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迷宮都市の小さな鑑定屋さん。出張中です。  作者: ジン ロック
ベニス編
32/64

第二十四話 ベニス⑫

 カラン、カランッ♪

 お客さんです。

 小さな女の子の三人組が入ってきます。

 Fランクパーティーの『行き場のない次女』さん達です。


「トキン様、こんにちは。ここで問題なの。私達三人の名前を覚えているか答えてほしいの」


 いきなり問われます。

 僕は笑顔で答えます。


「一番左は、ボローニャ伯爵家のローニャさんで、歯ぎしりがひどい」

「うっ」

「真ん中は、フェラーラ男爵家のラーラさんで、牛なみのイビキ」

「ぐさぁ」

「一番右はマントヴァ子爵家のトーヴァさんで、寝言が卑猥」

「いやん」


 全て正解のはずです。


「名前を覚えていただいて光栄ですが、嬉しさより、心のダメージの方が大きいですわ」


「うん、聞かなきゃ良かったの」


「改めてトキン様に言われると、次女かどうか以前に、女の子として駄目な気がしてきたのん」


 おっと、僕はまた間違えてしまったようです。

 フォロー出来るかわかりませんが、足掻いてみます。


「そんなことないよ。三人ともとっても可愛いし。そういえば、パーティー名でも次女って言ってるけど、長女と次女はそんなに違うの」


「全然違いますわ。と言いたいところですが、私の所はあまり差が有りませんわ。お婆様が、伯爵の第三夫人。父がその次男で、私がその次女。跡取りが決まったら、一家揃ってお屋敷も出ることになりますわ」


「そうなんだ。ボローニャ伯爵とは、一度だけ会ってるけど、奥さんが三人いるんだね」


「うちなんか、貧乏男爵家なのに奥さん二人いるのん。で、私は第二夫人の次女なのん。五人兄弟で、嫁ぎ先はおろか、働く場所すら、地元で探すの大変なのん」


「フェラーラ男爵家も、奥さん二人居るんだ。それで五人兄弟か」


「マントヴァ家も、お母さんが三人居るの。私は正妻の次女だけど、子供が全部で九人いるの。まともな嫁ぎ先なんて、期待できないの。だから、伯爵主催のパーティーで知り合った、同い年のローニャとラーラと三人で、冒険者になったの」


「そうなんだ。貴族家は奥さんが二人以上いて、子供が多いのが普通なのかな?」


 コン、コン♪

 作業場に続くドアが、優しくノックされます。


「トキン様、失礼いたします。お話が弾んでいるようでしたので、お茶をお持ちしました」


「ありがとう、エリーゼ」


 エリーゼが、四つのグラスをトレイに乗せて現れます。

 テーブルが無いので、カウンターに並べます。


「うわぁ、綺麗な方なの」

「公爵家の家人ともなると、品が違いますわ」

「きっとトキン様お付きの、エリートメイドさんですのん」


 エリーゼ、大人気です。


「トキン様、よろしければ、追加でティラミスをお持ちします」


「うん、頼むよ。エリーゼ」


 エリーゼが、ティラミスを四人分並べて、作業場へ戻ります。


「トキン様、素敵な方ですわね」

 

 ローニャさんが、瞳をキラキラさせています。


「うん。エリーゼは、美人なだけでなく、何を頼んでも完璧にこなすんだ。さあ、遠慮なく食べて」


 ついさっき裏の水路で、泥をすくってたとは言えません。


 美味しい甘味ドルチェを食べながら、お話を聞きます。


「冒険者を選択したってことは、向いてるスキルがあったからなの? あっ、もちろん話せる範囲で、構わないからね」


「戦闘スキルは、持ってませんわ」


「私も持ってないの」


「私もなのん」


 ローニャさん、トーヴァさん、ラーラさん共に、戦闘スキルは無いと言います。


「持ってないから、グラスダンジョンを選択したとも言えますわ」


「スライムしか出ない、他より安全性が高いダンジョンなの。小さな子でも挑めるの」


「ドロップ品も、ベネチアングラスで綺麗なの、人気のダンジョンなのん」


 三人とも貴族令嬢だからでしょうか、とってもお話しやすいです。

 やっと気付きましたが、三人とも語尾に特徴があります。

 

 金色セミロングのローニャさんは「〜わ」

 苺色おさげのトーヴァさんは「〜の」

 水色ショートのラーラさんは「〜のん」


 ティラミスを食べながら、お話を続けます。


「でも私達三人は、魔法が使えるのん」


「すごい、三人とも魔法使いなの?」


「と言っても、三人で一人前ですわ」


「ローニャが土魔法、私が火魔法、ラーラが水魔法使いなの」


「土魔法と水魔法で、壁をつくったり、泥濘ぬかるみを作ったりして、スライムの動きが鈍ったら、火魔法で仕留めるのん。単独だと、まだ誰も魔法を当てられないのん」


「そっか、協力して戦ってるんだね」


 僕は思います。

 何でも一人でやる必要性はあまり無くて、大事なのは協力しあえる仲間だと改めて思います。

 

「グラスダンジョンは、十歳以下の冒険者も多いですから、パーティーで協力して、より安全に戦ってるのをよく見かけますわ」


「女の子だけのパーティーも多いから、もっと明るいうちに切り上げて、帰る子も少なくないの」


 おっと、これはお店の開店時間にかかわる情報です。


「私達もそろそろ帰るのん」

「そうですね。トキン様、ご馳走様でした。とても美味しかったですわ」

「トキン様、お話できて楽しかったの」

「トキン様、また明日なのん」


 カラン、カランッ♪

 三人がお店を出ます。

 ラーラさんが振り返って言います。


「トキン様、昨日のトーヴァの寝言は『そっちは違うからぁ』だったのん♪」


 凄く気になります。

 

 僕もお店を切り上げます。


 フォルトゥーナ号で帰ります。

 エリーゼにクワッドも入れて三人です。

 仲間が増えてにっこりです。

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