第三十七話 ベニス25
信頼できる鑑定士が、二人誕生します。
僕はにっこりしながら、マジックバッグをあさります。
「じゃ、まずはこのアイテムを鑑定してみて。クワッドが『探査』して、エリーゼが見つけた物だよ」
「「鑑定」」
鑑定結果
「ガラスの箱」
良品
【偶然の赤銅箱】
潤い+30%
「あれ?トキン様、この小箱も二重底かもしれません。オイラの『探査』に、もう一つ反応があります」
「本当?『鑑定』」
僕は表示機能を使って、鑑定してみます。
確かに二つ重なった表示が見えます。
「確かに、もう一つ隠れてる。クワッド、開けてみて」
僕は【針職人の千枚通し】器用さ+34を手渡します。
クワッドが慎重に、小箱の底を持ち上げます。
「トキン様、ありました。これです」
「うん、よくみつけたね。みんなで鑑定してみよう」
鑑定結果
「ガラスのペンダント」
不良品(欠け)
【赤銅ガラスの首飾り】
認識阻害R+1
「これも、スキルを得ることができるアイテム。凄い効果だけど、エリーゼとクワッドは、認識阻害のスキルはいるかな」
「私は、あまり・・」
「オイラも大丈夫です」
僕は頷きます。
マジックバッグから麻紐とハサミを取り出します。
紐をとおして、首にかけます。
「じゃ、出してくね」
僕は、バッグから【逸品】をどんどん出します。
二人も、どんどん鑑定していきます。
「じゃ、そろそろ粗大ゴミ置き場に行こう」
「「はい」」
三人でフォルトゥーナ号に乗り込みます。
今日の御者は、クワッドが務めます。
初めてだと言いますが、上手いものです。
教えるエリーゼも「筋が良い」と褒めます。
狸獣人のクワッドのしっぽが、機嫌良く揺れます。
「じゃ、二人はスキル経験値稼ぎで、僕は修復祭りね」
二手に別れます。
僕は「一般品」素材から修復していきます。
ここ、ベニスで収集した素材以外に、先日シェーナとモンタルチーノから届いた素材もあります。
「一般品」と【逸品】のベネチアングラス製品は、後でヴェネート家の家人が取りにきます。
「一般品」の家具や雑貨は「サリンベーニ商会」行きです。
次に【逸品】素材を修復します。
「トキン様、このアイテム素材ですが、先程の指輪と相性が良いかと」
エリーゼが、木片と竹材の欠片を差し出します。
「観てみるね『鑑定』」
鑑定結果
「木の弓」
不良品(折れ・欠け)
【ニレ古木の短弓】
器用さ+0 (0/30)
射程距離+0 (0/200%)
6,900ゴルド
短弓の欠点である射程距離の短さを補う。
「竹の籠」
不良品(欠け)
【永遠竹の矢筒】
素早さ+0 (0/20)
力+0 (0/20)
8,000ゴルド
この矢筒から矢が無くなることはない。
「エリーゼ、確かに凄く良いアイテムだよ。僕が使わせてもらうね『修復』」
何度か唱え、修復します。
鑑定結果
「木の弓」
良品
【ニレ古木の短弓】
器用さ+30
射程距離+200%
2,300,000ゴルド
短弓の欠点である射程距離の短さを補う。
「竹の籠」
良品
【永遠竹の矢筒】
素早さ+20
力+20
1,200,000ゴルド
この矢筒から矢が無くなることはない。
その後も、マジックポーションを飲みながら、修復を続けます。
修復した【逸品】は、モンタルチーノ街のアンティーク通り行きです。
エリーゼ達も、マジックポーションを飲みながら、全て鑑定し終わります。
「トキン様、鑑定スキルがR3になりました」
「オイラもです」
「うん。二人ともおめでとう。少し時間があるね。ティラミスを食べてから、鑑定屋さんを開けよう」
いくつか、鑑定屋さんで使うアイテムを持って、ティラミスを食べに向かいます。
カフェ
『私をその気にさせて』
三人で、ティラミスとハーブティーのセットを楽しみます。
「週末に、ミラノ侯爵家へ向かうけど、クワッド、せっかく鑑定R3になったことだし、よかったら鑑定屋さんの店長をやってみない?」
「えっ」クワッドが驚きます。
「もちろん、ミラノ行きがよかったら、ミラノに一緒に連れて行くよ」
クワッドがこたえます。
「トキン様、オイラが選んでいいなら、オイラ店長をやりたいです」
クワッドがやる気です。
「うん、それじゃ頼むよ。ピッピーノが来たら、船頭兼、護衛の剣士として、一緒に行動するといいよ」
「はい」
「日中は二人で水路の探査をして、その後、お店を開ければいいよ。ベニス本島を周り終わったら、他の島も探検してさ」
「はい、トキン様。もうお店を任せてもらえるなんて感激です。ありがとうございます」
クワッドが、立ち上がって頭を下げます。
僕は、にっこり頷きます。
「クワッド、良かったですね」
「エリーゼ先輩、ありがとうございます」
エリーゼもクワッドも笑顔です。
フォルトゥーナ号に乗って、鑑定屋さんに向かいます。




