第6話 果心居士
10歳の俺は饗談に案内されて、那古野城の城下町の、ある屋敷に向かっていた。
「アニキ、何か妖しい屋敷っすよ。こんなところにどんな用事なんすか?」
この男は池田恒興、2歳下の8歳で養徳院の息子、俺の乳兄弟だ。
恒興は俺と一緒に沢彦宗恩から学門を、青山信昌と内藤勝介から武芸の教育を受けているが2歳下なので、俺の方が技術も力も上であることを日々実感している。
将来俺の家臣として活躍して貰うし、最も信頼出来る者になるはずなので、優しく接していたら、いつの間にかヤンキーの後輩みたいになっていた。ははは。
本来、恒興は10歳になった時に正式に俺の小姓となるのだが、いつも一緒にいるので小姓気取りで雑用をしてくれている。
今回も俺の外出で一人では行かせられないと、林秀貞に言われて同行していた。
門や外壁には蔦が絡まり誰も出入りしていない、まるで幽霊屋敷だ。
と言うか、ゴーストの饗談が潜む屋敷だから、幽霊屋敷で間違いない。
腰に差した刀を抜いて二振り。
蔦を切って門を開ける。
ギィィィィィィ。
門を開けると厭な音がしたが、構わず中を進む。
「ひぃ、待ってくださいよぉ」
恒興が後を追いかけて来た。
玄関の扉に絡まった蔦も切って扉を開ける。
屋敷の中に入ると真っ暗なホールだ。
壁際のランプの火が次々に点いていく。
「ひゃぁあああ! 勝手に火がついたぁ」
恒興が俺にしがみつく。
饗談が火を着けてるだけなんだけどね、恒興には饗談が見えないから、そりゃ驚くよ。
「ツネ、落ち着け」
俺は恒興をツネと呼んでいる。
「だ、だって。勝手に火が付くなんてぇ、お化けっすよぉ」
その時、前方から濃厚な魔力が吹き付けた。
「うぉ、ひゃぁ、ヤバい 、ヤバいっす」
恒興は腰が抜けたのか、腰を下ろして震えながら俺の足にしがみつく。
俺は恒興を無視して、平然と目の前に沸き出た影を見詰める。
「よく来てくれた。果心居士だね」
「ほほう、儂の魔力を浴びても微動だにしないとは、大した胆力だ。如何にも儂が果心居士よ。お主が織田吉法師だな」
影から現れたのは、白髪白髭で背筋伸びた老人、黒いローブを羽織り、禍々しい杖を持っていた。
「俺が吉法師だ」
「ほっほっほ、転生者か」
「へぇ、分かるか。果心居士はリッチだね」
マップにも『果心居士(種族:リッチ)』って表示されてるし。
「む! 一目で見抜くとは……、やるのう。流石は転生者だ、お主はこの世界で何を成す?」
「天下布武!」
「天下とはなんぞ?」
「この世の全てだ」
「ほっほっほ、面白い。この世の者達の天下は、精々五畿内というのに、この世の全てと申すか。目的を達成するには次から次へ現れる抵抗勢力を倒す必要があるな。さぞ多くの屍を乗り越えるのだろうよ。良いだろう、お主に手を貸してやろう」
「おお、有難い。宜しく頼むよ」
「ほっほっほ、だが良いのか? 儂の様に明らかに魔の者を側に置いて……」
「ふふ、乱世を治めるは奸雄だ。清濁併せ呑む度量が必要さ」
「ほっほっほ、気に入ったぞ。お主の一生に付き合ってやるかのう」
「ひゃい、あわわわわ」
果心居士の禍々しい魔力に恐怖で失禁する恒興だった。
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