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迷宮都市の小さな鑑定屋さん。出張中です。  作者: ジン ロック
ベニス編
36/64

第二十七話 ベニス⑮

 エリーゼとクワッドと三人で、開店準備を進めます。

 三人だととても早いです。

 A型の看板を表に出します。


『トキンの虫眼鏡』開店です。

 昨日までより、少し早めの開店です。


 まずは「宝石ダンジョン」近くの、買取所から届いた不良品素材を仕分けします。

 ついさっき、開店準備中に届いたものです。


 僕とクワッドが、【古代の逸品】と「一般品」を判別します。


 判別した素材を、それぞれ綺麗に並べます。

 エリーゼが担当です。


 分けた素材のうち「一般品」の方をチェックします。

 宝石の欠片が、全部で四十個並んでます。


「鑑定」


 鑑定スキルRランク-MAXで得た「複数表示」を使います。

 これは、目の前にあるアイテムが、鑑定書付きで観えるイメージです。

 ちょっと、ごちゃごちゃして観えるので、普段はあまり使ってないです。

 

 ちなみに、鑑定スキルR4で得たのが「表示」です。

 R3までは、頭の中にイメージとしてわいていたのが、目で見えるようになった感じといえます。


 十個を取り除いて、残り三十個を残します。


「クワッド、これが僕のユニークスキル。よく見ててね」


 クワッドが驚いた顔で頷きます。


「『修復リペア』」


 三十個の宝石の欠片が、元の姿を取り戻します。

 中には、かなり豪華な装飾が施された、大粒の宝石もあります。


「うわ〜、凄いスキルです。トキン様。なによりとても綺麗です」


 僕はにっこりしてしまいます。

 クワッドに頼み、鑑定室のカウンターの上から、アルジェントの鳥かごを持ってきてもらいます。


「アルジェント、これあげるね」


 残した十個の宝石素材を、鳥かごに入れます。



「あっ」

「えっ」

「食べた?」


 三人同時に驚きます。

 カラクリ鳥のアルジェントが、一度だけ金属の羽を、上下させたと同時に、宝石素材がスッと消えます。

 


 アルジェントを鑑定してみます。


鑑定結果

「金属製のカラクリ鳥」

 良品

【気まぐれの銀梟】

 助言 6% 

 稀に定型文を話す。


「あっ、アルジェントが成長してる。効果の「助言」5%が6%にアップしたよ」


「本当ですか」

「トキン様、それはとてつもなく凄いことです」


 クワッドとエリーゼが、さらに驚きます。

 僕も「うん」と頷きます。


【古代の逸品】が成長するなんて、聞いたことがありません。

 

 ですが一方で、アルジェントは特別だからと、納得している自分もいます。

 本当に不思議な「小さなフクロウ」です。


「アルジェント、君はやっぱり凄い子だね」


 様々な金属でできた、わずか5〜6センチのカラクリ鳥は、いつものように何も言いません。

 ただ静かに存在感を示すだけです。


 これは、これまでの経緯をまとめ、レオナルド様に報告しないといけません。


 カラン、カランッ♪

 お客さんのようです。

 鳥かごを持って鑑定室に移動します。


「鑑定を頼みたい」


 十代前半に見える、一人のお姉さんが入ってきます。

 赤い髪、赤い軽鎧に弓と矢筒を背負ってます。

 一昨日も来てくれた冒険者さんです。


「こんにちは、赤の冒険者さん」


 僕はにっこりで言います。


「ふっ、赤の冒険者か。そういえば、名乗って無かったな。私の名はレッジーナ。 Cランクのソロだ」


「レッジーナさん、僕はトキンです。よろしくお願いします」


「ああ、よろしく。トキン」


 レッジーナさんは挨拶しながら、アイテムをカウンターに並べます。


「昨日この気まぐれフクロウが言った通り、私に幸運が訪れたよ」


 クール美少女のレッジーナさんが、微笑を浮かべ言います。


「これがその幸運の成果ですね」

 

 カウンターの上に、五つのアイテムが並びます。

 一目で高級品とわかります。


「ああ、そうだ。「グラス」に潜って五年になるが、初めて隠し部屋を見つけてね」


「隠し部屋ですか」


 自然と声が小さくなります。


「ああ、何年も使っているルートで、壁に隙間があるのに偶然気付いた」


 僕は頷きます。


「入ってみると、小部屋の真ん中に宝箱が一つあった。その中身がこれさ」


「そうでしたか」


「不思議な話だが、隠し部屋を出たあと、その隙間はなくなった」


「えっ、入口が?」


「ああ、俗に言う『ワンタイム・ルーム』だったと言うことさ」


 後に『ワンタイム・ルーム』と呼ばれるようになった、一度だけ入れる部屋は、建国物語【王様と時の扉】の終盤でも出てきます。

 少しドキドキします。


「すごい幸運でしたね。レッジーナさん、おめでとうございます」


「ああ、ありがとう」


「さっそく鑑定してみますね」


鑑定結果

「ガラスの皿」

 良品

【レースグラスの大皿】

 鮮度+25%

 5,000,000ゴルド

 最高級ベネチアングラス。


「ガラスの皿」

 良品

【レースグラスの小皿】

 鮮度+25%

 1,250,000ゴルド

 最高級ベネチアングラス。


「ガラスのランプ」

 良品

【レースグラスのともしび

 癒し+30%

 30,000,000ゴルド

 心安らぐ照明。

 最高級ベネチアングラス。


「ガラスの箱」

 不良品

(割れ・欠け)

【レースグラスの宝石箱】

 幸運+0 (0/1)

 1,000,000ゴルド

 最高級ベネチアングラス。


「ガラスのネックレス」

 不良品

(割れ・欠け)

【レースグラスの首飾り】

 癒し+0% (0/30%)

 3,000,000ゴルド

 最高級ベネチアングラス。


「ふむぅ〜ん、観えました。まずお皿からいきます。

 この大皿、銘は【レースグラスの大皿】効果は鮮度+25%の逸品です。価値は500万ゴルド。

 小皿もおなじ効果で、価値は125万ゴルドになります」


「ほう」とレッジーナさんが頷きます。


「次にこの「ガラスのランプ」銘は

【レースグラスのともしび】効果は癒し+30%。価値は3000万ゴルドになります」


 レッジーナさんが頷きます。


「次はこの「ガラスの箱」銘は【レースグラスの宝石箱】効果は本来、幸運+1ですが、割れて効果を失っています。それでも価値は100万ゴルドです」

 

「仕方あるまい」とレッジーナさんはつぶやきます。


「最後にこの「ガラスのネックレス」ですが銘は【レースグラスの首飾り】効果は本来なら癒し+30%ですが、割れて効果がなくなってます。それでも価値は300万ゴルドになります。

 買取希望のアイテムがありましたら、価値の25%で引き取ります。

 ガラスの箱だけは、価値100%で引き取ります」


「ランプだけ残して、あとは買取で頼む」


「はい、わかりました。端数切り上げして、四点で332万ゴルドになります。証文にしますか、コインにしますか」


「コインで頼む」


 僕はにっこり頷いて332万ゴルド(金貨三十三枚、銀貨二枚)を手渡します。


「トキン、ありがとう。こいつは礼だ、金はいらない」


 レッジーナさんが、麻袋をくれます。

 中には、細かな素材がたくさん入っています。


「レッジーナさん、ありがとうございます」


「ああ、また頼む」


 笑顔を見せて帰ります。


 赤の冒険者、レッジーナさんの幸運を、少し分けてもらった気分です。

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