番外編 SS 小さなご令嬢のひととき
「鑑定」
鑑定結果
「銅の短剣」
不良品(ひび割れ)
【紅葉の短剣】
魔力+0 (0/20)
火属性魔法(発動不可)
23,000ゴルド
「はぁ、この子はとっても綺麗な色合いなのに、効果を失ってしまってるわ」
小さなご令嬢は嘆きます。
「とても優秀なのに、本当に残念だわ」
お行儀良く、オレンジティーをひと口含み喉を湿らせます。
「ジジーノ、次を見せてくれるかしら」
「お嬢様、次はこちらになります」
老執事が小さな包みを差し出します。
「あら、小包み?」
老紳士が静かにこたえます。
「つい先ほど届きました。送元はシェーナ街のヴェネート公爵家となっております」
「トキンからね」
小さなご令嬢に、笑みが広がります。
丁寧に包みを解きます。
細長い上質なマホガニー材の木箱が見えます。
「なにが入ってるのかしら♪」
微笑みを浮かべて、蓋を開けます。
中から、丸められた羊皮紙と、シルク布が見えます。
羊皮紙を手にして、公爵家の家紋が押された封蝋をそっと解きます。
トキンからの手紙を読みます。
顔を赤らめ、シルク布を開きます。
中から綺麗な髪飾りが姿を見せます。
鑑定結果
「銀のヘアピン」
良品
【雪結晶の髪飾り】
魔力+10
300,000ゴルド
樹枝六花結晶の髪飾り。
「綺麗・・本当に素敵だわ」
小さなご令嬢は、姿見の前に移り、機嫌良くヘアピンを留めます。
「ジジーノ、似合うかしら」
満面の笑みで振り返ります。
「お嬢様、とてもお似合いでございます」
老執事の言葉に、満足して頷きます。
「ジジーノ、続きは明日にしてほしいの」
老執事が静かに頭を下げて退室します。
「トキンったら、ソフィがいながら、困った人ね」
口では怒りながら、もう一度、手紙の一文に目をおとします。
『この素敵な髪飾りを観たとき、君の上品な姿が目に浮かんだから』
「もう、これじゃ、まるで恋文じゃない」
小さなご令嬢は、顔を赤らめながら、しばらく姿見の前に、機嫌良く立ち続けます。
ポニーテールに輝く銀の髪飾りと、羊皮紙の一文を何度も交互に見直します。




