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迷宮都市の小さな鑑定屋さん。出張中です。  作者: ジン ロック
ベニス編
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番外編 SS 魔女っ子の調べもの

 ガツガツ、ジュルリ、ゴックン♪

 貧乏学生が集う食堂に、品の無い音が響きます。


「ふぅ、食ったくった。ゲフ。え〜と、それでなんだったっけ」


 赤い三角帽子と、樫の木の杖を隣の椅子に置いた、小さな魔女っ子が問いかけます。


「もう、貴方が私に頼みごとをしたから、調べてきたんじゃない」


 魔女っ子の正面に座る、学友はいきどおります。


「あ〜そうだった、そうだった。ゲフ。思い出したよ。で、わかった?」


「もう」と言って学友は、二枚の羊皮紙を取り出します。


「まず、紋章のほうね。貴方がやけにリアルに描いた、この有翼のライオン。これを家紋としている貴族家はヴェネート公爵家だけよ」


「やっぱりそうよね。ベニスに行くって言ってたし」


「そうなの?名前は聞いてるの?」


「トキンと名乗ってたわ、五歳だって」


「それを先に言いなさいよ。トキンといったら、話題の公爵家跡取りじゃないの。紋章官の父に聞くまでもなかったじゃない。ハァ〜」


 学友は悪友に、心からのため息をつきます。


「あれ?トキンって有名人だったの。ごめん、知らなかったよ」


「もういいわよ。私の関心事はこっちよ」


 学友がもう一枚の羊皮紙を示します。


「あなたは、やけに写実が上手いから、間違いないと思うけど、この文字はおそらく『古代ラエティア語』よ。古い魔術、主に呪術に使われたと伝わってるわ」


「呪術に使われた古代言語か〜。まさに君の専門分野だね」


「そうよ、とっても興味深いわ。手紙を書いて、写をもらってちょうだい。私が訳してみせるわ」


 魔女っ子は腕を組んで、うんうん頷きます。


「トキンとは、世話になったまま別れたから、少しは役立たないとね。忘れられるのも嫌だし。ついでに、我が友の探究心も満たされると」


 おずおずと羊皮紙を取り出し、その場で羽根ペンをはしらせます。


 文頭の書き出しは、

 『私の小さな王子様』です。

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