第三十二話 ベニス20
ゴンドラに乗って次のお店を目指します。
マルティーナさんの案内どおりに進みます。
着いたお店は、知ってるところです。
ベネチアングラス専門店
『ピッコリーノ・グラス』
少し不安ですが、お店に入ります。
「いらっしゃいませ。あら、聖女様。ようこそ」
「こんにちは、店長さん。お友達をご紹介させて頂きます」
三十代前半に見える、優しそうな女性が、店長さんのようです。
少しホッとします。
マルティーナさんが、僕達を紹介してくれます。
「ヴェネート公爵家のトキン様です」
「こんにちは、僕はトキンです」
「トツカーナ伯爵家のソフィア様です」
「こんにちは、ソフィアです」
「ミラノ侯爵家のニコーレ様です」
「こんにちは、ニコーレです」
「まあ、なんてことなの。店長のアリアと申します。皆様、ようこそお越し下さいました。感激です」
歓迎してくれます。
僕達もニコニコです。
店内を見てまわります。
女子三人が、楽しそうです。
お土産を買うと、はしゃいでます。
僕は、その後ろを少しだけ離れて歩きます。
掘り出し物がないか、勘を働かせながら見まわります。
さっそく、気になるアイテムを見つけます。
鑑定結果
「ガラスのブローチ」
良品
【銀ガラスの涙ブローチ】
防風+25
防寒+25
1,000,000ゴルド
ベネチアングラス。
銀色の装飾が入った、涙滴型のブローチです。
小さいので、ワンポイントとして、どんな服装にも合いそうです。
これは、買いです。
ニコにプレゼントしようと思います。
場所を移して見回します
かわいいアイテムを見つけます。
鑑定結果
「ガラスの置き物」
良品
【青ガラスの蛙置き物】
快眠+10%
200,000ゴルド
ベネチアングラス。
カエルの船頭がゴンドラに乗ってます。
それだけで、買いです。
店長が、近くに来たので聞いてみます。
「アリア店長、以前ここで店長を名乗るエルフのピコさんに会ったのですが」
アリア店長が困った顔をします。
「時折りあるんです。ピコは近所の子なんです。ふらっとお店にやって来て、店長を名乗る癖があるんです。店の外で会うと元気な良い子なんです」
だいたい察したので頷きます。
「そうでしたか。この二つ包んで下さい。あと三人の分も僕がまとめて払います。後で家人が証文を持ってきます」
「はい、ありがとうございます。今、お包み致します」
三人はまだ楽しそうに、お土産を選んでいます。
もう少しアリア店長とお話します。
「アリア店長、割れてしまったベネチアングラスは、どうしてますか」
「割れた物は、残念ですが捨てています。それがどうかしましたでしょうか」
「それなら週に一度、家人を伺わせますので、譲ってください。素材代として、大体の重さで買い取ります」
「それは大変ありがたいお話です。トキン様、よろしくお願い致します」
アリア店長が頭を下げます。
僕もにっこりしてしまいます。
お茶を出してもらい、女性陣を待ちます。
三人の買い物も、ようやく終わります。
サンマルコ広場に向けて、ゴンドラを漕ぎます。
いつのまにかソフィとニコが、マルティーナさんのことを「ティナ」と呼んでいます。
僕も「ティナ」と呼びたいですが、今はただの船頭です。
ええ、わかってます。
サンマルコ広場の桟橋に到着します。
先に降りて、三人に手を貸します。
無事、三人をおろして言います。
「僕は、一度お店に戻って、馬車をとってくるから。マルティーナさん、今日はありがとう」
マルティーナさんが、笑顔でこたえます。
「トキン様、誘って頂きありがとうございました。えっと、その、」
「うん、これからもよろしくね。また今度ゆっくりお話しよう」
「はい、こちらこそ、よろしくお願い致します」
三人と笑顔で別れます。
お店に向けてゴンドラを進めます。
「あれ?ゴンドラが随分速いぞ。あっ、三人おろしたからか」
失礼な独り言を呟きながら、お店を目指します。
お店の裏手にゴンドラを寄せます。
「トキン様、お帰りなさいませ」
「トキン様、うまいですね。さすがです」
外の掃除をして待っててくれた、エリーゼとクワッドが笑顔です。
僕もにっこりです。
「うん、ただいま。クワッド、店番お願いね。ピッピーノという若い冒険者が来たら、この証文と手紙を渡しといて」
「はい、わかりました」
「エリーゼ、僕を宮殿まで送って。ソフィとニコとお話したいんだ。明日には帰っちゃうからさ」
「はい、かしこまりました」
僕とエリーゼは、慌ただしく、フォルトゥーナ号に乗り込みます。
ドゥカーレ宮殿に戻ります。




