番外編 ポポロ広場でティータイム
「トキン君、ソフィアちゃん。お茶してから帰りましょう」
アンナおば様が、ポポロ広場に面した小さなお店を指差します。
ジェラート&マリトッツォ
『ポポロ ディ ポロリ』
オープンテラス席に、白と青のストライプ柄のシェードが掛かります。
とってもお洒落な喫茶店です。
「食後に出るジェラートは、このお店の物よ」
「美味しいジェラートだよね。おかわりしちゃったし」
「美味しいジェラートは、このお店で作られてたのね」
僕とソフィは、ジェラートの美味しさを思い浮かべ、ニコニコしてしまいます。
「でも今日のお勧めは、もう一つの看板商品マリトッツォよ。ジェラートはよく冷えた物を、たっぷり保管してるわ」
「マリトッツォってなんだろう?」
「丸いパンの横に、大きな切れ込みを入れて、たっぷりの生クリームをはさんだ甘味よ」
僕はにっこり頷きます。
席に着いた僕達のもとへ、二十才くらいに見える健康的なお姉さんが、注文を取りにやって来ます。
シルクのブラウス越しに、もの凄い存在感を見せつける、お胸が揺れます。
お胸の標高は、文句なしに過去最高峰です。
ボタンも三つほど開けている、開放的な美人さんです。
「シフォン、おはよう。マリトッツォを三つお願いね」
「おはようございます、アンナ様。マリトッツォ三つですね。すぐお待ちします」
笑顔で注文を取り、お店に入って行きます。
シフォンさんが、木製トレイにマリトッツォを乗せて戻ります。
テーブルに並ぶマリトッツォをみてソフィが言います。
「オレンジの香りが、もうするわ」
「ふふ、お嬢様はもうお気付きですね。当店のマリトッツォはパン生地と、生クリームの両方にオレンジピールを使用して、香りも楽しんで頂けるように仕上げてます」
「シフォンお姉さん、こんにちは、僕はトキンです。オレンジピールって何ですか?」
僕はにっこり質問します。
シフォンお姉さんは、お胸を揺らして僕の方を見ます。
ポロリはありません。
「こんにちは、トキン君。オレンジの皮を、砂糖水で煮詰めて、乾燥させたものを、細かく刻んで香り付けに使うの。それがオレンジピールよ」
僕はにっこり頷きます。
「シフォンが作るマリトッツォは、味も香りも最高よ。さあ、頂きましょう」
甘いのにサッパリした美味しさが口の中に広がります。
マリトッツォを頬張りながら思います。
もうすぐモンタルチーノ街に、沢山のお客さんが訪れます。
きっとここ『ポポロ ディ ポロリ』のジェラートも、マリトッツォも、シフォンお姉さんも大人気になりそうです。