本屋に行って、ふと思うこと。
本屋に行くのが習慣になっている。
若い頃は、日課だった。
今日はあの本屋、明日はあの本屋、隣町に新しい古本屋ができた、などと、わくわくしながら通っていた。
今ではせいぜい、週一がやっとだ。
図書館から借りた本も読まねばならない。
さて。
お目当てのコーナーもお目当ではないコーナーも、ひと通りうろうろと彷徨い、気付いたら、二冊の本を手にしてレジへ並ぶ。
初老に差し掛かるのだろうか、白髪混じりの男性店員さんを見て、思う。
ーーこの人は、なろう登録はされているのだろうか?
ピッ。ピッ。
「カバーは付けますか?」
「あっ、要りません。」
ーー書き専だろうか? 読み専だろうか?
「ポイントカードはお持ちでしょうか?」
「あっ、あります。ポイントは使えますか?」
ーーどのジャンルが得意だろうか?
「346ポイント貯まってます。」
「あっ、全部、お願いします。」
「かしこまりました。」
ーー私の書いた作品より、ポイントが高いじゃないか。
「お会計変わりまして、〇〇円です。ありがとうございました。」
やはり、あれか。仕事の後、帰宅後に、酒でも飲みながら、パソコンで書くのだろうか。
いや、最近は職場でしか、パソコンに触らない人もいる。タブレットかもしれない。
そんなことを考えていたせいか、受け取りを待っている店員さんに、怪訝な顔をされて、慌てて本の入った袋を受け取る。
「すっ、すみません、どうも。」
ーーあの店員さんは、きっと、歴史ジャンルだ。いや、意外と、恋愛に強いかもしれない。
とりとめのない思考は止まらない。
こうなると、流行りのコートを着てゆっくりと店内を見て回る女性も、ベビーカーを押す家族連れも、全て『登録者』に見えてくる。
ーーいかん、いかん。買った本でも読んで、少し頭を切り替えねば。
よく行くチェーンのカフェに入る。
カフェラテを頼み、席へ向かうと、そこには沢山の人が、コーヒーを飲みながら操作している……スマホ、タブレット、ノートパソコン。
ーー嗚呼。こんなにも。
私は買ったばかりの本を机に置いて、スマホを取り出し、小説家になろうサイトにログインしたのだった。
(続く)
近所の本屋さん、よくお世話になってます。