表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死にたがりのイグリット  作者: 雨野
本編 第1章
13/36

成人式…?



 昔の私は…未来の王妃に相応しい女性となる為。

 お母様や教師に鍛えられ、血の滲む努力をしていた。

 完全に無駄だったと思ってたけど…今こそ役に立っているわ。


 背中を丸めたり、俯いては駄目。

 真っ直ぐに前を向き、優雅に微笑みなさい。

 後ろを歩くみんなと、隣に立つトアに恥をかかさぬよう…ね。



 周囲から、ほう… と感嘆の声が聞こえてくる。

 そして…このまま女王陛下の元へ挨拶へ。

 会場の中でも高座にある椅子に、男女と少女が座っている。国王夫妻と王太女殿下ね。

 椅子の前でトアは片膝を突き右手を胸の前に、私も膝を突いて揃って頭を下げた。


「お初にお目に掛かります。麗しき女王陛下、王配殿下、王太女殿下にご挨拶申し上げます」

「ええ、お顔を上げて頂戴」

「ありがとうございます。

 私はテルトラントより参りました。キーフォの娘、イグリットにございます。

 隣におりますのはトア。後ろに…」


 全員分私が紹介して、みんな名前を呼ばれるとスッと頭を下げる。


「成人おめでとう、イグリット。貴女のお話はキーフォより聞いています。

 この国に来てくれて嬉しいわ。皆も今日は楽しんでいってね」

「もったいなきお言葉、恐悦至極に存じます」


 うむ、まずまずの感触だわ。

 これで終わりではなく、1人ずつ陛下より贈り物を戴く。


 これは社交界デビューの証であるブレスレット。

 宝石はみんなバラバラだが、デザインは同じ物。新成人は1年間、社交活動中は必ず装着する。



 チラ…と陛下のお顔を拝見。パーティー会場にいる全員、変化しているから一見すると人間だけど…

 確か陛下はヒョウの獣人だったはず。ふむ…キリッとした口元に、鋭い目。うーん…格好いい女性ですね。

 対する王配殿下はほわ〜っとした癒し系?バランスのいい夫婦だなあ。


 で、現在12歳の王太女殿下。目が合うとにっこり笑ってくれたので、私も微笑み返す。すると頬を染められて…可愛い。



 とと、後ろが詰まっちゃうので退散!

 最後に一礼して、私達は下がった。


「はー、緊張した」

「でもイグリット様、堂々としていて格好良かったですわ!」

「本当、私なんて心臓が飛び出そうなほどでしたもの」


 ほっと胸を撫で下ろす、が。

 まだまだ終わりではない。次は領主家に挨拶!これは私とトアだけでいい。

 アンジェ達と別れ、会場にいるはずのグリーノ地方小領主と、キハンナ地方令嬢を探す。


「キハンナ…そっちは後にしない?」

「え?いいけど…知り合いなの?」


 キハンナ地方は、我がテルトラントとは首都を挟んで反対側のようなもの。遠く離れているのでちょっと意外。


「父上とキハンナ領主が知り合いでね、令嬢とも幼い頃会ったことがある。

 で、隠したくないから言うけど…僕昔、令嬢に「けっこんしましょう」って言われたことが…」

「んな…っ」


 何それ!?早く言ってよー!!

 うがー!と詰め寄ると、彼は目を泳がせた。


「わあっ、ごめん!?でもホラ、子供の一過性の感情だし!実際手紙のやり取りも2〜3回で終わったし。

 君と出会ってからは、令嬢を思い出すこともなくなったし…」


 何故だろう、トアの発言が言い訳っぽい。

 でも…困ったわ。


「『ちょっと、アンタがトア様の婚約者ですって?』

 『それが何か?』

 『彼は私と将来を約束してたのよ』

 『あら、でも私は正式に番となってますのよ』

 『この泥棒猫!!』

 『なんとでも仰いませ、彼は渡しませんわ!』

 …的なやり取りが始まってしまうのかしら…!?どうしよう、シミュレーションが間に合わないわ!!」

「(そっちか…なんでちょっと楽しそうなのかな、イグリット?)」


 不思議と胸が高鳴り、ニヤけてしまうのを抑えられない。女の戦い…うふふふふふ。

 アウロラとは勝負にならなかったけど…私は正妻!!!という余裕がある。負けないわ!!!


 妄想していたらトアがグリーノの小領主を発見したようで、私を引き摺って移動。おっと切り替えなきゃ!



「やあ。君がグリーノの次期領主、ギリアム君だね?」

「ん?えーと…あんのー…確かー…」


 こちらを振り向いた彼は、垂れ目に癖っ毛が特徴的ね。

 トアを指差しながら、うーんうーんと唸る。

 隣にいる少年がボソッと耳打ちした。


「あ、はいはい完璧に思い出したわ。トマ!!」

「トアね」

「あちゃー。まあ長い人生そんなこともあるさ、気にすんな」

「気にするのは君のほうだよね」


 随分マイペースな人ね…新しいタイプで新鮮だわ。

 ギリアム様はトアと言葉を交わし、次に私を向いた。


「!…なんだぁ、ノアの嫁かよー」

「トアだってば。そうだよ、僕の愛する人なんだから」

「残念。お嬢さん、オレはグリーノを代表する男ギリアムだ。お名前を伺っても?」

「はい、私はテルトラントの娘イグリット。よろしくお願いします、ギリアム様」

「ははは、様付けなんてよしてくれ。イグリットと呼んでもいいか?」

「ええ、どうぞギリアム」


 なんともフレンドリーね。差し出された右手を取り握手を交わすと、トアが間に入った。


「成人おめでとう!はい挨拶終わり!行くよイグリット」

「あ、うん。じゃあまたねギリアム」

「じゃあお前ら適当に楽しんでけ。オレはトムにくっ付いてくから」

「トアだよ!なんで来るのさ!」

「面白そうだから」


 おお…トアが男の子って感じの対応してる。

 ギリアムは側にいた少年少女にまた後で、と告げ強制的に同行。この後どーすんの?とか言っている。


「全く…キハンナ地方令嬢を探してるの」

「えーと…誰だっけ」

「君はもう黙って付いて来て…」


 諦めたわ。

 で…目的の人物は…



「トア!貴方トアでしょ!?」


 向こうから来た。


「婚約したって聞いたんだけど、私はどうすんのよ!?」

「わぁ、ジャンヌ…」


 トアはさり気なく私を背に隠し、正面から人をかき分けやって来る令嬢と対峙した。


「それは君が言ってるだけで、僕は了承してないでしょ」

「何よ、よっぽど私よりいい女なんでしょうね!?」


 うーん気が強そう。でも背が小さいようで、後ろからじゃ全然見えないわ。


「あ、その女ね!?」


 おっと見つかった。ふ…ここは優雅に挨拶してみせますわ!!トアをずいっと押し退け前に出る。


「初めまして、令嬢。私はテルトラントより参りました、イグリットと申します」


 喰らえ、お母様直伝営業スマイル大爆発!!!


 って…かわいっ。私は153センチで小さめなんだけど、更に頭1つ分小さい。赤いほっぺに大きな目、真っ赤な髪…何この子可愛いんですけど!


「ハァ〜〜〜?

 何この子クッッッソ可愛いんですけどぉ〜?」

「え?」


 私口にはしてないわよ?

 彼女…ジャンヌ様はトアを突き飛ばして私の両手を取った。


「私キハンナのジャンヌ、どうか呼び捨てにして。イグリットって呼ばせてもらっていいかしら?」

「え、ええ…喜んで」

「ハーァ声も素敵ぃ?バチクソ美人だしぃ、ちょっともうヤダァ~~~」

「えっと…ありがとう?ジャンヌもとっても可愛らしいわ」

「んはぁ~!!!」


 ええー?ジャンヌは私の腕を取って、トアとギリアムを放置してあっち行きましょ!と誘ってくる。えーと…どうしましょ?


「あーらら、取られちまったなあロア」

「トア!!ぐぅ…!だからジャンヌには会わせたくなかったのにー!!彼女ああなったら人の話聞きやしないんだから!!」


 後ろから2人の気配もするし…まあいっか。

 思ってたのと展開違うけど、喧嘩するよりいいわよね?きっと!




 *




 新成人が全員陛下に挨拶も終え、保護者や領主達も入場した。

 ギリアムとジャンヌは一旦別れて、お父様とシャルル達と合流。それぞれ飲み物を…って。



 なんでお父様とトアはビールジョッキを持ってるの?

 パーティーってワイン…シャンパンとか、レモネードなんかのジュースじゃないの?


「私お酒飲めないのよねー。ちょっとそこの貴方、ミルクちょうだい」


 ミルク。

 わりと近くからジャンヌの声がして…ミルクのグラスを受け取っている。自由ねこの国。



「では新たに成人を迎えた其方達の今後を祝し、乾杯!!」


 わあ、陛下もジョッキ掲げてるー。

 かんぱーい…お父様男らしい一気飲みね。


 ていうか料理が。パーティーってお菓子メインで、料理は少なめじゃ?それも彩り重視で、お洒落で小さな料理が並んで…

 なんでガッツリ山盛りお肉があるのよ。あとデカイ鍋があって、熱々のスープも……



「うん、うん!これが島の普通なのね!」


 いつまでも王国の常識に囚われては駄目!という訳で…お肉だーーー!!



「その肉は私が狙っていたのだ!!」

「いいえ俺が先です!!」


 隣のテーブルから陛下とお父様の争う声が聞こえるけど、幻聴よね!!


「イグリット~!あっちで決闘が始まったわ、見に行かない?」

「ジャンヌ!え、決闘って?」

「女性を巡ってガチンコバトルみたい」

「今成人式中よね?」

「?パーティーに喧騒はつきものよ!ほら、女王陛下とキーフォ様も取っ組み合いしてるわ」


 待ってそっちのほうが気になる。



 うん……あの…諦めよう!!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ