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迷宮都市の小さな鑑定屋さん。出張中です。  作者: ジン ロック
ベニス編
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第三十一話 ベニス19

 僕は今、ベニスの水路を進んでます。


 建物の壁に挟まれた、せまい水路を抜けて、少し幅広の運河に出ます。

 視界が開け、ベニスの街並みが見渡せます。



「ベニスって、本当に素敵なところね」


 ソフィが笑顔を見せます。


「何度来ても、同じ国の景色とは思えないわ」


 ニコーレが感心しています。



 ソフィ、ニコーレ、マルティーナさんをゴンドラに乗せて、僕は船頭ゴンドリオーレをしています。

 

 ソフィとニコーレが前席に並んで座り、修道女姿のマルティーナさんが後席に座ります。


 明日には帰る、ソフィとニコーレに、ベニスを案内します。

 とはいうものの、僕もまだベニスを詳しく知りません。

 

 そこで急遽案内役をマルティーナさんに頼んだところ、心よく引き受けてくれたのです。


 マルティーナさんが、午前中に予定していた治療を、ソフィと二人であっという間に終え、時間をつくったのです。


 サンマルコ大聖堂内は【二人の聖女】の共演で、ちょっとした騒ぎになりました。


「トキン様、次を左です」


「左だね。わかった」


 マルティーナさんの案内に従い、大運河カナルグランデに入ります。


 前席に陣取るソフィとニコーレが歓声を上げます。

 S字に流れる大運河と、両岸に建ち並ぶ豪奢な建物に圧倒されたのだと思います。


 二人はやけに仲が良いです。

 将来、ソフィは正妻。ニコーレは側室の第二夫人予定です。

 でもソフィは伯爵令嬢。ニコーレは侯爵令嬢です。

 家の格は、ニコーレの方が上です。

 

 二人がどう折り合いをつけたのか、気になりますが、聞く勇気はありません。


 側室といえば、もう既に三人の候補があがってます。

 そのうちの一人が、目の前のマルティーナさんです。

 大司教の孫娘であり、地元ベニスでは絶大な人気を誇ります。

 

 ゴンドラでベニスを周るにあたり、案内役として僕が名前をあげたのです。

 また出かける約束をしていたのもあります。

 マルティーナさんならソフィとニコに紹介したら、友達になれると思ったのも大きいです。


 すると、どんな娘なのか、根掘り葉掘り聞かれ、あっという間に婚約者候補となったのです。


 もちろん本人には、まだ何も言っていません。


「トキン様、あそこに見えるオープンテラスのお店です」


 船着場にゴンドラを寄せます。

 上手くつけたつもりですが、誰一人として褒めてくれません。


「うん、上手くつけた」

 自分で言ってみます。

 女子三人は既に席についてます。


 三人の会話を邪魔しないように、静かに座ります。


 ジェラートを食べながら、女子会の雰囲気を壊さないよう、存在を消します。

 ジェラートが妙に冷たく感じます。

 

 二〜三歳くらいに見える、二人の男の子が、僕達の席に近づいてきます。

 おかっぱの髪型、着ている服、履いてる靴まで一緒の可愛い双子です。


「せいじょさま、あくしゅして」

「せいじょさま、いいこ、いいこして」


 ソフィとマルティーナさんが、同時に振り向きます。


 マルティーナさんは、気さくに応えます。

 ソフィもニコニコ見守ります。


「「せいじょさま、ありがと」」


 お礼にぺこりと頭を下げます。

 両親が待つ席に、よちよち駆け戻ります。

 双子の両親も、マルティーナさんに頭を下げて笑顔を見せます。


「マルティーナさんの人気って、本当に凄いのね」


「街のアイドルだわ、スターね」


 ソフィもニコーレもべた褒めです。

 マルティーナさんは「そんなことは」と、うつむきます。


 前回、ベニスを一緒に回った時も思いましたが、マルティーナさんの所作をみてると、お淑やかな女性であろう、としているのではなく、天然のそれなのだと気づきます。


「ニコ、私、凄く気に入ったわ」


「私もいいと思う」


 ジェラートを食べ終え、二人が満足気に言います。


「ソフィア様とニコーレ様の、お口にあった様でよかったです」


 マルティーナさんが、ホッとしています。


「フフッ、ジェラート以上に気に入ったの」


「マルティーナさん、ソフィと私は、明日ベニスを離れるわ」


 マルティーナさんは、少し戸惑いながら頷きます。


「私とニコがいないあいだ、トキンのことをお願いできるかしら」


「ソフィア様、それは・・」


「私とソフィが言いたいのは、もしマルティーナさんにその気があるなら、トキンをしっかり捕まえておいてってこと」


 目の前にいる、僕抜きで、僕のお話が続きます。

 まるで僕が浮気しそうな言い方です。

 ここは男としてガツンと言ってみます。


「あの、」


「トキンは少し黙っててね。フフフ」


「はい、仰せのままに」


 ソフィの「フフフ」で、ハッとします。

 そうでした、昨日の三人との事を思い出します。

 自らに強く言い聞かせます。

 僕は船頭。僕は船頭。


 そんな僕をみて、マルティーナさんが、クスクス笑います。

 そして言います。


「はい、私に任せてください。ソフィア様、ニコーレ様」


 三人が笑顔です。

 ゴンドラに乗って次のお店を目指します。

本日より朝9時の予約投稿を再開します。


各都市ごとの通し番号の表示を変更します。

ベニス⑤→ベニス5


番外編SSはランダムに投稿します。

よろしくお願いします。

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