を奪って、堂々と座ってみせて。両側には王配殿下と王女殿下が立ち、王国の重鎮達を冷たく見下ろしていた。
陛下は、やめて欲しければ…と。イグリットさんを陥れようとした者達への、厳罰を望んだ。
王子は王族から除籍、平民として市井に放り出す事となった。次期国王は…国王の姉を母に持つ、公子が継ぐ事になると思う。それか今から、王妃が男児を産むか、かな。
イグリットさんを孤立させた王女は、80を過ぎた老人の元へ嫁がせた。
公爵は爵位剥奪、使用人も全員居場所を失った。後に元公爵は自死したという。ちなみにテオフィルは、顔がいいから男娼として、どこかの令嬢に拾われたとか。
それ以外の者は、ほとんどがアウロラや王子に唆されただけ…なので裁ききれず、放置。
で、元凶のアウロラだけど。随分と男遊びが好きなようなので、死刑を待つばかりの凶悪犯達の牢に放り込んだ。
欲を発散する相手がいれば、罪人達も暴れたり喧嘩したりしないんだって。アウロラは毎日朝から晩まで楽しんでるらしいよ。天職かもね、罰にならなかったかな?
厳しいと思う?僕は思わない。むしろ、全員処刑したいくらいだった。公爵令嬢に濡れ衣を着せようとしたのだし、妥当でしょう。
まあ、人によっては死ぬより辛い思いをしているかもね。
*
全て解決して…僕達は、島に帰る船の中。行きと違うのは、イグリットさんとユリシーズも一緒な事。
「う…美しい…」
「女神よ…!」
「結婚してください」
「是非番に!!!」
「俺は貴女と出会う為、これまで独り身だったのですね…!」
「………えーと…ごめんなさい…」
でまあ、分かってた事だけど。イグリットさんはモテモテで、番のいない男に求婚されまくってる!!ようし、ここは僕が…!
部屋で念入りに、尻尾をブラッシング。まだ彼女には、獣人の姿を見せてないんだよね。リボンも巻いとこう…キュッと。僕は貴女の愛の獣です…なんちゃって!!
服もきちっと…髪もセット完了!……こほん、行くぞ!
船内を歩き、イグリットさんのいそうなカフェへ…
「お嬢さん、俺はヴォルフと申します。どうでしょう、俺と熱い夜を過ごしませんか?」
「ちょっと邪魔〜!!イグリット様、俺はハルです。大きく従順な黒猫を飼いたいと思いませんか?」
「なんですかあんた達は!イグリットは俺の妻になるんです!!」
何やってんの彼らは!!!騎士のヴォルフと、僕の従者ハルが求婚してる!ユリシーズがカットしてるけど、これはキリがないぞ。
女性騎士に2人をつまみ出してもらい、今度こそ僕の番!
「え…トア様?そのお姿…」
やっぱり、イグリットさんは僕の尻尾に興味津々だ!
横から前に持ってきて両手で抱えて、フリフリしてみせた。
「んと。あの、あのね。僕は…リスの獣人でふ。……あにょ。えと…
モフ…この通り僕はとっても、モフモフしてます。よかったら、触りませんか…?」
「いいのですか?」
「ぜひっ!はいどうじょ!!」
「……ふふん…っ!」
……噛みまくった、恥ずかしい…!ユリシーズは笑いを堪えているけど、いっそツッコんで欲しかった!!
けど、イグリットさんが…遠慮がちに、僕の尻尾を抱き締めた。そして顔を埋めて…あふぅ…もうお婿に行けない…
ユリシーズが今度は酸っぱい顔をしている。彼には、僕もイグリットさんと結婚したい事を告げてある。
最初は嫌がってたけど…僕には恩があるからって。イグリットさんが受け入れたら、2人で夫になるのもオッケーだって!
「イグリットさん。えっと…毎日、僕をモフりたくありませんか?」
「モフモフ…はい…したいモフ…」
彼女はまだ堪能している。付け入る隙アリ!!!
2人には獣人の番という特性を説明済み。イグリットさんの持つ、特別なフェロモンもね。
「獣人の番がいない限り、ユリシーズと結婚しても君は、求婚され続けるでしょう。なので、提案ですが。
ぼ…僕と、番になりませんか!?」
「え…で、でも…」
「イグリットさんが将来領主になれば、僕もユリシーズも夫になれます!でも、返事は急がなくていいです!ただ僕が、君を愛しているという事だけ知っていてください!!」
「トア様…」
「トアって呼んでください。君は煩わしさから解放される、ついでに僕を少しでも好きになってくれたら嬉しいです。
僕の赤ちゃんを産んでくれたら、女の子だったらモフモフです!」
「赤ちゃん!?それって、つまり…」カアァ…
「!!ち、ちが、身体目的じゃなくて…!
あの…じゃっ、そうゆう事でっ!!」
ひゃーーーっ!!もう無理、イグリットさんの超可愛い照れ顔を見てると、僕の理性が保たない!!ダッシュで逃げた!!
「…ユリシーズ。なんで貴方、何も言わないのよう…」
「………他の男だったら…断固拒否だけど。トアは…特別だから」
「?」
「本当は、俺だけを見て欲しいけど。
トアに関しては…俺の事は一旦置いて、考えてやってくれないか?」
「…よく分かんないけど。分かったわ」
こうして僕は、毎日アタックを続けた。ユリシーズのアシストもあって、徐々に仲良くなれた…と思う。
船旅の間、よく女王陛下、王女殿下、伯母さん、イグリットの女性4人でお茶をしているのを見かけた。
伯母さんとも楽しげに笑っていて…助けられたんだ、と実感して頬が緩む。
僕は1人甲板に出て、海と青空を眺める。
ねえ、もう1つの世界の僕。こっちは…やり遂げたよ。イグリットは傷付かず、ユリシーズと一緒に笑っている。
そっちでは、ユリシーズはいなくなってしまったけど。イグリットを…ちゃんと守ってね。
死んでいってしまった…2人の為にも、ね。
これがイグリットとユリシーズ(とついでにトア)のハッピーエンド。




