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迷宮都市の小さな鑑定屋さん。出張中です。  作者: ジン ロック
ベニス編
24/64

第十九話 ベニス⑦

 お店を開けたいと思います。


 お気に入りの刺繍が入ったエプロンをします。

 後ろのヒモをぎゅっとしめます。

 ポケットに【昔蜻蛉ムカシトンボの虫眼鏡】を入れます。 

 オレンジ色の帽子をかぶります。


 大工さんが作ってくれた、A型の看板を外に出します。



『トキンの虫眼鏡』


アイテム無料鑑定・買取

不良品素材も買取ります



 トキンの虫眼鏡、ベニス出張所開店です。

 お客さんが来てくれるか、ドキドキします。

 

 エリーゼは裏でフォルトゥーナの世話と掃除をしてます。

 

 僕は本を読んで時間を潰します。

【王様と時の扉】を開きます。

 ページをパラパラとめくります。


「あった、ここだ」



『カインと七人の仲間達は、ついに巨大な怪物の、息の根を止めることに成功します。

 

 怪物が黒霧とかわり消え去ったあとに、粗末な木箱をみつけます。

 

 斥候のミャーコが、乱暴に木箱を蹴破ります。

 木箱の中から、黒い布を取り出します。

「くそったれがっ、食いもんでも出しやがれっ」

 まるで男のように乱暴な言葉を放ちます。


 それを咎める者は誰一人としていません。

 皆、同じ思いだからです。

 何日、食べ物を口にしていないのか、誰もがわからないほどなのです。

 

 それでも下山を急ぎます。

 休む余裕はありません。

 ここヴェットーレ山の怪物達は、あまりに大きく、そして硬すぎたのです。

 旅立ちまもない、カインと仲間の装備では、毎回苦戦を強いられます。

 体力の低下も明らかです。

 一刻の猶予もないのです。

 皆、無言で下山を再開します。


 日暮れが近づく森のなかに、薄気味悪い声が響きます。

「ケケケケッ」

 皆、足を止めて振り返ります。』



 カラン、カランッ♪

 お店のドアが開かれます。

 女の子三人が入ってきます。

 ベニスで初めてのお客さんです。


 本にカエルのしおりを挟んで閉じます。


「いらっしゃい、僕はトキンです。アイテムの無料鑑定と買取をやってます」


 僕はにっこり挨拶します。


「トキン様、お初にお目にかかります。ボローニャ伯爵家のローニャと申しますわ」


「トキン様、私、マントヴァ子爵家、次女のトーヴァと申しますの」


「トキン様、はじめまして、フェラーラ男爵家、次女のラーラと申しますのん」


 あれ?冒険者の格好をしてるけど、違う目的で来たのかなと思い聞いてみます。


「うん、はじめまして。三人は冒険者でいいのかな?」


「はい、私達次女三人で『行き場のない次女』というパーティーを組んでおりますわ。まだFランクの駆け出しですが、毎日グラスダンジョンで戦っておりますわ」

 

 ボローニャ伯爵家のローニャさんが答えます。

 金髪の、これぞお嬢様という感じの女の子です。


「そうなんだ。みんな僕と変わらないくらいの年齢だよね。モンスターは怖くないの」


「私達、全員六歳ですの。グラスダンジョンは、どこまで降りてもスライムしか出ませんの。むしろ若い冒険者しかおりませんの」


 マントヴァ子爵家のトーヴァさんが答えてくれます。

 苺色の髪をおさげにした、背の低い女の子です。


「そっか、三人はそれぞれの領地じゃなく、ベニスに住んでるの」


「はい、安宿一部屋に三人で住んでますのん。ローニャの歯ぎしりで、中々ねむれませんのん」


 フェラーラ男爵家のラーラさんが追加情報まで教えてくれます。

 話し方はおっとりしてますが、水色の髪をショートカットにした、ボーイシュな見た目の女の子です。


「ちょっとラーラさん、トキン様の前で何を言い出しますの。ラーラさんだって、牛のようなイビキをかいてるのに、ひどいですわ」


 ローニャさんが、反撃します。

 トーヴァさんは「おほほ」と笑ってます。


「トーヴァも笑ってるけど、一番タチが悪いのん。寝ながらスケベな夢を見て、毎晩、卑猥な寝言がうるさいのん」


「そんなことないの。トキン様、騙されてはダメなの」


 なんだか収拾がつかなくなってきます。


「ははは、それで鑑定依頼はあるのかな」


「そうでしたわ。トキン様に見ていただきたいのは、これですわ」


 ローニャさんがカウンターに、一つのアイテムを置きます。

 虫眼鏡を取り出して鑑定します。


鑑定結果

「ガラスのブレスレット」

 良品

【青ガラスの腕輪】

 清潔+5%

 50,000ゴルド

 身体を清潔に保つ。


「ふむぅ〜ん、みえました。このガラスのブレスレットは銘を【青ガラスの腕輪】効果は清潔+5%の逸品です。価値は50,000ゴルド。身体を清潔に保ってくれる効果があります」


「トキン様、鑑定ありがとうございます。明日からは、不良品素材もお持ちしますわ」

「トキン様、明日またお願いしますの」

「トキン様、今夜のトーヴァの卑猥な寝言、明日教えるのん」


 三人はぺこりとお辞儀して店を出ます。

 

 ラーラさんの言葉が気になりますが、やはりお客さんとの、やりとりが楽しいです。


 ローニャさんが素材を持って来てくれると言ってます。

 ありがたいです。


 カラン、カラン♪

 お客さんのようです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 出てくる店名やパーティー名で毎度吹いてしまう
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