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秋に芽が出て育つ恋  作者: 美雪


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28/53

28 木曜日 様々な提案

 いつもありがとうございます。突然お休みしてすみませんでした。

 連載再開しますが、週末寝込んでて本編の連載がヤバイので、一日一話更新になると思います。

 よろしくお願い致します!



「話というのは大きくわけて三つ。一つ目はここのホテルの存在は絶対に秘密ってこと。ヘンデルとか王太子にも言って欲しくない。なぜなら、ここはセブンのホテルだ。友人達も利用する。つまり、第二王子の側近のたまり場なんだよ。だから凄く怒られちゃってさ」


 話というのは、このホテルの存在に関する口止めの確認だった。


「二人は口が固いし信用できると思っている。エゼルバードの指示で組んで、カドリーユを踊ったメンバーでもある。だから、まあ教えたことはギリギリ許して貰ったけれど、本当は駄目だって……なんで、改めてここのホテルのことは誰にも言わないで欲しい」

「秘密を守れない者には相応に制裁する」


 そう言ったのはセブンだ。


「会員にもそのことは厳重に伝えている。だが、対象は会員だけでない。同行者、このホテルのことを知る者も同じだ。秘密を守れなかった場合、確実に何かが起きるだろう。ウェストランドの力をあなどるな」

「セブンが凄く怖い感じなので、まあ、普通に秘密にしてくれれば問題ない」


 シャペルはさっさと次の話に移行した。


「二つ目。婚活チームのことも知っているよね。これも当たり前だけど秘密だ。王族や王子府の業務に関することだけに、守秘義務の対象になる。二人は王族の側近の妹だし、リーナ様の側にもいる。守秘義務の重要性は理解していると思うけど、その点も合わせてよろしくね。言わなくてもわかっているとは思うんだけど、このメンバーから伝えた方が本気度を理解しやすいってことになった。大丈夫だよね?」

「当たり前でしょう? 馬鹿にしないで!」

「この程度の秘密が守れないようでは、シャルゴットを名乗れません」

「ならば問題ない」


 しかし、もう一つ話があった。


「三つ目。この間、カミーラがちょっと面白い話をしたよね?」

「えっ、面白い話?」


 ベルは全くわからなかったが、カミーラはすぐに思い出した。


「もしかして、ホテルの話でしょうか?」

「それ。ブティックとか、宝飾品店が出入口になっているやつ」

「ああ、あれね。もしかして、採用?」


 ベルは興味津々とばかりに尋ねた。


「いや。あれは不採用。でも、他に女性が入りやすい店についてとか、ホテルに関する意見を聞きたいんだって。セブンの家族って特殊な女性ばかりで、一般の貴族の女性とは感覚がかけ離れ過ぎてるから参考にならない。そこで、二人に白羽の矢が立った」

「私達だって、必ずしも一般的な貴族な女性じゃないわよ。まあまあ上の方だもの」


 ベルは多くの貴族の女性の中で自分や姉が普通、標準ではないことを自覚しているため、そのように思われるのは困ると感じ、はっきりと口にすることにした。


「勿論、それもわかっている。セブンが考えているのは二人のような高位の貴族の女性達が気に入るホテルだ」

「すでに持っているわよね? そういうホテル」


 ウェストランドは多くのホテルを所有している。勿論、その顧客も様々だが、高位の貴族の女性達も利用していた。


「そうだけど、どこのホテルも人気過ぎて大変らしい。婚活ブームのせいで余計にホテルの需要が高まっているから」


 婚活ブームの催しはホテルでの開催が多い。


 自分の屋敷で開くと、様々に細かい部分を指示しなければならず、必要なものの手配もしなければならない。何かあれば、全て自分の責任になる。


 その点、ホテルは金さえ払えばいい。気軽に簡単に催しを開ける。


 食事が美味しくない、係の態度が悪いとなっても、全部ホテルの責任にすればいい。主催者側の責任が全くないわけではないが、はるかに軽減される。


 王都の不動産も右肩上がりで高騰しているため、大きな屋敷を所有するのも維持するのも難しく、費用がかかるようになってきている。


 そのせいで領地では先祖から受け継いだ城や大きな屋敷を構えつつも、王都での住居は小さめのもの、社交シーズンの滞在用や通勤用と割り切ってしまう傾向にある。


 そういった住居では大きなパーティーを開く部屋がないことも、ホテルでの催しを後押ししていた。


「新しくホテルを作るつもりなの?」

「まあ、そんな感じ」

「ですが、婚活ブームはやがて落ち着きます。ホテルを作っている間にブームが終われば、思うように収益を上げることができないかもしれません。多くの者達はブームに便乗しようと考えますが、事業をするということであれば、冷静に長期的な展望や収益の確保を考慮する必要があります。安易にホテルを新設するのはどうかと思いますが」


 カミーラの意見に男性陣はさすがだと感じた。


「その点は大丈夫。というのも、セブンが作ろうと思っているのは婚活ブームのためのホテルじゃない。女性のためのホテルだから」


 女性のためのホテルという趣旨は悪くないとベル達は思った。


「とにかく女性が安心して利用でき、くつろいだり楽しめたりするようなホテルだ。二人もそういうホテルがあったらいいと思わない?」

「そうね。いいと思うわ!」


 ベルは大賛成した。


 しかし、カミーラは答えない。


 男性達はカミーラの返事を待った。しかし、なかなか答えはない。


 ついに、シャペルが尋ねた。


「カミーラはどう? よくないと思う?」

「……あくまでも個人的意見ですが、よくないと思います」

「どうして?」

「色々理由はあります。ですが、私がこの件に協力する必要もないと思います。なぜ、親しくもない者達のために私の意見を教えなければならないのですか? 商業的な話であれば尚更です。関係ありません。私には何の益もありませんので、そのお話はここまでにしていただけないでしょうか?」

「じゃあ、アルバイトってことでどう? 勿論、かなりの報酬が期待できると思うよ」

「どの程度の報酬をいただけるのでしょうか?」

「セブン、アルバイト代いくら?」


 セブンは答えるのではなく、質問した。


「条件次第だ。今日だけ付き合うというのであれば、あまり多くはない。だが、今後その事業について優先的に時間を割き、意見を出すということであれば多くする。可能であれば、長期的な協力を依頼したい。仕事ということであれば、雇用契約を結び、守秘義務を課すことになる。どうする?」


 カミーラは眉を上げた。


「面倒ですので、アルバイトはしません」

「えっ?! ものすごくお金になりそうじゃない?! 仕事ということであれば年収に結び付くし、それこそ大金をふっかければいいのに!」


 断るのは勿体ないとベルは思った。


 しかし、カミーラは首を横に振った。


「ディヴァレー伯爵は私達とは違う世界に住んでいます。貴族ですが、王族だと考えて判断しなければなりません。雇用契約は忠誠を誓うのと同じようなもの。仕事については守秘義務があるので話せません。王太子派の者達に裏切り者扱いされないためには、断るしかありません」

「……そうかもね。さすがカミーラだわ! 凄くよく考えているのね!」


 セブンの後はロジャーが話を切り出した。


「私もカミーラに協力して貰いたいことがある。どのようなことかといえば、私の婚約者候補を片付けるという内容だ。一日だけ手伝ってくれればいい。成功報酬は百万。どうだ?」

「私とは全然レベルの違う依頼が来たわ!」


 ベルは具体的な報酬額を聞いて驚いたが、カミーラは冷静だった。


「ノースランド子爵に婚約者候補が四人いることは知っています。片付けたいということは、私をアルバイトとして雇い、ノースランド子爵の相手として仕立てるということでしょうか?」

「単純に言えばそうなる」

「お断りします」


 またもやカミーラはアルバイトの話を断った。


「どうして?! たった一日で百万なのよ?!」


 ベルはなぜカミーラが断るのか理解できないと思った。


「簡単です。まずは成功報酬と言った部分が問題です」


 成功報酬というのは、何かが成功したことによって支払われる報酬だ。


 話の内容を考えれば、ロジャーの婚約者候補達を片付けなければ成功とはいえないため、報酬は出ない。


 長年ロジャーの妻の座を目指してきた女性が、カミーラが現れたからといってすぐに引き下がるわけがない。


 そして、その女性達を説得するのはロジャーではなくカミーラだ。たった一日で四人の女性を説得して婚約者候補から辞退させるのは難しい。


 結局、ただ働きであるばかりか、四人の女性達の恨みを買うだけで、いいところは一つもない。


「そんなアルバイトはズルいわ!」

「しかも、ギールとは言っていません。成功しても百万ギニーだとしたら?」

「最悪過ぎるわ!」

「男女及び縁談関係の話や仕事は醜聞沙汰になりやすいため、断るのが簡単で賢明でしょう。お金を稼ぐよりも、自らの評判と立場を守る方が重要です」


 一見すると非常においしい話であるかのようなロジャーの話をすぐに断った理由を披露され、ベルと男性達はカミーラの賢さを改めて実感した。


「じゃ、ジェイルの番」

「えっ?!」


 ベルは驚き、カミーラも同じく眉をひそめた。


「……私もカミーラに話がある。先日、共にパーティーに出席した。互いに一人での参加ではないことをうまく活用できたと思っている。しばらくは婚活ブームが続くため、担当している仕事も長引くだろう。一、二回程度であれば誘いやすい。だが、常に出席先が同じとも限らない。そこで、はっきりしておきたい」


 ジェイルはカミーラを真っすぐに見つめた。


「互いに同じ催しに出席するということであれば、同行役を依頼したい。私は仕事、カミーラは情報収集のためだ。また、元々私しか参加しないような催しについては、同行役のアルバイトとして依頼したい。頻繁ではない。一回につき二千だ。必ず受ける必要はない。都合や気分に応じて受けるかどうかの返事をしてくれればいい。どうだろうか?」


 ベルは愕然とした。


「ジェイル様の同行役のアルバイトなんて! 無償でも同行したい女性が沢山いるのに!」


 カミーラも同じように感じた。


 ジェイルの同行役を務めたい女性は多くいる。わざわざ報酬を出して雇う必要はなかった。


 それでも報酬を出してカミーラに依頼したいという部分に、金額ではあらわせない価値があった。



 カミーラ VS セブン  雇用契約による縛りを回避! 勝者カミーラ! 

 カミーラ VS ロジャー 割に合わない仕事を回避!  勝者カミーラ! 

 カミーラ VS ジェイル 勝負の行方は次回です。

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