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「あらあら。なにやってんのよ、まったく」
いつの間にか男の後ろに女が立っていた。
暗い上に男の影となっていたために、その姿はほとんど見ることが出来なかったが、その声は聞き慣れた清美の声だった。
――なんで清美がここに?
「なにっ?」
男が振り返り、清美を見た。
清美はゆっくりと歩き出し、男の横に立った。
「いつものように適当に待ち伏せしていたら、まさかあんたと殺人犯に同時に出くわすなんてね。いくらなんでもこれは想定外だったわ」
「待ち伏せ……だと」
「そうよ。待ち伏せよ。新鮮でおいしい肉を喰らうためにね」
清美の顔がむくむくと大きく膨らんだ。
少なくとも私にはそう見えた。
今は頭がギャグマンガのキャラクターのように、とてつもなくでかい。
人間としては、あまりにも不自然なほどに。
そして巨大な顔の中にある口は、耳まで裂けていた。
その中に、サメかのこぎりの歯のような牙がずらりと並んでいるのが見えた。
皿のようにまん丸で大きな目は、まるで燃えているかのように真っ赤だ。
「ひっ!」
男は思わず数歩下がった。