表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/14

2

ヒセアム。

「ふざけおって、あのメスガキ……!」


 苛立ちのままに拳を振り下ろす。

 先程城を去った2人の女を思い出す。

 使えない特殊能力の持ち主など、レイス神に儂ら選ばれた人間に奉仕するのが当たり前なのだ。それを、小癪にも儂の能力に抵抗し、城を飛び出すなど……!


 許されない。

 許されるはずがない。


 貴様らなど、儂の手のひらの上で転がっていれば良いのだ!

 言われるがままに体を差し出し、その身の一片まで使われるのが正しいあり方だというのに! それを……それを!!


 断じて、許されてはならない。


 更には桐谷という勇者のまとめ役だ!

 偉大なるレイス神に選ばれておきながら、あの態度! 栄誉にむせび泣きながら拝命し、身を粉にして勇者の任を全うすべきであろう! それが無能をかばうだと……?


 先程の言動を思い出す。

 怒りに満ちた表情、与えられた能力を交渉材料とする許しがたい暴挙。

 そして言うに事欠いて、無能が儂らよりも役立つと来た。


「がああ!」


 怒りに任せ、腕を振り下ろす。風が巻き起こり、破壊音とともに豪奢なソファが真っ二つになった。


「何か……」


『黙れ!』


「っ、うぅ……」


 扉の向こうからのうめき声で、ようやく冷静さを取り戻す。

 扉を開けると、喉を抑えて蹲り、口をパクパクとさせるメイドの姿があった。美しい女性の無様な姿に、嗜虐的な欲求がこみ上げる。


「……『話してよい』ぞ」


「は、あぁ……失礼、しました……」


「うむ」


 平伏するメイドを見て、満足感を覚える。

 これが正しい姿だ。

 このメイドの持つ能力は、衣類の汚れを落とす力、だったか。大貴族の娘で多額の資金を費やして調べた能力だったが、度し難いほどに役立たず。

 故に踏みつけられる。

 それが真理なのだ。


 有用な能力を持たない者は、等しく、高貴なる者に奉仕するべきなのだ。


「……だが、見目だけは良かった。殺すのはもったいないの」


 ビクリと身を竦ませるメイドには、既に興味が失せている。片手を振って追い払い、思索に耽る。


「……ふむ。悪くないな」


 あの生意気なガキ2人が平伏し、地に頭を擦り付け、涙を流しながら許しを請う。泣き、叫びながら体を蹂躙され、美しい体を汚される。最後には、目から光が失われるまで凌辱された後、どこぞの変態貴族にでも売り払ってやろう。


 ……うむ。

 良い。


 方法などいくらでもあるのだ。

 にやりと唇が歪む。


「ソロウを呼べ」


 聞きつけた使用人が慌てて走り去るのを見ながら、脳裏には首輪に繋がれ、悔しそうに顔を歪ませる無能2人の姿が浮かんでいた。


 やってきた太った男、ソロウに対し、命ずる。


「トウミ、アオイという女を捕らえよ。お前の特殊能力で隷属させ、我が前に連れて来い」


「御意に」


 ソロウはひび割れた声で了承の返事をする。

 王国の闇が動き出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ