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迷宮都市の小さな鑑定屋さん。出張中です。  作者: ジン ロック
モンタルチーノ編
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第四話 モンタルチーノ④

 一般的な教会の建物を、真っ二つに割った様な、細長くて面白い形のプリオーリ宮殿。


 夕食会前の応接室で話し合いが持たれます。

 僕、ジーヤ、子爵夫妻の四人です。


「街中に新しく湧いた『美肌の湯』の温泉宿建設費用。

『アンティーク通り』に三軒開店させる【古代の逸品】専門店の開店費用。

 王都からの行商人に支払う宣伝費用。

 領地倍増に伴う、諸々の資金として合計一億ゴルド出資します」


 僕は一億ゴルドの証文を、モンタルチーノ夫妻に差し出します。


「い、一億・・・」


 アンナおば様が絶句します。


「トキン君、流石にそれは。男爵から子爵になって、色々とり様だからと、トツカーナ伯爵から一千万ゴルド借りたばかりなんだ。流石に一億は返せないよ」


 僕はにっこり答えます。


「返す必要はありません。これは貸付けではなく出資です。ブルネッロおじ様とアンナおば様に対する出資です」


 再起動したアンナおば様が言います。


「どうして私達にそこまでしてくれるの?」


「もちろん、お二人の人柄を知って応援したいと思ったからです」


 僕ははっきり答えます。


「婚約お披露目会でのことです。元々モンタルチーノ家の『家宝』であり、さらに『幸運』をもたらすアイテムと知ってもなお【銀鼠のスプーン】を僕とソフィに贈ってくれた思いに、今度は僕が応える番だと思ってます。お二人の優しさを僕は絶対に忘れません」


 アンナおば様が、涙をぽろぽろ流してうつむきます。


「既に返礼品として、フランネルの高級毛布をもらっているのに・・・『美肌の湯』『アンティーク通り』開発宣伝費に領地開発費まで・・・」


 ブルネッロおじ様は、目をつむりつぶやきます。


「幸運アイテムは所有するだけで、幸運をもたらすとされます。ですが、さらに先があった。本来、所有すべき相応しい者に渡す事で、更なる幸運をもたらす・・・」


 おじ様は目を見開き、しっかりと僕を見据えて言います。


「契約の神の名の元に誓います。今後、何があろうとも、如何なる状況であっても、我がモンタルチーノ家はトキン・ヴェネート様を支持します」


 モンタルチーノ夫妻が深々と頭を下げます。


「モンタルチーノ殿、そう堅くならず、これから発展する街の行く末を楽しみに夫婦で尽力してくだされ。ふぉふぉふぉ」


 細かな話を詰めて、笑顔で契約書を交わします。


 

 みんなで夕食会です。

 大人達はワインも入り、賑やかです。

 食後に出たジェラートも美味しくて、おかわりしてしまいます。


 食事を終え、僕とソフィは別室に移ります。


 執事のソロさんに続いて、小さなプリオーリ宮殿を進みます。


「こちらがトキン様に使って頂く部屋になります。奥隣りがソフィアお嬢様の部屋になります」


 にっこりでぺこりして部屋に入ります。

 中はベッドが二つ、テーブルが一つ、二人掛けのソファが一つのシンプルなお部屋です。

 ベッドにはフランネルの高級毛布があります。


 僕はマジックバッグとカエルのリュックを床におろしてソファに腰掛けます。


「あ〜、美味しかった。温泉も最高だったし良い街だね」


「ええ、とっても。今、お茶を淹れるわ」


 隣りにソフィが腰掛けます。


 テーブルの上に用意されていたティーセットにソフィが手を伸ばします。


「この香りはレモンティーね。きっと旅の疲れがとれるわ」


「ありがとう、ソフィ」


 僕はにっこりお礼して、カップを口に運びます。

 ソフィがニコニコ頷きます。

 

 ソフィの細い首に巻いた、黄色のシルクスカーフが揺れます。


「ソフィが淹れてくれると特別に美味しいよ。なんでだろう、好きだからかな?」


 僕はおどけます。


「フフッ、私もトキンが大好きよ」


 ソフィはそう言って、距離を詰め、僕の肩にそっと頭を寄せます。

 さらに手をつないじゃったりします。


 二人っきりなので、少し甘々タイムです。

 しばらく二人の世界に旅します。


「ソフィ、そろそろ初めようか」

「えぇ、そうね。手伝うわ」


 マジックバッグから逸品アイテム素材を取り出します。

 空いたベッドの上に、二十個ほど綺麗に並べます。


「『修復リペア』」


 僕の両手から優しく淡い光が溢れて、ベッドの上のアイテムを包み込みます。


 沢山のアイテムが、一気にその姿を取り戻します。


「すごいわ、トキン。本当に素敵なスキルだわ」


 ソフィ大絶賛です。

 照れてしまいます。


「はははっ、ありがとう、ソフィ。じゃあ、鑑定結果を伝えるから、また鑑定書の作成お願いね」


「ええ、任せて」


 僕とソフィは、この作業を数回、繰り返します。

 途中で休憩を挟んで、お菓子を食べたり、お話したりと二人の時間を楽しむことも忘れません。

 

 ようやく全てのアイテム修復と鑑定書作成が終わります。


「私も部屋に戻って休ませてもらうわ。トキン、おやすみなさい」


「うん。ありがとう、ソフィ。おやすみなさい」


 モンタルチーノへの旅の疲れもあったと思います。

 僕は早々に夢の世界へ旅立ちます。

ここまで読んで頂きありがとうございます。

誤字報告もありがとうございます。


三件→三軒(7行目)に訂正します。


引き続き宜しくお願いします。

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