番外編 モンタルチーノの朝
モンタルチーノへの旅の疲れもあったと思います。
僕は早々に夢の世界へ旅立ちます。
部屋のドアをノックする音が聞こえます。
僕の返事を待たずにドアが開きます。
お人形さんの様に可愛い少女が姿を見せます。
僕の婚約者、伯爵令嬢のソフィです。
シルクのネグリジェを着てます。
ランプが灯すオレンジ色の灯のせいか錯覚か、ソフィの身体が透けて見えます。
さすがは夢の世界です。
温泉でみた水着姿の数倍の破壊力です。
「トキン、来ちゃった」
ソフィが小さな声で言います。
僕は頭の後ろにまわしていた両手をソフィに伸ばします。
「おいで、ソフィ」
ほっとした表情をみせるソフィが、僕のベッドに潜り込みます。
「トキン、私、ご本で読んだ『腕枕』をして欲しいの」
遠慮がちに距離を置いているソフィが、上目遣いでおねだりします。
僕はにっこり笑顔で頷きます。
右腕を伸ばしてマットにおきます。
「ソフィ、おいで」
ソフィは笑顔で距離を詰めます。
僕の右腕に頭をそっとのせます。
そのまま、身体を密着させてきます。
心の中で「おぅふっ」と息が漏れます。
行き場を失っていた左腕の出番です。
ソフィの小さな身体を包み込みます。
「トキン」
ソフィが呼びます。
腕の中のソフィを見つめます。
「私、今とっても幸せよ」
そう言って目を閉じ顔を近づけます。
夢の中の僕は最強です。
両手で優しくソフィを抱きしめ、
キスをします。
「チュン、チュン」
と鳴く小鳥の声で目覚めます。
「いい夢、みちゃった」
モンタルチーノで迎える、初めての朝はとても目覚めの良いものでした。