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迷宮都市の小さな鑑定屋さん。出張中です。  作者: ジン ロック
モンタルチーノ編
3/64

第三話 モンタルチーノ③

「これはこれは、お初にお目に掛かります。トキン・ヴェネート様とソフィア・トツカーナ様でございますね」 


 初老の紳士は僕とソフィを知ってるようです。


「私、アレンツォ子爵家で執事をしておりますジジーノと申します」


 と言って深く綺麗な礼をとります。


「お楽しみの所、お邪魔してしまい申し訳ございませんでした。お詫びの挨拶も出来ましたゆえ、これで失礼させて頂きます」


「ちょっと待って下さい、ジジーノさん。折角アレンツォ領から来られたのは温泉に入る為でしょう。馬車の中にどなたか居るのでしょう」


「そうですわ、ジジーノさん。遠慮なさらず一緒に楽しめるはずですわ」


 ジジーノさんは深く頭を下げて言います。


「お気遣いありがとうございます。確かに馬車にはアレンツォ家ご令嬢アリーチェ様がおります。ですが流石に身分違い、本日はこれにて」


「ふぉふぉふぉ、ジジーノ殿。ここで会ったのも何かの縁。そう言わずに共に温泉を楽しむことはできんかのぅ」


「そうですわよ、ジジーノさん。ここモンタルチーノの温泉は身分を問わず楽しむものですわ」


 ジーヤもバーヤさんも、ジジーノさんを引き留めます。


「ジジーノさん。アリーチェさんは何歳くらいの方なのでしょう」


 ソフィの問いに、ジジーノのさんが恐縮しながら答えます。


「アリーチェ様は今年五歳になられます」


「ソフィ、行こう」


 僕はソフィの手を引いて馬車に駆け寄ります。

 馬車のドアを優しく二回ノックします。


「アリーチェさん。僕はヴェネート家のトキンです。一緒に遊びましょう。よかったらドアを開けてもらえませんか」


「アリーチェさん。私はトツカーナ家のソフィアといいます。一緒に温泉を楽しみたいの。どうかしら」


 しばらくして、馬車のドアが遠慮がちにそっと開かれます。

 バスタオルを巻いた可愛らしい女の子が降りてきます。


「この様な姿で失礼をお詫びします。アレンツォ子爵家のアリーチェと申します」


 アリーチェさんが上品に膝を折り挨拶します。


「こんにちは、僕はトキンです。会えて嬉しいです」

「こんにちは、私はソフィアです。よろしくね、アリーチェさん。トキン、連れて行っちゃいましょ。フフフ」


 ソフィがニコニコでアリーチェさんの手を握ります。

 僕もにっこり頷いてアリーチェさんの手を握ります。

 二人でアリーチェさんを引っ張り温泉に向かって走ります。


「ちょ、ちょっとお待ち下さ〜〜い」


 アリーチェさんの懇願虚しく、三人は温泉に足を浸します。


 アリーチェさんのバスタオルがほどけます。

 ソフィが、サッっとキャッチします。

 アリーチェさんの水着姿が露わになります。


「アリーチェさんも『スクルミッツォ』ね。私とお揃いよ、フフフ」


 ソフィがニコニコしています。

 アリーチェさんの顔は真っ赤です。

 

 しばらくしてアリーチェさんが口を開きます。


「トキン様もソフィア様も強引過ぎです・・・でもお陰で楽しみにしてた温泉に入ることができましたわ。誘って頂き感謝致します」


 アリーチェさんが上品な笑顔を見せます。


「アリーチェさん。僕もソフィも同じ五歳なんだ。様とか無しで呼びあえる友達になりたいな」


「私もアリーチェさんとお友達になりたいわ。ソフィアじゃなく、ソフィと呼んでほしいの」


 アリーチェさんがおとがいに右手を添えて考え込みます。


「う〜ん。お二人とも一度言ったら引かない気がしますわ。わかりました、今から私達は友達ですわ。私のことはアリスと呼んで、トキン、ソフィ」


 アリスが上品にクスクス笑います。


「はははっ、よろしく、アリス」

「よろしくね、アリス。フフフ」


 新しい友達アリスは、茶色の髪をポニーテールにした、とても品のある美少女です。

 僕とソフィよりちょっと背が高いです。

 成長が少し早いのでしょうか、ペッタンじゃないです。


 三人でぬるま湯をかけあったり、鬼ごっこをしたり、石灰岩の滑り台を楽しんだりして遊びます。


 ジーヤ達三人も談笑しています。

 

 温泉を満喫してあがります。

 カエルのリュックから、銀製カップ三つと、

【冬竹の水筒】

 空間×500%

 腐敗耐性+50%

 を取り出します。


 アンナおば様が用意してくれた、氷入りブドウジュースをそそいで、ソフィとアリスに手渡します。


「冷えてて美味しいわ」

「うん、本当に美味しいね」


 アリスは色々教えてくれます。

 

 今、カイン王国では国民の関心はシェーナの魔物襲来事件で、貴族の関心は僕だそうです。


 突如現れたヴェネート公爵家唯一の後継候補であり、なんとかしてお近づきなりたいが、ヴェネート公爵様が「勝手な接触は絶対に許さない」と公言しているうえに、ソフィア・トツカーナ伯爵令嬢との婚約発表がなされ、皆、静観せざるを得ないとのことです。


 僕が鑑定屋さんをやっているのも、幸運アイテムを集めてるのも知ってると言ってます。


 僕の個人情報は盛大に漏れまくりのようです。


 アリスが言います。


「トキン、この竹の水筒は、銘を【冬竹の水筒】効果は空間×500% 腐敗耐性+50%の凄い【古代の逸品】ね」


「えっ、アリスも鑑定スキル持ちだったんだ」


 アリスが口に手を当ててクスクス笑います。

 鑑定スキル持ちなりの悩みを聞きます。

 僕はにっこり答えます。


「シェーナ街に腕利きの鍛治師が居るんだ。でも修理依頼は数年間の順番待ちになるらしいよ。僕から頼んでみるよ。どうしても直したいアイテムは僕宛てに送ってよ」


「ありがとう、トキン」

「よかったわね、アリス」

「えぇ、腕利きの職人がいる都会のシェーナが羨ましいわ、ソフィ」


 僕達三人は手紙のやり取りと、再会を約束して別れます。


 また一つ良い縁に恵まれます。

 

 プリオーリ宮殿に帰ったら【古代の逸品】の修復リペア祭りです。

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