第四十四・五話 SS 夕陽を観ながら
僕は今、窓辺のテーブル席で、イグニア海に沈む夕陽を静かに眺めています。
向かい合う席には、紺色のドレスに、銀髪を肩までおろした、美しい少女が佇みます。
夕食を済ませた僕達は、最上階にあるダンスホールに場所を移します。
夕陽が沈みきったのを合図に、ダンスホールが落ち着いたメロディーを奏でます。
紳士淑女のカップルが、ホールに進み静かに身体を揺らします。
景色から目を外し、見つめあったタイミングで伝えます。
「ニコ、僕と婚約してくれてありがとう。僕達の婚約の記念に、これを君に贈るよ」
僕は、ヴェネチアングラスのペンダントをみせます。
「素敵なデザインね。ありがとう、トキン。私もトキンと婚約できて幸せよ」
ニコが笑顔をみせてくれます。
「このペンダントをつけて、僕と踊ってくれるかな」
「フフッ、ええ、喜んで」
僕は席をたって、ニコの後ろに回り込みます。
白く細い首にペンダントを添えます。
テーブルの横に立ち、美しい少女に伝えます。
「ニコ、凄く似合ってるよ。今夜のニコは過去最高に綺麗だよ」
と言って、手を差し伸べます。
少しだけピンク色の顔をしたニコが、僕の手をとり、耳元でささやきます。
「大好きよ」
そして、僕の頬にキスします。
小さな二人が、ダンスホールに溶け込みます。
二人だけの婚約パーティーです。
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鑑定士トキン・ヴェネート




