第三十九話 ベニス27
「実家からの仕送りがあるから、なんとかなるけど、私達やっぱり向いてないの」
「トーヴァ、弱音は吐かない約束なのん」
「そうですわ。まだ冒険者を始めたばかりですわ」
いつもは明るい三人組が、少し元気がありません。
エリーゼが顎に手をあて考え込みます。
僕もエリーゼが何を考えているか察します。
きっと三人の戦闘スタイルのことです。
「トキン様、エリーゼお姉様。お二人は沢山の冒険者を見てきたかと思います。お気付きの点がありましたら、アドバイスお願い致します」
ローニャさんが真剣な表情で言います。
「エリーゼ、任せた」
「はい、トキン様。それではローニャお嬢様にお聞きします。これからもグラスダンジョンが、活動拠点でよろしいですか」
「はい」
エリーゼが頷き、一呼吸おいて話ます。
「では、貴族家ご令嬢としてでは無く、冒険者として魔物と真剣に向き合って下さい。武器を手に取り、魔物と一対一の勝負を挑んでみて下さい。自らの手で魔物を屠ってみて下さい。きっと何かを掴めるはずです」
エリーゼは真面目にこたえます。
ローニャさんが頷きます。
「・・・わかりましたわ、やってみます。エリーゼお姉様、ありがとうございます。トキン様、今日はこれで失礼致しますわ」
ぺこりと頭を下げて、三人は静かに店を後にします。
なんとなくですが、三人はもう一度、ダンジョンに行ったのではないかと思います。
「エリーゼ、もう少しお店を任せてもいいかな。あちこちから、手紙が届いてて返事を書きたいんだ」
「はい、トキン様。ではお茶のおかわりをお淹れします」
「うん、ありがとう」
僕は、手紙を読んでいきます。
まずは、モンタルチーノ子爵からの手紙です。
「『アンティーク通り』の滑り出しは上々か。このまま上手く行くかは補充次第だよなぁ。ミラノからもどんどん送らなきゃ」
モンタルチーノおじ様へ、ご返事を書きます。
次は、アレンツォ子爵令嬢アリーチェの手紙です。
少し膨らんでいます。
何か入っているようです。
コロン♪と、小さなスプーンの素材が飛び出します。
「小さい可愛いスプーンだ。なになに、なおせたら返礼品として、僕にプレゼントしてくれるの?『鑑定』」
鑑定結果
「銀のスプーン」
不良品(欠け)
【銀鼠の茶匙】
幸運+0 (0/1)
100ゴルド
「銀鼠の幸運アイテムだ。やったアリスありがとう。凄く嬉しいよ『修復』」
鑑定結果
「銀のスプーン」
良品
【銀鼠の茶匙】
幸運+1
50,000ゴルド
僕はにっこりしながら、アリーチェへの返事を書きます。
次は意外な相手、ボローニャ伯爵領で出会った魔女っ子エストロです。
「どうしたのかな?あっ、あの指輪に刻まれた文様みたいなの、おぼえててくれたんだ。へぇ〜、専門の知り合いがいるのか。やっぱり人との出会い、繋がりってだいじだよね」
三つの指輪を並べて、古代文字を写します。
感謝しながら、魔女っ子への返事を書きます。
次はサリンベーニとセドポンの報告書を読みます。
問題なく、順調のようです。
二人から届いた素材は、既に修復して返送済みです。
カラン、カランッ♪
お客さんが来たようです。
「やっほ〜。噂の美少女・短剣使いマリアーナちゃんだよっと」
「いらっしゃいませ、マリアーナさん」
「お姉さん違うの、さんじゃなく、ちゃんね。もう一度いくよ。やっほ〜。噂の美少女・短剣使いマリアーナちゃんだよっと」
「やっほ〜、マリアーナちゃん。店番のエリーゼです」
「やっほ〜、エリーゼお姉さん」
おっと。作業場から聴いてて、エリーゼには荷が重いかと思いましたが、難なく対応します。
さすが、エリートメイドです。
「エリーゼお姉さん、これ鑑定お願いね」
「はい、観てみますね。『鑑定』」
僕は、鑑定室にはいかず、作業場から見守ります。
「お待たせしました。この「ガラスのコップ」は銘を【氷無のコップ】効果は 保冷+15%の逸品です。価値は30万ゴルド。買取ですと7万5千ゴルドになります」
「買取りでお願いね」
「はい、かしこまりました」
「ありがとう。まったね〜」
カラン、カランッ♪
無事に接客を終えたようです。
裏口の扉が開きます。
ピッピーノとクワッドが笑顔で帰ってきます。
「トキン様、ただいま戻りました」
「トキン様、ただいま戻りました。全部で二つの素材を見つけたのですが、鑑定してみたら楽しみな素材でした。確認お願いします」
クワッドが少し興奮気味に、アイテムを置きます。
「二人ともおかえり。さっそく観てみるね『鑑定』」
ここまで読んで頂きありがとうございます。
恒例のストック切れデス。
頑張ります。




