第八話 シェーナ②
扉が開いてセドポンも笑顔をみせます。
鑑定室に移ります。
「トキン殿、お帰りぽん」
「ただいま、セドポン。これお土産ね、ジェラート食べながら話そう」
二人でジェラートを頬張ります。
「うわっ、美味しいジェラートぽ〜ん♪」
シフォンお姉さんのジェラートはシェーナ街でも好評です。
「買い取りしたアイテムは、言われた通り分けてあるぽん」
【逸品】の良品、不良品
「一般品」の良品、不良品
の四つに分けてあります。
「『幻の左ストレート』に卸す武具は別にしてあるぽん」
「セドポン、ありがとう。完璧だよ」
「ありがたきお言葉ぽ〜ん♪あとコレ『たぬきの皮』から買い取った指輪。見たけど、呪われてるぽん。カンポ広場のドブさらいクエスト中に見つけた。って言ってたぽん」
指輪を受け取ります。
以前、買い取りした【新雪の指輪】と同じように、文字か模様かわからない部分に横傷が入っています。
「わかった、他の素材と一緒に持っていくね」
次はセドミンにお土産を渡しに行くと別れます。
御者をニンジーノに任せて、馬車に乗り込みます。
預かった指輪を鑑定します。
鑑定結果
「銀のリング」
不良品(傷)
【深雪の指輪】
幸運−1 (−1/1)
5,000ゴルド
リペアで呪いを解きます。
鑑定結果
「銀のリング」
良品
【深雪の指輪】
幸運+1
50,000ゴルド
本来の効果を取り戻します。
幸運アイテムが増えただけでなく「共鳴」しそうで嬉しいです。
ですが、少し嫌な予感がします。
この二つの呪われていた幸運アイテム。
ただの勘ですが、人為的な気がします。
誰が何の為にかは、わからないので今は心に留めておくだけにします。
ソプラ通りのど真ん中、カンポ広場の南に位置する、お店前に馬車がとまります。
生活用品の総合商会
『サリンベーニ商会』
間口、三メドル、奥行き十五メドルの店内を進みます。
左右両方の壁に、たくさんの絵がかけられています。
これも売り物だそうです。
若い画家達の応援を兼ねていると聞いています。
インテリアとして需要があり、密かなヒット商品らしいです。
奥の大きな売り場に出ます。
たくさんのお客さんがいます。
テーブル、ソファ、食器棚、ベッド、机、絨毯などが並ぶ家具コーナーには、家族連れが多い気がします。
食器、調理器具、アクセサリー、文具などが並ぶ小物雑貨コーナーには、若いお客さんが多いです。
お店が大きいので、一つのアイテムをたくさんの種類から選べます。
値段も少し安くしているようです。
僕を見つけたサリンベーニとセドミンが笑顔でやってきます。
「トキン様、この通り大繁盛です」
「うん、凄いね。サリンベーニに任せて正解だったよ。小さなお家に補充分の用意をしておくから」
サリンベーニは笑顔で頷きます。
以前、住んでいた小さなお家は、別邸離宮のすぐ隣りにあります。
サリンベーニが元々、持っていた馬車の置き場、商会の商品ストック置き場、セドミンとセドポンの住まいに使っています。
「セドミン、これモンタルチーノのお土産のジェラートとハチミツ。全員の分あるからみんなで分けてね」
セドミンの笑顔が弾けます。
「フフ〜ン♪」と嬉しそうです。
あまりに店が大きいので、店員を十名ほど雇い、交代で常時七名ほどが売り場に立っているそうです。
他にも配達人を二人雇っていると言います。
以前、ジーヤが言っていました。
「市民に仕事を用意出来るかどうかで、領地が発展するかどうかが決まるとも言えるのぅ」
店内を見渡します。
忙しく動きまわる店員さんと、楽しそうに笑うお客さんがいます。
僕も少しはトツカーナ伯爵領のシェーナ街に貢献出来た気がします。
二人と別れ小さなお家を目指し、フォルトゥーナ号を操ります。
四つある小さなお家の南部屋に入ります。
以前はジーヤとワカバが使っていた部屋です。
今は商会の倉庫部屋に使っています。
部屋中に溢れていた商品ストックが、一つも残っていません。
モンタルチーノから持ち帰った物。
ヒロン達が集めてくれた物。
セドポンが買い取ってくれた物。
全てをリペアしていきます。
部屋中に商品が溢れます。
この在庫量でも一週間くらいしか持たないかもしれません。
サリンベーニが独自のルートで仕入れてくる商品を加えても、十日から半月分ではないかと思います。
僕がシェーナを離れられるのは、今は一週間から十日が限度だろうと思います。
もう一つの小さなお家に入ります。
以前は、サーラ達メイドが使っていた西の部屋です。
【古代の逸品】の不良品素材を広げます。
ヒロン達が集めてくれた物が八点。
セドポンが買い取ってくれた物が五十点あります。
これを一気にリペアします。
セドポンが買い取った良品の【古代の逸品】七点を加え、全部で六十五点に鑑定書を作成します。
その内、十五点は武具なので『幻の左ストレート』行きです。
残りはモンタルチーノからの、馬車に乗せて『アンティーク通り』で販売します。
ようやく、ひと段落つきます。
別邸離宮に戻って旅の準備です。
明日はフィレンツに向かいます。




