14話 DQNと親友
相沢との喧嘩後、親友の由加と公園で出会った日向は、由加のおかげもあり相沢との仲直りを決意する。
その後、オシャレなレストランに入った二人は遅めの昼食を取り歓談に華を咲かす。
しかし、もちろん二人とも恋多き華のJK。
話題はやっぱり「恋」や「モテ」へと移りゆく……。
「ふぃー……食べた食べたぁ」
注文していたサンドウィッチを綺麗に平らげた由加はいかにも満足げにお腹をさする。
「ふふっ……ホントに美味しそうに食べるよね由加は」
いつもはしっかりものの由加が珍しく子供っぽい仕草を見せたので、私は思わず笑みを溢してしまった。
すると、その当人たる由加はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
「日向知ってる?」
「ん?」
「ご飯を美味しそうに食べる女の子はモテるんだよ?」
「え!?マジ!?」
もはや反射のレベルで驚いてしまった私。
オシャレな店内に私の声が響く。
「ちょっと日向声大きいっての」
「あ、ごめんごめん」
由加が咎めるような口調とともに眉をしかめるので私は手刀を切り謝る。
しかし、これだけ反応してしまうのも仕方ないと思う。
だって、思春期真っ盛り、青春ど真ん中、華のJKだよ?
モテるために生きてるって言っても過言ではない気がするぐらい恋に恋してる年頃だよ?
そんな一JKである私が「こうすればモテる」という情報に目がないのは仕方ないでしょ!?
しかも、美味しそうに食べるなんていう私の十八番中の十八番が、モテるとなれば食いつかない方がおかしい。
「マジのマジなのそれ?」
そんな「モテる」というワードを聞いて、俄然前のめりになった現金すぎる私の様子に、由加は「マジマジ」と苦笑する。
「やっぱりさ、男の人もいっしょに食べてる人がおいしそうにしてるのが一番嬉しいらしいよ?」
「そうなのかあ……」
うーん、男の人って清楚でお淑やかな女の子がいいんじゃないのかな?
と、軽く顎を撫でて、考える。
もちろん、私は「おいしそうに食べてほしい派」なんだけどな、作法とか気配りとかはどうでもいいし……。
それよりも「おいしいね?」って言ったら「おいしいよ」って言ってくれる関係性の方が絶対楽しいし。
でも、男の人は「礼儀正しい女の子」の方が好きなんだと思ってた。
だとしたら、相沢さんもそうなのかな?
考えてみると、確かに、相沢さんならそう言いそうな気もする……。
今まで出会った大人は皆口うるさく注意してきたけど、相沢さんだけは私のたばことか見ても何も言わなかったし。
常識とか体裁とかあんまり気にしない人なのかも相沢さんって……。
なのに、私の気持ちもちゃんと分かってくれてるし、なんかちょっと複雑だ……。
でも、そう考えると相沢さんは礼儀正しい私よりも「おいしい」って素直に喜んでる私を見る方が嬉しいのかも……それだったらいくらでもおいしそうに食べるんだけど……。
珍しく真剣にそこまで考えた私はふと、あることが気になった。
目の前で残り少ないアセロラジュースをズズッと吸い込んでいる由加に視線を向けて問う。
「でも、それどこの情報なの?」
そう、私が気になったのはこの情報のソース。
情報源が曖昧な情報を鵜呑みにしてはならないのだ。
この前授業で習ったから私は知っているのである!
なんとなく得意になった私はふっふっふ……と心の中でほくそ笑む。
しかし、由加は残りのアセロラジュースを飲み干すと軽く首をかしげた。
「いや、ただの経験則だけど?」
それを、聞いた私は文字通り、肩を落とした。
「はあ……なんだ。由加の話か……」
「ちょいちょい!なんでため息つくし!めっちゃ信憑性あるでしょうが?」
フンガー!と鼻息荒くそう言い放つ由加。
しかし、私はゆっくりと手を顔の前で横に振る。
「ないない」
ああ……良いこと聞いたと思ったのになぁ。相沢さんをメロメロにしたかった……はあ……と、落ち込みまくっていた私の耳に、次の瞬間、信じられない情報が飛び込んできた。
「ふーん……そう言うこと言うんだ日向?私がこのテクで十人の男たちをゲットしたと聞いても?」
「はあっ!?十人!?」
私の絶叫にウィンクで答える由加。
「まあ、ゲットしたと言っても告白されただけどね?」
「いや、それでもすごいでしょ……」
私のこの三年間で告白された回数は三回。
単純計算で私の約三倍モテてるってこと?
普通にヤバすぎでしょ!!
さっきまでのネガティブな思考は綺麗さっぱりどこかへと吹き飛び、私の頭の中で「プライド」と「実益」。
この二つが天秤にかけられる。
恋のライバルと言っても過言ではない由加相手に頭を下げたくない、という思い。
いや、それをしてでも相沢さんを手に入れたい、という思い。
私はその狭間で葛藤した。
たっぷり三秒間悩み、その末に導き出された結論は……。
「由加様!!そのテクニック教えてください!!!」と恥を捨て教えを乞うことだった。
そんな私の様子に由加は、手を腰に当て深く頷く。
「しょうがないなぁ。なら、その相沢さんとやらの写真を見せてくれたら教えて進ぜようではないか」
まるでどこかの戦国武将のような口調の由加に私は平伏して。
「ははぁ!ありがたき幸せ!!」と感謝を述べ、顔を上げるとそこには由加の笑顔がある。
この前のショッピングでどさくさに紛れて撮った相沢さんの写真を由加に見せながら私は心の底から思った。
『ああ、この子と友達で良かった……』
それからも、しばらくの間、私たちはふざけながらも楽しく、そして、有意義な時間を過ごしたのであった……。
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