表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮都市の小さな鑑定屋さん。出張中です。  作者: ジン ロック
モンタルチーノ編
6/64

第五話 モンタルチーノ⑤

 朝食の時間です。

 皆と挨拶を交わし席に着きます。


 婚約者のソフィは僕の隣りに座ります。

 いつもより距離が近い気がします。

 目の前に座るアンナおば様は、昨日より肌艶が良い気がします。


 朝食のメニューは、ガーリックトースト、生ハムとルッコラのサラダとオニオンスープです。


 食後に僕とソフィとアンナおば様はジェラート。

 大人達は朝から高級赤ワインのブルネッロです。


 ちなみにモンタルチーノ子爵の名前もブルネッロです。

 ワインからとった名だそうです。

 息子のロッソ君の名もワインから来てるそうです。


 今日の予定を話し合います。

 

 まずは『アンティーク通り』の店選びに決まります。


 僕、ソフィ、アンナおば様と赤ちゃんのロッソ君で出かけます。

 ロッソ君を手押し車に乗せて出発です。


 プリオーリ宮殿前のポポロ広場から、マッテオッティ通りを四人でゆっくり進みます。


「トキン、どうしてお店を三軒にわけるのかしら」


 手を繋いだソフィが聞きます。


「小物・雑貨の鑑定をしてて気付いたのは、効果が大きく三つに分かれることなんだ」


「そうなの」


「うん。効果が『心』『身体』、自然と空間の『その他』。この三つに作用する物が多いんだ。もちろん他の効果もあるけどね」


「それで三軒だったのね。それなら、お店の名前は『クオーレ』『コルポ』『アルトロ』ってとこかしら」


「『クオーレ』『コルポ』『アルトロ』か。良い響きだね、ソフィ」


「フフフ、アンナおば様。どうかしら?」


「とっても、良いと思うわ。特に二人で決めたところが最高よ。お店も二人の感性で決めてみて」


 アンナおば様が笑顔で言います。

 僕とソフィも笑顔になります。


 ロッソ君が「おぎゃ」と一声だけ泣きます。

 みんなの足が止まります。


「あら、ここは。トキン、アンナおば様。このお店なんてどうかしら」


 赤茶色のレンガ造りの建物です。

 アーチ状の木製ドアの両脇には、小さなディスプレイ窓がそれぞれあります。


「中も見てみましょう」


 アンナ夫人が鍵の束から、一本を探し出しドアを開けます。

 

 店内は焦げ茶色の木材で統一されています。

 少し高級感もあります。

 壁にかかる棚も、そのまま使えそうです。


「このままで充分、使えるね」

「ここは『自然空間アルトロ』の候補ね」


 床でキラリと光った小石を拾い、ポケットに入れてお店を出ます。


 四人でマッテオッティ通り、改め『アンティーク通り』を進みます。


 またロッソ君が「おぎゃ」と一声だけ泣きます。

 みんなが足を止めます。


「あら、この店のたたずまいも素敵ね」

「本当だね、ソフィ。まるでロッソ君がお勧めしてるみたい。ははは」


 今度のお店は、白に近いモルタル塗りの外観です。

 木製ドアの隣りに、青色の格子枠が付いた覗き窓が一つあります。


「中を見てみましょう」


 アンナ夫人がドアの鍵を開けてくれます。


 白い床と青色の壁の内装です。

 棚を取り付けて、少し手を加えれば、良い感じになりそうです。


「ここも良い候補だね」

「ええ、【逸品アンティーク】を扱う雰囲気があって良いと思うわ『クオーレ』候補ね」


 ソフィが上機嫌です。

 出入り口の手前で見つけた青色の小石を拾ってお店を出ます。


『アンティーク通り』を進みます。

 

 すぐにロッソ君が「おぎゃ」と一声だけ泣きます。


 やはり横には良い雰囲気の空き店舗があります。


 ソフィがおとがいに手を当て「う〜ん」と考え込みます。


「確かにこのお店も素敵だわ。でも今はロッソ君よ」


 ソフィがロッソ君の前にしゃがみ込みます。

 僕とアンナおば様はキョトンとします。


「ロッソ君、良いお店を教えてくれてありがとう。どれもとても素敵だわ」


 ソフィが笑顔でロッソ君を褒めます。


「バブ」とロッソ君が返事をするように応えます。

 機嫌がいいです。


「でも君はまだ産まれて半年ほどの赤ちゃんよ。意思を持って伝えるのは不自然だわ」


 ソフィは何を言いたいのかなと、思いながら見守ります。


「ロッソ君、あなた中身は転生者じゃないのかしら?」


「ぶっ」と吹き出したロッソ君は、プイッと目を逸らします。

 額に汗が浮かんでます。


「フフッ、決まりかしら」


「えっ?ソフィ、いきなりどうしたの」

「ソフィアちゃん、転生者ってどういうことなの?」


 僕とアンナおば様は、理解が追いつかずに混乱します。


「私、ご本で読んだことがあるの。前世の記憶を持って生まれ変わるのが『転生』。ロッソ君はこのタイプだと思うの。その場合、特別な能力を持ってることが多いわ」


「じゃ、ロッソ君は赤ちゃんだけど、既に意思疎通が可能なのかな」


「そう言われてみると、ロッソはやけに物分かりの良い子だと思ってたのよね」


「他にも、何かの拍子に、他の世界に移動してしまう『転移』があると書いてたわ。どちらも遠い東にある、島国出身の人に起こりやすい現象らしいの」


 ソフィの言った言葉に、思い当たる節があります。

 

 遠い東の島国出身。

 移動して来た記憶が無い。

 気付くとダンジョンだった。

 

 冒険者のタナーカさんが言ってたことです。

 

 これはソフィが言う『転移』にあたる気がします。

 シェーナ街に戻ったら、ソフィも交えてお話してみたいです。


 お店はロッソ君がお勧めしてくれた三軒に決まります。

 午後からは大工さんと打ち合わせです。


 アンティーク通りから、ポポロ広場に戻ります。


「トキン君、ソフィアちゃん。お茶してから帰りましょう」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ