廻ル世界
滴る汗の一粒一粒全てが美しい宝石のような輝きを放っている。
流れる髪の一本一本全てに私の目は惹きつけられ、時間と共に移り変わる灰色の景色は動きを止め、時計仕掛けの私は静止する。
まるで酸の雨でも降ったかのように、私はギシギシとなって後ろを振り向く。
そこには日の光を閉じ込めた長い黒の髪を弱く吹く風たちに遊ばせ、乳白色の細い腕を縫いつけた精巧に作られた人形を思わせる後ろ姿があった。
あまりの美しさに目を奪われ、はっと声をかけようとする。
しかし、口から出てくるのはギッギッと軋む歯車の音だけだった。
あの顔が見たいと私の中の欲望が言う。
見てどうするのだと私の中の理性が言う。
もし想像と違ったらと私の中の悲観が言う。
噛み合わない私がまた軋む。
次にはっとなる頃にはもうあの後ろ姿はなく、もう世界も動き始めていた。
ギッギッ、ギシギシ、カチッ、私の歯車もまた噛み合ったのか何事もなかったように動き始めた。
きっとこの世界は、私は、不完全な歯車を束ねた神さまのおもちゃだ。