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迷宮都市の小さな鑑定屋さん。出張中です。  作者: ジン ロック
ベニス編
43/64

番外編 SS クワッドの冒険

 オイラは今、ドゥカーレ宮殿の廊下で立ちつくしてます。

 長い廊下が、前後左右に続いています。


 あまりに広い宮殿内で迷子になってます。

 今、何階にいるのかもわかりません。

 立ち止まっていても、自室には着かないので、一歩踏み出します。



 話し声が微かに聞こえてきます。

 声を頼りに移動します。



「こっちは永遠イカの、海鮮パスタがあがったよ」

「イヤ鯛のカルパッチョは、あと二分ほどかかる」

「今日の客人の一人は、食通で知られるミラノ侯爵だぞ。公爵家調理人の威信がかかってることを忘れるな」

「しかも婦人がテーブルマナーの権威ときてやがる」

「でもご令嬢は、かなりの美少女だと聞くぜ」

「俺っちは、ソフィアお嬢様派だ。フヒヒ」

「おい、オマールエビのヒゲが、一本ねぇじゃね〜かっ。どうすんだ、これ」

「料理長、ドルチェは完璧に仕上がったわ」

「このタイミングでバカンス休暇なんぞとりやがった、バッジョのヤツは絶対許さねぇ。帰ってきたら微塵みじん切りの刑だぁ」

「そうだ、そうだっ」



 まるで戦場に迷い込んだようです。

 とても「僕の部屋はどこですか」とは聞けません。


 もう少し、彷徨ってみます。

 女の人の高い声が聞こえてきます。

 行ってみます。



「誰です、貴賓寝室のベッドメイキングを担当したのは」


「私です」

「私もです」

「メイド長、私もです。三人で担当しました」


「貴方達に聞きます。枕の上にあったこれは何ですか?」


「それは、髪の毛です」

「髪の毛です」

「髪の毛です」


「よ〜く見なさい。ちぢれてるではないですか!もう一度、聞きます。これは何ですか!」


「ジン、、しもの毛です」

「しもの毛です」

「しもの毛です」


「トツカーナ伯爵夫妻が使うベッドで、なんて物を見逃してるんですか!」



 とても「僕の部屋はどこですか」と聞ける状況ではありません。

 

 自力でなんとかするしかありません。

 オイラはあてもなく歩きます。

 突き当たりを右に曲がってみます。

 

 目の前に綺麗な女性が現れます。

 エリーゼ先輩が、少し首を傾げて微笑んでます。


 なんなく自室に戻ります。


 

 彷徨った記憶を呼び戻し、マッピングします。

 ドゥカーレ迷宮攻略が始まります。

 

 通路と施設、気付いたことを書き殴ります。

 書き物なんて、したことないけど無性に書きたい気分なんです。

 

「よし、攻略本が1ページできたぞ」


 エリーゼ先輩を訪ねます。


「エリーゼ先輩、さっきはありがとうございました。オイラ、記憶を頼りに攻略本を書いたんです。みてもらえますか?」


 エリーゼ先輩が、ニコリの笑顔で頷きます。


「クワッド、ここは十字路ではなくT字路。厨房とメイド控室の位置は逆。あとここは階段になってるわ」


 エリーゼ先輩は、オイラのいい加減な攻略本を、嫌な顔一つせずに添削てんさくしてくれます。


 オイラは、嬉しくって、にっこりで言います。


「エリーゼ先生、ありがとう」

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