第31話 蚊
ダンジョン『虫の洞窟』前人未到の地下9階に降りて来た俺達。
地下9階のモンスターは『蚊』だ。
体長1mで真っ暗な洞窟内を静かに飛び回る暗殺者。ぷーんと言う音がしない。蚊の刺針に刺されると吸血は勿論、病原菌を移される。怖い敵だ。
「アニキ、この階は真っ暗で不気味っすね」
恒興キョロキョロ辺りを見回すが暗くて何も見えない。
「ツネ、この階モンスターは蚊だ。静かに襲って来るから気をつけろ」
「吉法師様、怖いわ」
帰蝶は相変わらず抱き付いて来るが、暗闇なので大胆だ。俺の首筋や耳を舐めたりしやがる。嫌では無いんだけど、恥ずかしい。そして耳に温かい吐息を吹き掛ける帰蝶。
「うっ」
「アニキ! 大丈夫すか」
恒興が心配するが、感じただけだから。
「何でもない」
「はぁ、またいちゃついてるっすね」
バレバレだ。
前方では刀を振る音と何かを切り裂く音がする。
「がはは、良い訓練になるぜ。見えない敵の気配を察知して斬る! 良いねぇ」
新免無二の声が聞こえる。
「果心居士、明るく出来るか?」
「ほっほっほ、出来なくは無いが。佐助の方が得意であろう」
「おら、明るくする」
猿飛佐助の仙術で明るくなった洞窟内は、思ったより広い空間だった。
「松明もいらないんだぁ……」
藤吉郎は一人ごちる。
周りには蚊のモンスターが飛んでいて、無二、慶次、小次郎が倒した蚊の死骸が十数匹落ちていた。
「きゃっ、怖い」
また、胸を押し当てて抱き付く帰蝶。全く怖そうに見えない、笑ってるし。
取り敢えず1匹テイムし、俺の横に止まらせた。
「皆! こいつ以外は倒して良いよ」
俺の号令で各自蚊のモンスターを倒し始めた。明るくなればこっちの物だ。もともと速く飛べないので、無二や慶次、小次郎の敵ではない。恒興だって数匹倒した。
果心居士が俺のテイムした蚊を収納し、佐助が蚊の死骸を収納していく。
「がはは、佐助! 先へ進むぜ」
無二に言われて佐助が先頭に転移し、索敵を行う。
「こっち」
佐助の指示で俺達は進み始めた。
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地下10階は斑猫、地下11階は蜚蠊、地下12階は飛蝗、地下13階は髪切虫、地下14階は兜虫と鍬形虫、地下15階は虻、地下16階は蠍だった。
因みに斑猫の頭部は金属光沢のある緑色、前翅はビロード状の黒紫色に白い斑点がありとても綺麗で、ほのかに果実の香りがするので、高く売れる……はず。なので大量にGETしておいた。
また、兜虫と鍬形虫、蠍の外骨格は固くて刀では斬れないので、防具にするには最適だ。仲間の防具を作り余ったら売るので、これも大量GETした。
斑猫の外骨格も同様に固く、派手で良い香りがするのを見て、慶次が防具にする気満々だった。
また、蠍の毒は帰蝶が欲しがっていたので、後で解体してあげる事にした。
「もう地下16階……。吉法師様、通常は8階まで行くのに1泊はするのですが、半日も掛からずにここまで来るとは、凄すぎます。何だか凄く強くなっていくし、一生ついて行きます」
と藤吉郎が感動して俺に抱き付く。
「あら、衆道は駄目よ」
帰蝶が藤吉郎を引き離していた。
「そ、そういうつもりはありません!」
真っ赤な顔で否定する藤吉郎。
俺もそんな気ないから。
さあ、次は地下17階だ。いよいよ最深部も近くなった。敵のモンスターも脅威が増して来るが、レベルアップした俺達の敵ではないだろう。
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