表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮都市の小さな鑑定屋さん。出張中です。  作者: ジン ロック
ベニス編
35/64

第二十六話 ベニス⑭

 お日様が登りきる前、いつもより早い時間にお店に着きます。

 

 フォルトゥーナを撫でて、声をかけます。


「フォルトゥーナ、行ってくるね」


 三人でゴンドラに乗り込みます。

 僕とクワッドは並んで座ります。

 船頭ゴンドリエーレはエリーゼです。

 玉網たもあみも忘れません。

 路地裏の細い水路を進みます。

 

 鑑定屋さんの開店前に、ベニス中の水路を少しずつ探査することにしたのです。


 まずは、お店の近く、街の東部の水路です。


「トキン様、こうやってゴンドラに揺られて水路を移動してると、オイラ、水の都ベニスに居るんだなって実感します」


「うん。僕も同じ気持ちだよ」


 建物の隙間を抜ける、穏やかな風が吹きつけます。

 隣に座るクワッドが、ワクワクしてるのがわかります。

 エリーゼが操るゴンドラが、ゆっくり進みます。


 しばらく進んで、ベニス本島の東端まで来ます。


「ここまでは、何も無かったね」


「はい、残念ながら【古代の逸品】の反応は、ありませんでした」


「トキン様、戻りながらダンジョン側の水路を行きます」


「うん。エリーゼよろしくね」


 帰りは期待が持てる、グラスダンジョン側を通ります。

 ゴンドラが風に乗って、すいすい進みます。


「トキン様、エリーゼ先輩。もう少し先に、ありそうです」


 クワッドが興奮気味に言います。

 僕には残念ながらわかりません。

 仲間の力をかりることの、大切さを感じながらも、やはり僕自身ももっと成長したいです。


「エリーゼ先輩、そろそろです」


 ゴンドラがゆっくりとまります。


「さすがエリーゼ先輩。ばっちりのポイントです。トキン様、この下に弱い反応があります」


「わかった。みんな探してみよう」


 三人で玉網を水路に入れます。

 水路脇の石畳の上に、泥を積み上げます。


「これでしょうか?」


 エリーゼがすくった泥の中に、赤色のガラス片が見えます。


「エリーゼ先輩、それです」


 クワッドが、泥の中からガラス片を取り出します。

 ガラスを水路の中で揺らし、泥を落とします。

 鮮やかな赤色のベネチアングラスの欠片です。

 

「お〜、最初のポイントはエリーゼね」


「さすがはエリーゼ先輩です」


 エリーゼがニコリと笑顔を見せます。

 

 ベニスの水路を調査するにあたって、ポイント制の遊びを導入したのです。

 良品なら5ポイント、不良品なら1ポイントです。

 これはお店のお客さんの言葉を、ヒントに思い付いた遊びです。


「トキン様、すぐそこで反応があります」

 

 泥を戻して移動します。

 船頭エリーゼが、絶妙のポイントにゴンドラを寄せます。


「ここです」


 三人で玉網を持ちます。


「いくよ、せ〜の」


 一斉に探し始めます。

 泥を何度もすくい上げます。

 


「トキン様、これかもしれません」


 またしても、エリーゼが見つけます。

 泥を落として確認します。


「これは良品かな?ちょっと観てみるね」


鑑定結果

「ガラスの浮き玉」

 良品

なぎの浮き玉】

 防波+30%

 900,000ゴルド

 半径30メドルの防波効果。


「エリーゼ、おめでとう良品だよ。それでね、効果が凄いんだ」


 僕は二人に鑑定結果を伝えます。

 これはレオナルド様に、渡したいと思います。


「エリーゼ先輩、凄いです。もう6ポイントです」


「たまたまですよ、クワッド」


 エリーゼもクワッドも笑顔です。

 僕もにっこりです。


 

 少し先にゴンドラを進めます。

 次のポイントに着きます。


「せ〜の」僕のかけ声で、一斉に玉網を入れます。

 しばらく泥をすくいます。



「ここで、間違いありません。もう少し深いところに沈んでます」


 クワッドが確信を持って言います。

 もうしばらく泥をすくいます。



「トキン様、ありました。これだと思います」


 またしても、見つけたのはエリーゼです。

 フタの部分だけ、ガラスを失っていますが、金属のフレームが付いた、宝箱の形をした小箱です。


「本当に凄いね、エリーゼは」


「エリーゼ先輩、何か凄いスキル持ってませんか?」


「ふふ、今日だけ運が良かったようです」


 エリーゼの笑顔が、とても可愛いです。


「トキン様、もうそろそろで、お店を開ける時間になります」


「うん。この辺りは、また調べにこよう」


 お店に向かいます。

 クワッドが船頭に立候補します。

 

 少しずつ、ゆっくりとゴンドラが進みます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ