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迷宮都市の小さな鑑定屋さん。出張中です。  作者: ジン ロック
ベニス編
11/64

第九話 フィレンツ①

前半は暴力的なシーンが続きます。


苦手な方は、

中程の空白以降から

お読みください。

 僕は今、フィレンツ街の手前、約2キロメドルの辺りにいます。


 僕の足元には、後ろ手に縛りあげた三人の男が転がっています。


 真ん中に転がっている男に問います。


「お前達のような、他人を害する者に一切容赦するつもりは無いと伝えておきます。誰に頼まれたか、白状する機会を一度だけあげます」


「お前みたいなガキに言う訳ねーだろ」


 僕は容赦なく【ガルガノの木剣】力+30 体力+30を振り抜きます。


 ゴキンッと手の骨が砕ける音がします。

 少し遅れて男の野太い悲鳴が上がります。

 

 左隣りで横たわる男の前に立ちます。


「あなたにも誰に頼まれたか、白状する機会を一度だけあげます」


「い、言えねーんだ」

 

 僕は容赦なく【ガルガノの木剣】を叩きつけ男の両手を潰します。

 男の悲鳴があがります。


 一番右端で転がっている男の横に立ちます。


「お前達がただの野盗でない事は見れば分かります。三人とも二周目は発言権がありません。あなたにも一度だけ白状する機会をあげます」


 僕は怒りを込めて、しかし静かに問います。


「エ、エンツォの野郎にグフゥ・」


 ヒュッという風切りがします。

 男のノドに矢がはえます。

 

 僕は頭を手で庇いながら、前のめりに伏せます。

 矢の生えた男の体を抱え、僕の身体の上に被せます。


 トスッ、トスッと矢の突き刺さる音が続きます。



 しばらくして飛び道具の襲撃が止みます。


 沈黙の時間が流れます。


 

 注意深く、周囲の気配を探ります。

 襲撃者の気配はありません。

 ですが気は抜けません。

 

 横になったまま、マジックバッグを探ります。

【軽業師の長盾】

 守り+15

 重量−100%

 を取り出します。

 

 慎重に長盾と男の体を入れ替えます。


 もう一度、襲撃者の気配を探ります。

 気配はありません。


 盾の下で、身体をうつ伏せにします。

 出来うる限りの低姿勢で立ち上がり、駆け出します。

 左手で長盾を背中に貼り付け、背後をカバーします。


 首から下げた【オリーブ古木のホイッスル】魔力+10を吹きます。


 しばらくして、街道の前方に砂煙が立ちます。

 フォルトゥーナが全力で駆けて来ます。


 フォルトゥーナが速度を緩め、僕の横をすり抜けます。


 タイミングをはかり御者台に飛び乗ります。


「ありがとう、フォルトゥーナ」


 一声掛けて、馬車を急旋回させます。


「フィレンツまで、あと少しのはずなんだ。全力で駆けてフォルトゥーナ」


「ヒヒィ〜ン」


 フォルトゥーナが力強くいななき、グングン加速します。


 駆けながらニンジーノの言葉を思い出します。

「日頃は温和な性格で、いざって言う時は力を出す。賢い子でさぁ」


 一対多の立ち回りを教えてくれたのもニンジーノです。


 お土産案件です。












 前方にフィレンツ街の南門が見えて来ます。


 速度を落とします。

 二人の門番に家紋を見せます。


「ヴェネート公爵家、トキン・ヴェネートです」


「ポーロ商会より、うかがっております。どうぞお通り下さい」

「このまま直進して、ベッキオ橋を渡り、右手に見えて来ますベッキオ宮殿を目指しますと、ポーロ商会がありますシニョリーア広場となります」


 紳士な態度の門番二人ににっこりで頷きます。


「お二人の礼儀正しい仕事ぶりに敬意を表します。ありがとう」


 初めて見るフィレンツの街をフォルトゥーナと進みます。


 御者台に座る、小さな僕を見て、街の人達は笑顔で道を譲ってくれます。


 僕はフィレンツ侯爵とメディツ商会は嫌いです。

 ですがフィレンツ街はとても素敵な所だと思います。

 街が綺麗で通りも良く整備されています。

 建物の色も明るくて元気が出ます。

 

 聞いていた大きな橋を渡ります。

 ヴェッキオ橋と言うそうです。

 なんと橋の上にもお店があります。

 小さな宝石店が何軒も並びます。


「フォルトゥーナ、フィレンツ街は大都会なんだね」


「ブルルルゥ」とフォルトゥーナが返事をします。


 右手に大きな建物が見えて来ます。

 あれがヴェッキオ宮殿だと思います。

 あの宮殿はフィレンツ侯爵の住まいではなく、メディツ家の住まいらしいです。


 シニョリーア広場に着きます。

 まずはポーロ商会フィレンツ支店に挨拶です。

 ガラス張りの扉を開けます。


「こんにちは、トキン・ヴェネートです」


 店の奥から二十代前半に見える若者が現れます。


「トキン様、お待ちしておりました。店長のマルコです。どうぞこちらへ」


 応接室に通されます。

 若い店員が飲み物を出してくれます。


「ありがとう」


 にっこりで声を掛けてジュースを口にします。

 よく冷えたオレンジジュースです。


 僕は小声で話します。


「マルコ店長、街の手前の街道で襲撃にあいました」


「なんとっ、襲撃とは。よくぞご無事で」


 マルコ店長も小声で答えます。


「エンツォという名前に聞き覚えはありますか」


「フィレンツの街は大きいですから。おそらくこの街だけで、エンツォは何人もいると思います」


 僕は頷きます。

 マルコ店長が続けます。


「ただの偶然かもしれませんが、隣りのメディツ商会本店の店員にもエンツォはいます」

誤字報告ありがとうございます


定員→店員

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