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迷宮都市の小さな鑑定屋さん。出張中です。  作者: ジン ロック
ミラノ編
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第四十六話 シェーナ



僕は今、ピサーノ街の市街地を、快速馬車フォルトゥーナ号に揺られ、移動しています。


ルッカ街で朝食をとり、隣町であるピサーノ街に入ったのです。


ここピサーノ街は、敵性派閥の一角、ピサーノ伯爵の領都です。

本来であれば、街に入らず、急いで駆け抜けた方が安全です。


ですが、これまで聞いてきた情報から、危険は少ないと思い、直感を信じて街を進んでいます。


フォルトゥーナ号が停まります。


「ピッピーノ、そこの商会に、これと似たものがあったら、買ってきて。あの建物の横で待っているから」


僕の家人、騎士ピッピーノを使いにやり、馬車を進めます。


待ち合わせ場所で、馬車を停めます。


皆で降りて、眼の前の塔を眺めます。

ピサーノの斜塔と呼ばれているそうです。

建物が斜めになっています。

倒れそうで、倒れない面白い建物です。


「トキン様。オイラ、もう少し近くで見てきていいですか」


僕の家人、狸獣人のクワッドがいいます。


「もちろん、大丈夫だよ」


クワッドが、ペコリと頭を下げて駆け出します。


それを見た、ニコーレ・ミラノ侯爵令嬢と、その専属メイド、狐獣人のポーラさんが言葉を交わします。


そして、ポーラさんが駆け出します。


「は〜、待って欲しいのです。クワッドく〜ん」


ポーラさんが、クワッドの後を追いかけます。

振り返ったクワッドが立ち止まり、ポーラさんを待って、一緒に歩きだします。


クワッドの小さな尻尾と、ポーラさんの大きな尻尾が、同期して揺れてます。


なんか、仲良しです。




「トキン様、一つだけですが売ってました。こちらです」


ピッピーノが戻ってきました。


「ありがとう」


受け取り、チラリと見ます。

アイテムに傷が無いのを確認して、ポケットにしまいます。


ポケットに手を入れて思い出します。


そういえば、このジャケット、ニコに借りたまま、数日使ってます。

いわゆる『借りパク』です。


「ニコ、このジャケット買取りさせて下さい。言うの遅くてごめんなさい」


今日の昼過ぎには、シェーナ街に着くため、クリーム色のドレスをまとった、ニコが笑顔でいいます。


「プレゼントするわ。もう、してたつもりだったけど。フフッ」


「ありがとう」


にっこりをニコに送ります。



斜塔を一周してきた、クワッドとポーラさんが帰ってきます。


「トキン様、オイラ、近くで見れて感動しました。ありがとうございます」


「うん、良かったね。じゃ、クワッド、皆んな、そろそろ出発しよう」



〜〜〜



快速馬車フォルトゥーナ号が、ぐんぐん加速します。


フォルトゥーナの目にも、見えているのがわかります。


懐かしいシェーナ街の城壁です。


西門の前で、馬車が停まります。

門番が一人立ってます。


皆に声をかけて、馬車から飛び出します。


「スライドさ〜〜〜〜んっ」


走った勢いのまま、跳びつきます。


「トキン!帰ってきたのか!!」


スライドさんが、僕を受け止めます。


「ただいま、スライドさん」


「おかえり、トキン。さあ、皆んなにも、早く元気な姿をみせてあげてくれ」


「はいっ」


僕は、走って西門をくぐり、西門門番詰所に駆け込みます。


「バーン門番長〜〜」


僕は、バーン門番長をみて、抱きつきます。


「トキン!帰ったか!!元気そうで良かった。少し男らしくなったな」


バーン門番長が、僕の頭を撫でます。


「バーン門番長も、皆さんも元気そうで、僕も嬉しいです」


門番の皆んなが、声をかけてくれます。


「さあ、トキンに会いたい人が、この街には、たくさんいるはずだ。行ってやるといい」


「はい、また挨拶にきます」


門番詰所をでます。



フォルトゥーナ号も、西門をくぐり僕の横で停車します。


僕は隣のお店を見上げます。




小さな鑑定屋さん


『トキンの虫眼鏡』




静かに見上げます。



店から、人が飛び出してきます。


「トキン様、帰ってたぽ〜ん?」


僕の家人で、このお店を任せている、鑑定士のセドポンです。


「ただいま、セドポン。今着いたところだよ。人を待たせてるから、お土産は後でね」


「わかったぽ〜ん」


馬車に振り返ります。


「クワッド、ピッピーノここからは、僕が御者をするよ。ニコを呼んで」


僕は御者席に、飛び乗ります。


クワッドとピッピーノが車内に移り、代わりにニコがやってきます。


「ニコ、僕の手を掴んで。ゆっくり登って」


ニコが僕の手を掴んで、御者席に座ります。


「ニコ、出発するよ」


ニコは笑顔で頷きます。



久しぶりのソプラ通りを、フォルトゥーナ号を操り進みます。


みんなにシェーナ街を観てもらえるように、ゆっくりパカパカ進みます。


「トキン様〜、お戻りでしたか〜」


「ただいま〜、お土産あるからね〜」


手を振るサリンベーニ商会長に、僕も手を振ります。


カンポ広場に入ります。


ソフィこと、ソフィア・トツカーナ伯爵令嬢が居る、プッブリコ宮殿が見えます。


プッブリコ宮殿を回り込み、隣りに建つ、ヴェネート公爵家の別邸前で、フォルトゥーナ号を停めます。


出迎えに並んでいる家人達は、二十人以上に増えてます。


僕が先に降りて、ニコに手を差し伸べます。


笑顔で「ありがとう」と、御者席から降ります。

「ちょっと待ってね」とささやきます。



馬車から、ポーラさんが降ります。

ニコの斜め後ろに移動します。


エリーゼ、クワッド、ピッピーノも降ります。

馬車の前に横並びします。



僕は「みんな、ただいま」と別邸の家人達に声をかけます。


「おかえりなさいませ、トキン様」


家人達が一斉に頭を下げます。


その間をゆっくり進みます。


そして、一番奥に立つ、大好きな人に、抱きつきます。


「ただいま、母さま」


「おかえり、トキン」


離れていた時間を埋めるように、しばらく抱きしめあいます。




シェーナ街を出たときは、僕とフォルトゥーナだけでした。


でも今は違います。



「たくさん、大切な人ができたんだ。後で紹介するね、母さま」


「ええ、楽しみだわ。さあ皆さん、中に入ってちょうだい。歓迎するわ」




〜〜〜 完 〜〜〜










歓迎会を兼ねた、夕食会も終わります。



僕は、専属メイドのエリーゼとお風呂に入ります。

さっぱりしてパジャマに着替えます。


そして、母さまの寝室を一人で訪ねます。



コン、コンッ♪


「母さま、トキンです」


「どうぞ、トキン」


母さまの部屋に入ります。


「僕、母さまとお話しながら、一緒に寝たいと思って」


母さまは、にっこりこたえます。


「私も、そうしたいと思ってたわ」


母さまのベッドにもぐり込み、たくさんお話します。



母さまの、胸枕に挟まれ、眠ります。




〜 完(本当) 〜

トキンの物語「移動中です」編は

これにて完結となります。


最後まで読んで頂きまして

ありがとうございます。



続編のご案内

一話だけ投稿しております。

よろしくお願いします。


迷宮都市の小さな鑑定屋さん。

別荘から色々やります。


https://ncode.syosetu.com/n8218hy/1/

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